事務所家賃は消費税がかかる!見落としがちな課税対象の賃貸契約

税金・節税対策
tax-house
今秋の消費税増税を控えて、不動産関連のメディアでは住宅ローン減税の延長や「家賃は変わらない」との解説をする記事を多く見かけます。それらの話も重要ですが、「事務所の家賃は消費税がかかる」という事実を忘れてはいけません。

事務所となると主にテナントやオフィスビルにしか関連しないように思えますが、仮に小規模の法人や個人事業主が「事務所」として使用した場合、家賃にも消費税がかかるるのです。今回は、借り主だけでなく貸し主であるオーナーにも影響のある事務所使用に関わる消費税の注意点を解説します。

そもそも家賃にはなぜ消費税がかからない?

まず、家賃に対する消費税の取扱いについて簡単におさらいしてみたいと思います。あまりご存じの方も多くありませんが、実は消費税が創設された当初、実は家賃にも消費税はかけられていました。

しかし、多くの議論がなされた結果、1991年の税制改正において人が最低限必要とする住居に対して消費税をかけるのは適切ではないとして非課税になったのです。当時は消費税3%でしたが、2019年10月に10%になることを考えると、この改正がなければどうなっていたかと少々怖い気もします。

ただ、冒頭でもお伝えした通り、住居ではない「事務所」として契約している物件は消費税がかかります。続いて、その点を詳しくご説明します。

「事業用物件」なら家賃に消費税がかかる

いくら家賃に消費税がかからないと言っても、「事務所」として使用していると消費税がかかります。その理由を分かりやすく解説します。まず、主な不動産のうち、消費税がかかるものとかからないものを見てみましょう。

住居用非課税
テナント課税
駐車場課税
貸し倉庫課税
土地課税

このように様々な用途があり、ほとんど課税対象となります。最後の「土地」も非課税ですが、住居との違いを理解するために、なぜ非課税となるのか解説します。建物は、それ自体を使用することで時と共に劣化していきます。

「自分が住むための建物をお金と引き換えに消費した」と解釈すれば分かりやすいでしょう。それに対して土地は劣化することはありませんので、土地の貸付や譲渡に消費税はかからないのです。

建物に住むことでサービスの消費と捉えるなら、本来は家賃にも消費税をかけるべきです。ただ、「住まいは人の生活に最低限必要なもの」であるため特例的に課税対象ではありません。

ここまででお気付きかと思いますが、「事務所」は住まいではなく、「業を行う」ためのものです。つまり、建物を借りて事務所として使用する場合はサービスの消費とみなされるため消費税がかかるのです。

ここで一つの疑問が生じます。「個人名義で契約して事務所として使用していたら?」この点は大事ですので、続いて解説させていただきます。

実はこっそり事務所として使っていた場合…

もう一度、家賃が非課税であるという部分について、正式な条文を見てみましょう。

〈消費税法 第6条〉
国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第一に掲げるものには、消費税を課さない。
〈別表1-13〉
住宅(人の居住の用に供する家屋又は家屋のうち人の居住の用に供する部分をいう。)の貸付け(当該貸付けに係る契約において人の居住の用に供することが明らかにされているものに限るものとし、一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)

■出典:e-Gov「消費税法」

別表1の13にもあるように、「居住の用に供することが契約で明らか」である場合は非課税とされています。よって、個人が住まいとして契約しながら事務所使用するのであれば、消費税はかからないと解釈することができます。では、その裏付けともなる消費税法に関する解釈通達も見てみましょう。

〈用途変更の場合の取扱い〉
貸付けに係る契約において住宅として貸し付けられた建物について、契約当事者間で住宅以外の用途に変更することについて契約変更した場合には、契約変更後の当該建物の貸付けは、課税資産の譲渡等に該当することとなる。
※貸付けに係る契約において住宅として借り受けている建物を賃借人が賃貸人との契約変更を行わずに、当該賃借人において事業の用に供したとしても、当該建物の借受けは、当該賃借人の課税仕入れに該当しないのであるから留意する。

■出典:消費税法基本通達「第13節 住宅の貸付け関係」

少し分かりづらいかもしれませんが、要は以下のような意味です。

・住宅の賃貸契約を住宅以外に契約変更した場合は、課税資産の譲渡等に該当する
・しかし、契約の変更をせずに用途変更しているだけなら課税仕入れに該当しない

「課税資産の譲渡等」というのは、不動産の売買だけでなく賃貸のことも含まれます。また、主に物の売り買いを生業とする人向けに書かれているため「課税仕入れ」となっていますが、これは物件の借り主が賃料を払う代わりに事務所使用できる物件を賃貸という形で仕入れたという意味です。

「契約変更をせずに事務所利用していた」のであれば消費税は非課税。「住居から事務所に契約変更」をすると課税対象の賃貸になる。法律や国税庁の基本通達でハッキリと決まっていることですので、これを機に覚えておきましょう。

他にもある消費税がかかる賃貸物件の例

ここまでは、主に事務所使用した時の家賃と消費税の関係について解説いたしました。最後に不動産に関わるお金に絞って「実はこんなものにも消費税がかかる」というものをご紹介します。

〈消費税がかかる賃料等〉
  • 事務所以外でも事業用とみなされるものの賃料(店舗や倉庫など)
  • 単体で賃貸する駐車場の賃料(建物に付随するものは非課税)
  • 店舗併用住宅の店舗部分の賃料(建物面積で按分する)
  • 民泊用物件の家賃
  • 契約期間が1ヶ月未満の賃貸物件の家賃
  • 事業用物件の礼金
  • 事業用物件の更新料

最後にあった礼金と更新料ですが、これは「いずれ返還するものは非課税」「返還しないものは課税」という解釈になります。礼金も更新料も、お金とサービス交換する消費にあたるわけですが、敷金は保証となるものを預かるだけですので消費にはあたりません。

何かと解釈の難しい消費税法ですが、法令などを見ていくと課税と非課税で様々な考え方があります。個人の賃貸関係で今回ご紹介したもの以外のケースというのもあまり多くないと考えられますが、もし判断に迷うケースがあれば、無理せず税理士に相談したほうが良いでしょう。

まとめ

最後に、消費税の解釈についてもう一点補足させていただきます。消費税に詳しいオーナーの方は「家賃収入1000万円ないのに家賃に消費税を上乗せしてよいのか」という疑問があるかもしれません。

考え方は色々ありますが、まず消費税法などでは「消費税の免税業者は消費税を徴収してはいけない」という決まりは一切ありません。

また、賃貸は別としても、商業的な考え方として「仕入れで消費税を払う」「商売で消費税を貰う」という関係があるため、免税業者だから消費税を貰わないのでは仕入れの消費税分が損失になります。そもそも、その年はもしかすると1000万円の売上が出るかもしれませんし、消費者がサービスを消費したという事実に変わりないのです。

消費税の免税というのは、「売上が少ない業者から税を徴収するのはいかがなものか」という考えが根本にあるもので「免税=徴収してはいけない」ではありません。仮に事業用物件を賃貸していて1000万円の家賃収入がないとしても、家賃には消費税を上乗せすべきということは覚えておきましょう。

4.5/5 (4)

記事の平均評価