梅雨のジメジメシーズン到来!放置していたカビが訴訟に発展!? | 不動産投資を考えるメディア

梅雨のジメジメシーズン到来!放置していたカビが訴訟に発展!?

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雨と家のイメージ

今年も梅雨のシーズンが到来しました。
毎年の梅雨のジメジメした空気に悩まされる方も多いと思います。
日頃から利回りや節税、新たなスキームはないものかと試行錯誤する不動産オーナーが多い中、現在所有の物件が思わぬことから訴訟に発展するケースがあります。

特にこの時期、カビが大量発生して入居者からクレーム!なんてことはよくある話。
今回は、梅雨の時期に一度はチェックしておきたいカビ対策について、決して他人事ではない事例も踏まえて考えてみましょう。

軽視されがちな賃貸人と賃借人の義務

普段から「投資」という視点から不動産を見ていると、突然カビの話をされてもピンとこない方は多いでしょう。

しかし、「賃借人」と「賃貸人」には最低限守らなければいけない義務があります。
まず賃借人の場合、「善管注意義務」という民法第400条によって定められた義務を果たさなければなりません。

(特定物の引渡しの場合の注意義務)
第400条 債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。

分かりやすく言うと、人から何かを借りた場合、それを返すまで十分な責任をもって借りたものを管理しなければいけないという事です。

今回のカビの話に当てはめると、「カビが発生しないように賃借人は日頃の清掃を小まめに…」という解釈ができるでしょう。

では、対する賃貸人にはどのような義務があるのか。
賃貸人が行う賃貸借にも義務はあり、同じく民法606条の定めで以下のように決められています。

(賃貸物の修繕等)
第606条 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。

これを賃貸物件におけるカビ問題に当てはめるのであれば「賃貸物件を使用するにあたって、カビが発生しないように、もしくは発生したら修繕しなければいけない」と言っていることになります。

賃借人と賃貸人の両面から見て平たく言うのであれば「お互いにで注意しながら物件を扱いましょう」という風にまとめることができます。

賃借人は自らを「お客様」という上位的な意識で考える方も多く、賃貸人は一定の条件の下で賃貸するという優位性があることから、善管注意義務や修繕義務は軽視されがちであり、そもそもそれらの義務がある事すら知らないという人も多いのが現状です。

互いに課せられる義務は最低限の決まり事であり、続いてご紹介させていただく事例を考えると決して軽視できるものではありません。

引用:e-Gov「民法」
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=129AC0000000089

カビの発生は建物が原因と判断された事例

普通に生活していてカビが発生する事例となると、賃借人の不注意で洗濯機パンから水が漏れてしまったとか、荷物が多すぎて通気が悪くなったためにカビが繁殖したといったことでもない限り、カビによる修繕が必要になることはありません。

では、なぜ今回はカビをテーマにしたお話をさせていただいているのか。
それは過去に以下のような事例があるためです。

平成17年10月4日 枚方簡易裁判所「敷金返還請求事件、及び同反訴請求事件」

(争点)
本件の部屋に発生したカビは、賃貸人と賃借人のどちらに責任があるのか。また、それによる賃貸契約の解除は賃貸人の債務不履行とするか。
(賃貸人の主な主張)
・断熱材は途中で充填するなどし、できる限りの対策はした
・賃借人が所有する洗濯乾燥機が異常に水分を放出する機種であることがカビの原因
・賃借人は部屋の中に洗濯物を干すなどしていた
・賃借人が窓を閉め切っていたのもカビ発生の一要因である
(賃借人の主な主張)
・窓は帰宅後にできる限り開けていた
・窓の結露は気付けば都度ふき取っていた
・本件とは別として、元から室内の原因不明の異臭で悩まされていた
・カビについて賃貸人に通知した
(争いの無い事実)
・畳の裏、玄関の下駄箱、ベビーベッドの裏にカビが生えていた
・確かに洗濯乾燥機を使用している
・昼間は仕事で窓を閉め切っている
・外壁に断熱材は使用されておらず、窓ガラスもペアガラスではない
(裁判所の判断)
カビが発生するには建物内の湿度が高いことが条件となる。
途中で断熱材を充填したというが、どの程度の効果があるものか、十分に充填されたのかの証拠もない。
また、洗濯乾燥機を1日中使ったというならまだしも、通常の家庭で使用する程度の回数である。
室内に洗濯物を干していたことは賃借人も認めてはいるが、脱水機や乾燥機で乾燥させたものを干していたことを考えれば、カビの大量発生の原因とは考えづらい。
よって、「建物の構造上の問題でカビが発生した」と言える。

参考:敷金問題研究会「枚方簡裁平成17年10月14日判決」
http://sikikinmondai.life.coocan.jp/acrobat/051014hirakata.pdf

上記の判断により、枚方簡易裁判所は「賃貸人は保証金として受け取っていた敷金25万円を返還せよ。
また、通常の使用をしていた賃借人が負担すべき費用はない」という判決を下しました。

確かに、洗濯機を置いているとか昼間は窓を閉めている、洗濯物を家の中で干したという事は日常ではよくある話であり、それによってカビが大量に発生したということを耳にすることはあまり多くはありません。
この事例では、それらをカビの発生源であると主張した賃貸人の請求は認められず、修繕費は賃貸人が負担する事となりました。

カビの発生を抑えるためにオーナーができる対策

さて、カビが発生したら賃借人が普通に暮らしている限り、建物の構造の問題と判断されるケースもあるという事が分かりました。
とはいえ、毎年梅雨の時期になったら各戸を回ってカビのチェックをしたり、その清掃をするわけにもいきません。

よって、オーナーは賃貸人としてできる範囲での対策が求められそうですが、具体的にどのような対策を行えばよいのでしょうか。
考え得る限りの対策は以下のようなものになります。

  • 賃貸人からカビの発生について通知があったら早めに対処する
  • 建物の構造や室内の断熱性能に問題はないか改めて確認する
  • 外壁や窓枠付近に亀裂あったり、天井付近に雨漏りの形跡などは無いか
  • 窓を断熱性の高いペアガラス等に変える
  • 空室のタイミングや賃借人の了承を得て、インスペクションや結露対策の修繕を行う
  • 24時間換気の導入や除湿機の貸し出しをする
  • etc…

他にも、カビの生えにくい壁紙に張り替えたり、思い切って室内をリノベーションしてしまうなんて方法も考えられます。
しかし、何をするにも費用が発生するのは痛いところ。

すぐに対策が難しい、カビの対策をしておかなければトラブルになりそうだという時には、せめて入居者の方へ協力を仰ぎ、普段から換気を小まめにしてもらうよう呼び掛けたりするのも一つの方法と言えるでしょう。

カビは一度発生すると、完全に取り去るのは難しいもの。
カビが発生しそう、もしくは発生しているという事実は放置せず、早めの対処を行うことが重要です。

まとめ

今回は梅雨のシーズンに発生しがちなカビをテーマにお話をさせていただきました。
一見、カビと不動産投資は無関係のようですが、実はPM(プロパティマネジメント)として考えると軽視できる問題ではありません。

日頃から私たちはカビを吸い込んでいると言われていますが、健康な方であれば体内の免疫作用によって重症になることはありません。
しかし、カビの種類の中には、風邪などで免疫力が落ちている時に吸い込んでしまうと、死に至らしめるほどのものもあります。

そのような最悪のケースは考えたくないことではありますが、自身が所有する建物が原因で賃借人に危害が及ばないように配慮することは、やはり民法でも定められた賃貸物を使用させる者としての責務だと言えるのではないでしょうか。

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