プロスペクト理論に学ぶ「不動産投資で失敗する理由」 | 不動産投資を考えるメディア

プロスペクト理論に学ぶ「不動産投資で失敗する理由」

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勉強イメージ

「なんでこんな物件買ってしまったんだろう…」
「不動産屋は確実だと言っていたはずなのに…」

もしかすると、不動産投資を行っているオーナーの中には、上記のような悩みを抱えている方がいらっしゃるかもしれません。
不動産投資で失敗する理由には様々な要因が挙げられますが、時に「自分の心理」が不動産投資の失敗要因になっていることがあります。

何故その物件を買いたいと思ったのでしょう。
本当にその物件を買う必要があったのでしょうか。

自身に問いかけてもなかなか答えの出ないこれらの謎を、実は「プロスペクト理論」という行動経済学で説明できる可能性があります。

今回は、プロスペクト理論を例に不動産投資で失敗してしまう理由を考えてみたいと思います。

“得する”より”損しない”を選ぶ?プロスペクト理論とは?

プロスペクト理論は「人は得をするかもしれない可能性より、損失を確実に回避する選択をする傾向にある」という損失回避の法則を理論化したものです。

この理論を確立したのがダニエル・カーネマン氏。
行動経済学の分野では知らない人はいないほどの有名人で、プロスペクト理論が最初に発表されたのは1979年。2002年にはノーベル経済学賞を受賞するに至りました。

理論の名称である「プロスペクト(prospect)」は、期待、見込み、将来性、予想といった意味です。
つまり、プロスペクト理論は期待や見込みに対する人の心理の因果関係を説明したものになります。

例えば、家族や友人に「確実に得をする」か「一定条件で大きく得をする」という選択肢を与えた時、それぞれが同じ確率でも「確実に得をする」を選ぶ人が圧倒的に多く、「確実に損を減らせる」か「一定条件で大きく損を減らせる」という選択の場合は「一定条件で大きく得を減らせる」を選択することを理論的に説明しているのがプロスペクト理論なのです。

少し難解な説明になりましたので、実際の不動産投資にプロスペクト理論がどう活かせるのか、まだ理解するのは難しいと思います。
そこで、プロスペクト理論の代表的な例を使って、不動産投資で失敗してしまう理由を紐解いてみましょう。

コイントスで分かるプロスペクト理論

プロスペクト理論を理解するには、以下の2つの質問に答えて実感してみるのが近道。
あなたなら「A」と「B」のどちらを選ぶでしょうか。

質問1:不動産投資を始めたいあなたは、気前の良いメガ大家と仲良くなりました。不動産投資のノウハウを教えてほしいと伝えたところ快諾。しかし、以下のような提案をされました。

A.「日頃から仲良くしてもらっているお礼に、初期投資費用として50万円あげよう」
B.「ただし、コイントス勝負をして表なら100万円、裏なら0円、という選択もできる」

この質問では、確実にもらえる50万円と、50%の確率でもらえる100万円という2つの選択肢が与えられたことになります。

プロスペクト理論では「期待値」という言葉が度々登場しますが、Aの場合「50万円×100%」ですから、期待値は「50万円」という事になります。

ではBの場合はどうかというと「100万円×50% + 0円×50%」ですから、期待値は同じ「50万円」です。
つまり、どちらを選んでも本来の期待値は同じなのですが、似たような質問をされたほとんどの方が、確実におお金がもらえる「A」を選択してしまう。

これが、プロスペクト理論を理解するうえで必要な人の行動心理の一つです。

人は損している時こそギャンブルをする?

では、もう一つの質問にも答えてみてください。

質問2:不動産投資で大失敗したあなたは、残り1000万円の高金利ローンの支払いができず破綻寸前。そこで、不動産投資で成功しているメガ大家に相談したところ、以下のような提案をされました。

A.「日頃から仲良くしてもらってるお礼に、借金500万円分を肩代わりしよう」
B.「ただし、コイントス勝負をして表なら1000万円を肩代わり、裏なら肩代わりなし、という選択もできる」

ここでも期待値を出してみます。
Aは「500万円×100%」ですので、期待値は500万円。
しかしBも「1000万円×50%+0万円×50%」ですから期待値は同じ500万円です。

Aは借金1000万円から500万円が確実に減りますが、Bは運が良ければ完済でき、50%の確率で1000万円のローンがそのままとなります。

では、多くの人がどちらを選ぶかというと、なんとBを選ぶのです。

期待値は同じですが、確実に500万円を得て、ローン返済の見直しや空室の改善などをすることで、今よりも返済が軽くなる可能性は十分にあるのですが、早く損を解消したいという気持ちが強くなるのか、多くの人はBのギャンブル的な選択をしてしまうのです。

得をするときは確実性を選択するのに、損をしている状況下だとギャンブルをしてしまう。
研究によれば、得をする気持ちを「1」だとすると、損をする気持ちは「2~2.5倍」大きいと言われています。

つまり、人は損をしている状況に耐えられず冷静な判断ができなくなる傾向があるという事がわかります。

スマートデイズ問題でもプロスペクト理論が!?

スマートデイズ破綻でシェアハウス「かぼちゃの馬車」や、スルガ銀行の過剰融資や不正見逃し疑惑などが大きな問題となっているのはご存知の方も多いでしょう。
未だ解決への糸口が見つからないばかりか、問題は悪化の一途を辿っているような状況です。

さらに、被害者救済を装った詐欺師による2次被害までもが報告されています。
産経新聞によると、怪しい団体がトラブルの解決を名目としてコンサルティング料として数百万円と、弁護士費用数十万円の契約させるも、特に解決に向けて動く様子もなく、払った費用の返金を求めても応じない。次第に連絡も取りづらくなっているというのです。
同紙のインタビューに答えた30代会社員は、「投資金を少しでも回収したいという心理につけこまれた」と語っています。

現在、スマートデイズの問題は「スルガ銀行・スマートデイズ被害弁護団」が結成され、問題解決に向けた活動が行われており、金融庁の調査が入ったスルガ銀行も返済見直し案を提示しています。

公正な対応がなされている中、被害者に一発逆転の救済案を提示し、更にお金をだまし取ろうとする詐欺師。
大きな負債を背負わされた被害者が、冷静な判断ができずに2次被害に遭ってしまう。
これもプロスペクト理論に沿った心理が働いた結果と言えるかもしれません。

プロスペクト理論で投資利益を最大化し、損失も回避できる

不動産投資においてもプロスペクト理論を基に考えることで、利益を最大化し、損失を最小限に抑える可能性が高まります。

例えば、不動産営業にありがちな「他に検討している人がいますが、優先して紹介できます。」という営業トーク。
他に検討している人がいる事と、不動産投資におけるマネジメントは全く無関係です。

つまり、その物件でないと不動産投資ができないという事はありませんので、その物件が確実に利益を生むのか、隠れた瑕疵はないのか、周辺の賃貸需要や家賃相場はどうなのかなど、購入後のキャッシュフローをシミュレーションすることは必須です。

もし、シミュレーションをした結果、割に合わない物件だとするなら購入しない選択をするべきですし、交渉が可能なら、キャッシュフローがプラスになる価格まで値下げ交渉してみましょう。

優先的に物件を紹介してくれたからといって不動産投資が成功するわけではありません。
大事なのは、買う事で損する可能性が高いギャンブルをするよりも、買わない選択、もしくは値下げしてもらう可能性に賭ける選択をすることが、不動産投資での利益を最大化し、損失を回避するための選択と言えるでしょう。

また、スマートデイズのシェアハウス投資で改めて問題視されるサブリース契約について考えてみましょう。
人の少ない地方であれば8割でも9割でも保証してもらえれるならサブリース契約は必要かもしれません。

しかし、都心であればわざわざサブリース契約をせずとも、賃料100%の満室経営ができる可能性は高いと言えるでしょう。
つまり、「保証」という言葉につられて賃料の8割というサブリース契約を選択するよりも、自主管理をした方が利益を最大化できると言えます。

もちろん確実に利益を得る努力は必要ですが、時にはその確実な利益を放棄して、一か八かの勝負をすることも成功への近道になるかもしれません。
しかし、自身の不動産投資が既に芳しくない状況であれば、一発逆転のギャンブルは禁物。
確実に損を減らす努力をしていくことこそが、不動産投資で失敗しないための合理的な考え方と言えるでしょう。

様々な業界で使われるプロスペクト理論

プロスペクト理論が不動産投資においても無視できないことはお分かりいただけたかと思いますが、不動産業界だけなく、様々な業界で同様の手法が使われています。

例えば宝くじにおいては、当たる確率は極めて低いのに「買わないと当たらない」という強迫観念にも似たバイアスがかかるため、買う人が多くなるというもの。
また、「満足いただけなければ全額返金!」「1ヶ月無料お試し!」といったキャッチコピーも、返金や無料という安心感を与えて購入を促すものとなり、さらに「期間限定キャンペーン!」「申込受付は今から30分間!」といった謳い文句も、今なら確実に得する(買える)という衝動買いを促す効果を狙ったものです。

これらはいずれもプロスペクト理論を応用しているマーケティング手法と言えるでしょう。

まとめ

今回は、行動経済学の中でも特に有名なプロスペクト理論について紹介してきました。
私達は普段からプロスペクト理論に接していることがよく分かりますが、こと不動産投資においては、かかる費用が大きくなります。
常に冷静に判断すること。そして自分自身で見極める力。
これらは不動産投資において大変重要な要素だと言えるのではないでしょうか。

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