不動産売却時に損失を防ぐ税金知識、譲渡税の節税方法 | 不動産投資を考えるメディア

不動産売却時に損失を防ぐ税金知識、譲渡税の節税方法

不動産投資ブームで収益物件の価格は上昇しています。野村不動産アーバンネットの調べによると、2016年後半では、一棟マンションを除いて価格のピークに達しているのではないかというデータ予測もあります。ただし、このような価格の状況、つまり、収益不動産価格の高止まり傾向は、2020年の東京オリンピックまでは続くのではないかと考えられています。

不動産価格が高止まりしている状況では、家賃収入だけでなく、物件を売却することによってキャピタルゲインを狙う投資も多いと思います。すでに2014年以前に収益物件を購入していた人たちは、購入した時の1.5倍以上の価格がつく物件も少なくなりません。自分の持っている複数の収益物件の一部を売却して、次の投資の資金にする投資家もいるでしょう。

そこで重要になってくるのが、不動産を売却した時にかかる税金です。ここでも節税対策を講じないと、売却は成功したけれども税金でほとんど持ってかれてしまったということにもなりかねません。今回は不動産売却の時の税金について紹介をします。

譲渡費用と課税の仕組み

譲渡費用と課税の仕組み

不動産を売却した時にかかる税金は、譲渡所得に課税される譲渡税という税金です。譲渡所得は、原則として他の所得と合算して課税されるのではなく、単独で譲渡所得の計算がされて、課税される仕組みになっています。このような課税の方式を分離課税方式と言います。

譲渡所得=譲渡対価(不動産の売却価格)-(取得費+譲渡費用)

譲渡所得は、土地や建物を売った金額から取得費、譲渡費用を差し引いて計算することになります。取得費とは、土地や建物を購入した時にかかる購入代金、購入手数料などの資産の取得に要した金額に、その後支出した改良費、設備費を加えた合計額をいいます。注意しなければいけないのが、建物の取得費です。建物は毎年、価値が下がるので建物を所有していた期間の減価償却費相当額を差し引いて計算することになります。

また、物件のなかには、土地や建物の取得費が分からない場合もあります。売った土地建物が先祖伝来のものであるとか、 買い入れた時期が古いなどのため取得費がわからない場合です。

そのような時には、次のような計算をします。たとえば、実際の取得費が譲渡価額の5%よりも少ないときは、譲渡価額の5%を取得費(概算取得費)とすることができます。たとえば、土地建物を売った時に、1億円で売ったとします。譲渡価額の5%を取得費とするわけですから、500万円になります。

不動産取得費用の一例

  • 立退料
  • 土地造成費用
  • 土地の測量費
  • 所有権などを確保するために要した訴訟費用(相続のための訴訟費用は除く)
  • 土地の利用が目的であったと認められる場合の建物の購入代金や取壊しの費用
  • 土地や建物を購入するために借り入れた資金の利子のうち、その土地や建物を実際に使用開始する日までの期間に対応する部分の利子
  • 違約金など

そして譲渡費用。この費用は、土地や建物を売るために支出した費用をいい、仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、売却するときに借家人などに支払った立退料、建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用などです。譲渡費用は売るためにかかった費用のことで、修繕費や固定資産税などその資産の維持や管理のためにかかった費用、売った代金の取立てのための費用などは譲渡費用になりません。

不動産譲渡費用の一例

  • 土地や建物を売るために支払った仲介手数料
  • 印紙税で売主が負担したもの
  • 貸家を売るため、借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料
  • 土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額
  • 既に売買契約を締結している資産を更に有利な条件で売るために支払った違約金
  • 借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など

個人の場合、保有期間によって課税金額が変わる

個人の場合、保有期間によって課税金額が変わる

個人で不動産を売買する場合、譲渡税は不動産を所有している期間によって計算が異なります。保有している期間が5年以下の場合は短期譲渡所得に分類され、税金は高くなります。不動産を保有している期間が5年以上の場合は、長期譲渡所得に分類され、税金は安くなります。一度、購入したら5年は保有した方が譲渡税は安く済ませることができます。

それでは、短期譲渡所得から計算をしてみましょう。譲渡した年(売却した年)の1月1日現在の所有期間が5年以下の場合の税額は次のようになります。まず、譲渡所得を計算します。

短期譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除

具体的な数字で計算をしてみましょう。たとえば、譲渡価額が1億円、取得費と譲渡費用を合わせて5000万円で、課税される短期譲渡所得金額が5000万円の場合、は以下の通りです。

  • 所得税5000万円×30%=1500万円
  • 復興特別所得税(平成49年まで)1500万円×2.1%=31万5000円
  • 住民税5000万円×9%=450万円

合計1981万5000円が譲渡所得として課税されることになります。

次に長期譲渡所得の計算です。譲渡した年(売却した年)の1月1日現在の所有期間が5年超の場合の税額は次のようになります。まず、譲渡所得を出します。

長期譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除

5000万円の譲渡所得を計算する場合は以下の通りです。

  • 所得税5000万円×15%=750万円
  • 復興特別所得税750万円×2.1%=15万7500円
  • 住民税5000万円×5%=250万円

合計で1015万7500円が譲渡税として課税されることになります。

5年保有するか、それとも5年以下で売却するかで、同じ譲渡所得であれば965万7500円以上の差が出てくるのです。

法人の場合、売却利益を事業所得と合算できる

法人の場合、売却利益を事業所得と合算できる

個人が不動産を譲渡(売却)した場合は、他の所得と分離して譲渡所得を計算します。しかし、法人が譲渡で利益を得た場合は、1事業年度の全ての利益額から損益額を差し引いた課税所得に法人税率が課税され、法人税の税額が決まります。つまり、法人で譲渡による利益を得るメリットは、他の事業と損益計算が合算できるということになります。

もちろん、仮に譲渡で赤字が出た場合でも他のすべての事業所得の利益と相殺ができます。青色申告をしている場合は、損を出した年から9年間に渡って、その損金を繰延べすることができます。なお、法人税率は、期末の資本金が1億円以下の中小法人の場合、課税所得が年800万円以下の部分が15%、課税所得が800万円を超える部分は25.5%になります。

不動産の売却で利益が出た時の節税方法

法人はすべての利益をすべての損金から差し引いたものに課税されることになります。このため、節税のポイントは、得られた課税所得をできるだけ分散することで法人に課税される税率を下げるというのがキモになります。

たとえば、短い期間で不動産売却の利益が高くなった場合は、その利益を役員退職金として支給するという節税方法もあります。勤続年数が5年以下の場合だと、退職所得の税制優遇措置が使えないので最低、勤続年数が5年以上の役員がいる法人が望ましいです。たとえば、配偶者などの親族で勤続年数が5年以上の役員がいるのであれば、所得を分散して、節税対策を取ることができます。所得を分散させた上に、退職所得として支給するので課税される税率を大きく下げることができます。

新しく収益物件を購入して節税する

新しく収益物件を購入して、その物件の減価償却費を経費として計上することで利益を減らすという方法も考えられます。法人は個人と異なり、すべての事業所得の損益を合算できるので、不動産を売却した時の利益を効果的に減らすことができます。このときに注意したいのが、なるべく短い期間で減価償却費を計上できる物件を購入することです。

たとえば、木造の法定耐用年数は22年ですが、22年を過ぎると4年間で減価償却をすることができるので節税効果が高いです。法定耐用年数が22年になる木造の物件は次のようにして、減価償却期間が計算できます。法定耐用年数22年-経過年数(22年)+経過年数(22年)×0.2=4.4年。そして、1年未満は切り捨てになるので、4年というわけです。短期間で経費計上ができるので利益を圧縮するには最適です。それ以外でも4年以上経過した車両、コンテナボックス(中古のレンタル倉庫など)などを購入して節税するという方法があります。

特別償却できる設備投資で節税する

すぐにできるのが経費を増やすというやり方です。経費を増やすにしても1年で計上できる経費にしなければ、あまり節税効果は高くなりません。そこで注目したいのが、特別償却ができる設備です。特別償却とは減価償却資産の購入費用の減価償却費にさらにプラスして減価償却費を計上できるという仕組みです。不動産の売却で短期間に利益が出てしまった場合、特別償却で経費計上ができれば、節税効果があります。

「生産性向上設備投資促進税制」と呼ばれるものです。特別償却50%または税額控除4%について、平成29年3月末まで適用されます。青色申告をしている法人と個人が対象になります。

特別償却ができる設備は、最新モデルか生産性の向上を年平均にして1%以上向上させる最新設備(A類型)、もしくは、生産ラインやオペレーションの改善に資する設備(B類型)です。

改善の基準は、投資計画における投資利益率が年平均15%以上(中小企業等は5%以上)となります。この制度を利用できる対象は青色申告をしている個人、もしくは法人になります。業種、業態、企業規模による制限はまったくありません。また、一定の要件さえ満たせば、機械装置そのものだけではなく、工具、器具備品、建物、建物付属設備、構築物、ソフトウェアなど広い範囲の設備が税制の対象になります。

最新設備(A類型)の場合は、税制優遇を得られるための証明書をメーカーからもらう必要があります。また、設備投資の価格に次のような制限がありますので、それを満たす必要があります。

  • 機械装置:160万円
  • 工具及び器具備品:120万円  (単品30万円以上かつ合計120万円)
  • 建物:120万円
  • 建物附属設備:120万円 (単品60万円以上かつ合計120万円)
  • ソフトウエア:70万円

生産性を向上させる設備(B類型)の場合は、投資計画を作成して公認会計士または税理士の事前確認を受けた上で、経済産業局へ申請が必要です。また、設備投資の価格に次のような制限があります。

  • 機械装置:160万円
  • 工具及び器具備品:120万円  (単品30万円以上かつ合計120万円)
  • 建物および構築物:120万円
  • 建物附属設備:120万円  (単品60万円以上かつ合計120万円)
  • ソフトウエア:70万円(単品30万円かつ合計70万円)

人気の太陽光発電設備は生産性を向上させる投資設備(B類型)に含まれます。太陽光発電の設備を収益物件の敷地内に設置するか、もしくは土地付きの設備を購入して節税します。優遇税制を活用するには、条件を満たすことが必要なので依頼している税理士のアドバイスを受けましょう。

まとめ

収益不動産の価格が上昇しているなか、キャピタルゲインを狙って収益不動産の売却を考えている人も少なくはないと思います。しかしながら、個人で売却をすると売却益は分離課税で処理をされるので、利益を残すことが意外に難しいということがわかります。

ところが、法人で不動産を売却すると、1事業年度ですべての利益から損金を差し引いたものに、課税されるので節税もしやすくなります。また、法人税の最高税率は個人よりも低く設定されていますし、将来に渡って節税を考えるためにも、法人化ということを視野に入れることも必要になるでしょう。不動産投資をスタートする前に考えてみてはいかがでしょうか。

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