礼金の高い地域・安い地域から考える礼金の存在意義 | 不動産投資を考えるメディア

礼金の高い地域・安い地域から考える礼金の存在意義

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家とお金

各メディアでよく見かける「礼金って何のためにあるの?」ということを題材としたコラム。
多くの記事が「大家さんにお礼として渡すものです」と回答するに留まっており、それ以上の詳しい話が出てくることはあまりありません。
では何故、賃借人は礼金という形で不動産オーナーにお礼をする必要があるのでしょうか?
そして、昨今の賃貸事情から不動産オーナーは礼金を設定することに何か問題はあるのでしょうか。

実は先日、東急住宅リース株式会社とダイヤモンドメディア株式会社による共同調査で「敷金・礼金の設定月数に関する調査」が発表されました。
そこで今回は、その調査から「礼金の高い地域、安い地域」を確認し、併せて「礼金の存在意義」について考えてみたいと思います。

礼金の高い地域

冒頭でご紹介させていただいた調査は、2017年11月1日から11月30日までの1か月間に行われた調査ですので、直近の賃貸契約の傾向を確認するには大変参考になるものと言えるでしょう、
その調査からまずは、礼金の高い地域のランキングを見てみたいと思います。

  • 1位:兵庫県 1.99ヶ月
  • 2位:大阪府 1.32ヶ月
  • 3位:奈良県 1.28ヶ月
  • 4位:和歌山県 1.07ヶ月
  • 5位:京都府 1.02ヶ月
  • 全国平均:0.80ヶ月

近年では礼金ゼロを謳う物件が多い中、意外にも2か月近くの礼金を設定している兵庫県や大阪府の1.3ヶ月という事実には意外性を感じるところです。
では、気になる1都3県はどうなっているか確認してみると、以下のようになっています。

  • 東京都:0.7ヶ月
  • 埼玉県:0.4ヶ月
  • 千葉県:0.4ヶ月
  • 神奈川県:0.5ヶ月

人口が集中する関東圏であれば礼金を設定してでも入居者が入りそうですが、関東よりも関西地方の礼金が高い傾向にあるのはなぜでしょうか。
この疑問に対して明確な回答は難しいところですが、ヒントとなり得るものに関西特有の「敷引き」という慣習があります。

関西では「敷金礼金」というセットではなく、「保証金」というものを最初に設定する習慣があります。保証金は関東でいうところの敷金にあたります。
そして、特約として「敷引き」を契約書に記載することが多いのですが、この考え方が少々難しく、「大家へのお礼として、退室時に保証金から引く」という礼金のような目的の場合と、「敷金となる保証金は、一定額を引いて退室時に返還する」という敷金分を必ず引くというような目的の場合とで分かれるようです。
つまり、敷引きの目的はあまり明確にはなっていないのです。
とはいえ、敷引きのトラブルで裁判となったオーナーは「敷引きはお礼として受け取ったものである」という主張をしていたこともあるため、やはり礼金としての性質が高いように考えられるのです。
よって、上記の調査だけではないかもしれませんが、敷引きを礼金として回答するオーナーが多いことから関西圏の礼金が高い結果となっているのではないかと考えられます。

礼金が安い地域

では逆に、礼金の最も低い地域はどこになるのでしょうか。
同調査では、礼金の安い地域の調査結果も発表されており、以下のような結果となっています。

  • 1位:岐阜県 0.15ヶ月
  • 2位:鹿児島県 0.16ヶ月
  • 3位:北海道 0.18ヶ月
  • 4位:青森県 0.19ヶ月
  • 5位:沖縄県 0.23ヶ月

礼金の安い地域についても、何故このような結果となっているのか明確な回答は難しいところですが、元から礼金という慣習が無いのではないかという想像の域を越えません。人口の増減率、若者の比率、大学の数、賃貸物件の数、持ち家比率などを調査することで、ある程度の理由は分かってくるかもしれませんが、関東からも関西からも離れた地域であることを考えると、元々、礼金という慣習が無いというのが答えになるのかもしれません。

尚、この「礼金という慣習が無い」というのも何も根拠がないわけではなく、礼金という仕組みができた歴史を見ていくと、礼金が存在しない地域があって当然と思える理由があるのです。

礼金の歴史と存在意義

礼金という考え方が生まれたキッカケは諸説ありますので、正解を一つに絞ることはできません。
ただ、一般的に礼金が渡されるようになったのは以下のような理由であったと言われています。

  • 焼け野原ばかりが広がる戦後の日本で、住む家が無い人が家を貸してくれたお礼に渡したお金がキッカケ
  • 関東大震災直後、家を失った人々が優先的に家を貸してもらうようにお願いする目的でお金を渡した
  • 昭和の高度経済成長期の頃、地方から上京する子供の親が、世話になる下宿先に「息子を宜しくお願いします」という思いを込めてお金を渡した。

どれが正解かは分かりませんが、どちらにしても礼金は元々、日本の歴史の中で「お礼」や「礼儀」という意味のこもったものだったということが分かります。
その歴史的な習慣が今に残ったと言われれば、その存在意義に何となく合点がいくところもあるでしょう。
しかし、戦争で被害の多かった場所、そして関東大震災、更に上京する若者という点を裏返すと、どうやら関東や関西などの人が集中する場所で礼金という慣習が生まれたのではないかと推測することができます。つまり、それ以外の地方については礼金という習慣も存在意義も無かったことが考えられるのです。
そう考えると、礼金が安い地域に地方都市の名前が並ぶことには何ら不思議はないと言えるのかもしれません。

まとめ

今回は、東急住宅リース株式会社とダイヤモンドメディア株式会社の共同調査から読み取れる、礼金の地域性について考えてみました。
昨今は礼金をゼロとする物件も非常に多くなりましたが、敷金は返還が基本となり、礼金は返還が不要であるということから、敷金では賄えない原状回復費用の捻出のために未だ礼金を設定している物件もあります。
ただ、昔と違って礼金の考え方は随分と様変わりし、不動産会社の広告費用に充てる目的であることも少なくありません。

ただ、礼金ゼロとする習慣はあくまで一般的なキャンペーンの一環なのであり、礼金を設定することには違法性は全くありません。
礼金を設定するかどうかは所有物件のある地域性や周辺の賃貸物件の募集状況を加味しつつ、礼金を設定してでも入居者が見込めると判断できるのであれば、ご自身の判断で常識の範囲内であれば自由に設定されて問題はないと言えるでしょう。

参考:
東急住宅リース株式会社「全国の賃貸マンションを対象に賃貸借契約の初期費用を共同調査」
http://www.tokyu-housing-lease.co.jp/info/news/pdf/20180228.pdf

ダイヤモンドメディア株式会社「【プレスリリース】ダイヤモンドメディア、全国の賃貸マンションを対象に賃貸借契約の初期費用を東急住宅リースと共同調査」
https://www.diamondmedia.co.jp/news/view/179

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