入居時も立会いは必要?引っ越しで共用部を破損された時のトラブル対応

引越し荷造り中の部屋

2017年と2018年に話題になった「引っ越し難民」という言葉。働き方改革や人材不足などの影響により引っ越し難民問題はさらに深刻化すると言われています。運よく引越し業者の予約ができても、法外な見積もりを提示されたというケースも少なくありません。

入居者の引っ越しトラブルも見逃せませんが、不動産投資を考えるメディアとしては引っ越し中の建物への破損も軽視できないリスクです。自分の所有するアパートや、区分所有マンションの共用部を引っ越しの時に壊されてしまうなんてことがあるかもしれません。

では引っ越し時の物件への破損はオーナーとしてどう対応すべきでしょうか。今回は引っ越しシーズンに起こり得るトラブルと、立会いは退去時だけではなく入居時も必要である理由を解説させていただきます。

引っ越し時の共用部破損は誰に責任がある?

賃貸経営の基本として、経年劣化部分の補修は家主負担、入居者による破損や汚損の補修は借主の責任が大原則です。厄介なのは、犯人や原因が特定しづらい共用部の破損や傷、汚損など。では室内ではなく共用部の破損はなぜ起きるのでしょうか。

  • 搬出入のスキルがない素人引っ越しスタッフによるミス
  • 子供が敷地内で遊んだりイタズラしたりする
  • 外部の悪質な第三者による器物損壊
  • 自然災害など不可抗力による破損や汚損

特に人手不足が深刻な引っ越し業者においては、研修も十分ではないまま素人を雇っているケースもあります。悪意はなくとも、荷物の搬出入で共用部を破損させたり傷を付けたりする可能性は十分考えられるでしょう。では、共用部の破損や汚損を見つけたら、誰に責任を追及すべきでしょうか。実はこの点が非常に厄介です。

引っ越し業者や入居者から自己申告があれば良いですが、こちらから「引っ越しの時の傷だ」と訴えても「引っ越し時のものではない」と否定されれば水掛け論にしかなりません。よって、共用部の破損や傷はは「引っ越しの時にできたものだ」と自ら証明するか、先方に認めてもらうほかないのです。

また、自身が所有する物件が区分所有マンションなら、「オーナー」「入居者」「引っ越し業者」という3者だけでなく「管理組合」も関わってきます。するとますます、「なぜ破損や傷ができたのか」「誰に責任があって」「どう賠償するのか」などを話し合うのに労力を要することになります。

区分所有マンションなら、管理組合は火災保険に個人賠償責任保険の特約を付けているのが一般的です。いざとなれば保険を使えますが、管理組合によっては保険を使うことを拒みます。引っ越し時の破損や汚損は、「いつ、誰が」という証拠が非常に重要なのです。

引っ越しのトラブルは他人事ではない理由

引っ越し時の共用部破損について解説しましたが、「ウチの物件は大丈夫。今までトラブルはなかったし。」なんて思われてないでしょうか。実は、引っ越しのトラブルは他人事ではありません。その証拠に、日本の引っ越し件数やトラブル件数をご覧ください。

まず総務省統計局が公表している「住民基本台帳人口移動報告」を引っ越しする人の数と見ると、日本国内での引っ越しは年間530万人前後と受け取れます。日本の平均世帯人数は2.3人ほどですので、年間230万件の引っ越しがあると受け取れます。

■出典:総務省統計局 住民基本台帳人口移動報告

上のグラフに対して東京都の引っ越し件数を見てみましょう。

年間の移動者数約119万人
世帯構成人数平均1.92人
引っ越し件数約70万件

■参考:東京都の統計 住民基本台帳による東京都の世帯と人口 / 東京都の統計 東京都住民基本台帳人口移動報告平成30年

なんと東京都の引っ越し件数だけで、全国の3割を占めているのが分かります。実際には上記のような単純計算では正確な引っ越し件数は図れません。ただ少なくとも、東京都の引っ越し件数は全国的に見てもボリュームがあるのは間違いなさそうです。

年間の引っ越しトラブル件数

全国規模と東京都における引っ越し件数は非常に多いのが分かりますが、独立行政法人国民生活センターの調べによると、引っ越しに関するトラブル相談は年間2300件前後となっています。

■出典:独立行政法人国民生活センター 各種相談の件数や傾向「引越しサービス」

また、引っ越し比較サイト「引越し侍」による調査では、約4800件のデータのうち引っ越しでトラブルを経験している人は87.2%と報告。トラブル内容は住居への傷や汚れ、家財への傷や破損、マンション管理会社への連絡ミスなどが全体的に多くなっています。


■出典:引越し侍「実際にあった「引越しのトラブル」を調査」

年間の引越し件数とトラブル件数、そしてトラブル内容を見る限り、賃貸経営における入居者の引っ越しトラブルは決して他人事と言えません。退去時だけでなく入居時にも立会いが必要になりそうだと言えるでしょう。

オーナーの立会いは退去時だけでなく入居時も?

では、引っ越し時の共用部破損などのトラブルに巻き込まれないよう、オーナーとして事前にどのような対策をすべきでしょうか。引っ越し時の共用部破損のトラブルを防ぐのに最も有効なのが、「退去時だけでなく入居時の引っ越しも立ち会う」ということです。

立会いと聞くと退去時の敷金返還に伴う確認というイメージですが、入居時にも立会うことで事実確認ができます。何かあれば責任の所在も決定しやすくなるでしょう。しかし、サラリーマン大家など忙しい方だとそう簡単に立会いもできませんので、事前に以下のような対策が有効です。

【事前の対策】
  • 通路などの共用部に防犯カメラを設置する
  • 引っ越しの前後で共用部の写真を撮影する
  • 共用部の破損が適用される火災保険に加入しておく
  • 区分所有マンションなら管理規約等を確認して共用部分と専用部分の範囲を明確にしておく
  • 同じく区分所有なら万一の際の対応を管理組合に確認しておく

何かと手間のかかりそうなことばかりですが、全ては証拠を残していざという時に慌てないための対策です。先述の通り、後で見つけた破損について誰に責任があるのか明確にするのは非常に困難。写真や動画で証拠を残すようにして、無茶な要求や言い分に屈しないための準備が賃貸オーナーに必要と言えるでしょう。

引っ越し後に共用部の破損を見つけたら

どんなに事前準備しても、事故は起こります。そのために先述の準備が必要なのですが、では実際に共用部の破損事故などが起きたらどう行動すべきでしょうか。一つ言えるのは「迅速に対応するのが大事」ということ。具体的には以下の行動が必ず必要になります。

【トラブル時の行動】
  • 引っ越しから日を空けず、その日のうちに共用部の破損や傷を確認する
  • 破損や傷があった際は、できれば日付時刻が記載された写真を撮影する
  • 入居者を仲介した不動産会社や、建物の管理会社への協力を仰ぐ
  • 場合によっては器物破損で警察へ届け、その旨を当事者へ共有する
  • 入居者に修繕費用を請求するならクレジットカードや自動車保険などに個人賠償保険が付いてないか確認

引っ越し業者による破損や傷がついた場合、引っ越し業者側が必ず加入している保険で補償してもらえるはずです。ただ中には保険料がアップすることを避けるためにのらりくらりと対応する業者や、頑として責任を認めない業者も存在します。

時間の都合が合うなら退去時だけでなく入居時も立会うこと。時間が無くても、せめて引っ越し作業前に共用部に破損などが無いか証拠を揃えておくことが重要と言えるでしょう。

まとめ

ここまで引っ越し時に起こり得る共用部への破損、傷など、そして考えられる可能性をお伝えいたしましたが、各トラブルに対して法的な決まりやガイドラインはないのが現状。状況に応じて個々に対応しなければいけません。言い換えるなら個人オーナーや入居者は、プロである引っ越し業者や管理組合より立場が弱いと言えるでしょう。

もし共用部の破損が原因で住人にケガさせたり、修繕を怠ったために住人の生活に支障があったりすると、オーナーが善管注意義務違反で訴えられる可能性もあります。多少の破損でも修繕することをベースに確認しておいた方が良いでしょう。

引っ越しシーズン最盛期ともなると、引っ越し業者は忙しすぎて対応がおざなりになります。保険会社も必ずしもオーナーの味方ではありませんので、泣き寝入りなんて結果にならないように自ら事前の対策を心がけましょう。

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