不動産業界は東京が一人歩き!?企業DIから見えてくる業界心理

まめ知識
20190112
1月7日、国土交通省が「企業の土地取引動向調査」というものを発表しました。これは不動産取引の中でも特に土地取引について企業がどのように考えているかを示す「DI」を公表したものですが、どうもここ最近で弱気な意見が多くなってきたのでは?と思わされる結果になっています。

そこで不動産取引に深く関わる金融機関のDIも併せて確認してみたところ、決してポジティヴとは言いにくい結果になっていることが分かりました。今回は国土交通省が発表した「企業の土地取引動向調査」と併せて、「DIとは何か」「国内の企業DIがどのようになっているか」などを解説していきます。

そもそもDI(景気動向指数)とは?

そもそも「DI」という言葉自体が聞き慣れない方も少なくないのではないでしょうか。DIは様々な業界で扱われる指標であり、「経営者の心理状態」を表す指標と言えます。

DIは「Diffusion Index(ディフュージョン・インデックス)」という言葉の頭文字を取ったもので、「D.I.」や「景気動向指数」と表記される事もありますが、日頃から経済情報をチェックしている人には重要視される指数です。DIの算出方法は業績の見通しに関する企業アンケートの回答結果から以下の計算式で算出されます。

「良い」 - 「悪い」 = DI

日銀が定期的に発表する「日銀短観」においても、企業にアンケートを取って「業績の見通し」などについて「良い」「普通」「悪い」で回答を得てそこから上記のような計算式で指数を出します。

例えば、良いと回答した企業が60%で、普通が10%、悪いが30%であれば、DIは「60%-30%=30%」ということになり、多くの企業が業績見通しをポジティヴに考えているということになります。よってDIというのは調査対象となる業界の業況感などを指数化したものであり、景気の先行指標として扱われる重要なものなのです。

国内の全産業におけるDI

では、日本国内の企業のDIはどうなっているのでしょうか。以下に日銀が公表している統計データから、2014年以降の全産業における過去5年のDIがどのように変化してきたかを時系列で表すと以下のようになります。

年月全産業のDI
2014年3月12
2014年6月7
2014年9月4
2014年12月5
2015年3月7
2015年6月7
2015年9月8
2015年12月9
2016年3月7
2016年6月4
2016年9月5
2016年12月7
2017年3月10
2017年6月12
2017年9月15
2017年12月16
2018年3月17
2018年6月16
2018年9月15
2018年12月16

アベノミクスが始まった2年後となる2014年以降、順調にDIが上昇してきたことが分かります。ただ、基本的にDIは50以上が継続して初めて好景気と言える水準になるため、多少上昇したものの、まだまだ底上げが必要という印象は否めません。

また、上記のDIには金融機関が含まれていません。日銀が発表しているDIでは金融機関は別で集計が取られています。

金融機関のDIが弱気に転じている

不動産投資に深く関わる金融機関のDIは是非とも確認しておきたいところです。先ほどのデータに続いて金融機関のDIも時系列でまとめてみましたのでご紹介します。

年月金融機関のDI
2014年3月20
2014年6月18
2014年9月21
2014年12月26
2015年3月32
2015年6月31
2015年9月30
2015年12月25
2016年3月12
2016年6月8
2016年9月4
2016年12月8
2017年3月14
2017年6月13
2017年9月12
2017年12月14
2018年3月15
2018年6月15
2018年9月12
2018年12月12

先ほどの全産業の変化とは違い、2016年頃に一旦DIが落ち込み、その後は多少の回復をしているもののあまり元気はない印象です。となると、金融機関が2019年の景気動向の見通しをどう考えているかも気になります。

上記にご紹介したDIは実測値ですが、「予測値」というものもあります。全産業と金融機関で2019年3月のDI予測値を比較してみましょう。

【2019年3月のDI予測値】
全産業:10
金融機関:9

全産業、金融機関共に景気動向を悪いと回答した企業が多くなったことが分かります。特に金融機関は、2015年をピークに低迷している印象が拭えませんので2019年のスタートが少々心配なところです。

2019年不動産業のDIは東京だけが一人歩き!?

最後に、年明けの7日に国土交通省が発表した「企業の土地取引動向調査」をご紹介したいと思います。これは土地取引の不動産市場に影響を及ぼすと考えられる主要企業4000社以上を対象に、土地取引が「活発である」「どちらでもない」「不活発である」という選択肢で調査したものです。

つまり、不動産企業に特化した「企業DI」と言えるでしょう。公表されたデータを見たところ、本記事のタイトルにもある通り、まさに東京の一人歩き状態であることが分かりました。まずは以下のグラフをご覧ください。

【現在の土地取引状況の判断に関するDI】
現在の土地取引状況の判断に関するDI

■出典:国土交通省「企業の土地取引動向調査」
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000120.html

上記は平成20年からのDI推移をグラフ化したものです。東京と大阪は順調に推移してきましたが、その他のエリアだけはなかなかDIが伸びてこなかったことが分かります。

それよりも重要だと思われるのが、東京以外のエリアのDIがここへきて急角度で落ち込んでいるという事実です。それでは、1年後の土地取引の状況を企業がどう考えているか、予測値のDIも見てみましょう。

【1年後の土地取引状況の予想に関するDI】
1年後の土地取引状況の予想に関するDI

■出典:国土交通省「企業の土地取引動向調査」
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000120.html

やはり、東京のみが若干ながら上昇しており、その他の地域は下向きに変化しています。確かに現在の不動産バブルは東京が一人勝ちのような様相がありましたが、ここへきて東京以外のエリアでDIが弱気に転じたというのは、2019年の景気を占う上でネガティヴな要因となるかもしれません。

もちろん、この結果だけで不動産市況を語れるわけではありませんが、東京以外のエリアが明確に景気悪化するような事態になれば、東京も足を引っ張られる可能性は十分にあります。不動産市場はまだ伸びると考えるのか、一旦様子見として底値を探るのか。2019年は判断の年となりそうです。

まとめ

景気動向を測るDIを見る上で金融機関は様々な企業と関わるためそのDIは重要な指標と言えるでしょう。今回は国土交通省が発表した企業の土地取引動向から、2019年の不動産市場を企業はどう考えているのかということでDIをご紹介しましたが、先行きが明るいと考えている企業はそう多くないと言えるかもしれません。

最後にお伝えしたように、2019年は判断の年となる可能性は十分あります。これから物件を購入される方などは、高値づかみとならないよう慎重な判断が求められるかもしれません。

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