第2のスルガ銀行「西武信金」。金融庁の全国調査で暴力団関与が発覚! | 不動産投資を考えるメディア

第2のスルガ銀行「西武信金」。金融庁の全国調査で暴力団関与が発覚!

シェアする

20190608

先日、金融庁による地銀への立ち入り検査の結果として「西武信金」が行政処分を下されました。「第2のスルガ銀行」とも揶揄される西武信金ですが、その呼び名からして関係者の間では「怪しい」と言われることもあったそうです。

今回は金融庁による西武信金への立ち入り検査の結果、発覚した事実や処分の根拠、そして西武信金の今後について考えてみたいと思います。

西武信金への立ち入り検査により暴力団との関係が発覚

2018年11月、下記の不正融資疑惑に伴って西武信金に金融庁の立入検査が行われました。

  • 不動産投資の審査書類を改ざんによる不正行為
  • 形式的な審査のみでほぼ100%融資を承認

検査により徐々に上記の不正が明らかになっていく中、新たに発覚したのは暴力団に繰り返し融資を行っていた事実です。更に長年に渡って西武信金の幹部社員が暴力団の接待行為を繰り返していた事も判明。西武信金の不正は現場だけでなく組織ぐるみの不正だったのです。

そして2019年5月24日。金融庁から委託を受けた関東財務局は、西武信金に対してついに行政処分を下しました。業務改善命令の内容は以下の通りです。

  • 健全かつ適切な業務運営を確保するため、以下を実行すること。
    1. 本処分を踏まえた責任の所在の明確化と内部統制の強化
    2. 融資審査管理を含む信用リスク管理態勢の強化
    3. 反社会的勢力等の排除に向けた管理態勢の抜本的な見直し
  • 上記に係る業務の改善計画を令和元年6月28日までに提出し、直ちに実行すること。
  • 上記の改善計画について、当該計画の実施完了までの間、3ヶ月毎の進捗及び改善状況を翌月15日までに報告すること

■出典:西武信用金庫「当金庫に対する業務改善命令について」

西武信金に金融庁の立ち入り検査が行われた経緯

今回、西武信金に対する行政処分が決定したのには、大きく2つのきっかけがあります。

  • スルガ銀行のシェアハウスへの不正融資
  • 2019年秋に開催されるFATF(金融活動作業部会)の対日審査

まず、2018年夏に発覚したスルガ銀行の不正融資問題。スルガ銀行が総額1兆円を超える巨額の不正融資を行っていたことが発覚し、下された処分は半年間の「新規投資用不動産融資の業務停止」という重い行政処分でした。スルガ銀行の不正融資事件をキッカケに、金融庁はすべての金融機関に対して不動産投資向け融資の監視を強化すると発表しました。

■参考:朝日新聞DIGITAL 金融庁、不動産向け融資の監視強化 スルガ銀問題を念頭

そして西武信金への立ち入り検査のきっかけのもう一つが、FATF(マネー・ロンダリング対策の国際協調を推進する政府間会合)の対日審査です。現在、世界的にテロや犯罪組織への厳しい対応が要求されています。2019年秋に開催されるFATFを見据え、日本は2018年2月に「マネー・ロンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」を公表しました。

マネー・ロンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドラインの詳細は省略しますが、これは金融庁が各金融機関の取り組みをモニターし、その結果により監督や指導を行うというものです。かくして金融庁と金融機関は「不正取引・暴力団との癒着撲滅」へと本格的に乗り出しました。西武信金への立ち入り検査は、上記2つの理由があったためと言われています。

これまでに発覚した反社会的勢力と金融機関の関係

金融機関と反社会的勢力との関係は西武信金だけの話ではありません。これまでに幾度となく発覚した金融機関と反社会的勢力との癒着には、以下のようなものがあります。

発覚した金融機関と反社会的勢力の主な癒着
1997年 大手証券会社による総会屋へ損失補填 1991年に証券会社の損失補填が問題になり、定期的に監視が行われるようになる。その結果、1997年の野村證券に対する調査を皮切りに、野村、大和、山一、日興という大手証券会社の暴力団への損失補填が次々と明らかになった。
2007年 三菱東京UFJ銀行が社団法人 飛鳥会へ融資 三菱東京UFJ銀行として合併される前の三和銀行姫路支店が、山口組系の暴力団が理事長を務める社団法人「飛鳥会」と長期間不正な取引を継続していたことが発覚。経営幹部も情報を知っていながら放置していたとして、1週間の新規法人融資の停止などの行政処分を受けた。
2013年 みずほ銀行による暴力団融資事件 みずほ銀行傘下のオリコが暴力団員に自動車ローンの融資を実行。みずほ銀行もその事実を知りながら放置していたため、1か月間の新規提携ローン取引禁止などの業務改善命令が下された。
2016年 ベル債権回収会社が元暴力団員関与企業へ債権譲渡 ベル債権回収会社が元暴力団員が関与する会社へ債権を譲渡したことで業務改善命令を受ける。「元・暴力団員」のため明確に違法ではないが、反社会勢力排除の意識の欠如を指摘され処分に至った。
2018年 スルガ銀行の暴力団員への住宅ローン融資 スルガ銀行の不正融資に関する調査において、2010年に60件を超える暴力団への口座開設や融資も発覚した。国内銀行としては2013年のみずほ銀行以来の業務停止処分となり、市場の混乱を招いた。

このように金融機関と暴力団との関係は幾度となく報道されてきましたが、2013年に判明したみずほ銀行の事件から金融機関と暴力団との関係根絶の動きは加速しています。スルガ銀行と西武信金の件で膿は出切ったようにも思えますが、2019年秋に開催されるFATFの対日審査に向けて、果たして金融機関と暴力団との癒着は根絶されるのでしょうか。

行政処分の結果により破綻の可能性も!?

西武信金の業績を一気に押し上げたのは、2010年に就任した落合寛司理事長の手腕によるものとされています。郊外中心の西武信金を都心へと移転させ、積極的な融資により9160億円だった貸出残高をわずか8年間で1兆6000億円を超えるまで引き上げたのです。

■参考:帝国データバンク 東京都内に本店を置く 23 信用金庫 預金・貸出金調査

しかし、その栄光は不正融資と暴力団との癒着問題で地に落ちました。今回の行政処分により落合理事長は引責辞任しましたが、辞任して済まされる問題ではありません。今回下された業務改善命令は業績に直接大きく影響するものではないものの、西武信金の信頼回復するには相当の努力が必要になるでしょう。今後の動きにより、スルガ銀行のように別の金融機関との提携が必要になる可能性も否めません。

ただ、不正融資を差し引いても、これまで西武信金が行ってきた「不動産業中心の融資展開」を見ると、信用回復の可能性がないわけでもなさそうです。ここで西武信金の貸出金内訳をご覧ください。
西武信金-貸出金業種別内訳

■出典:西武信用金庫 半期DISCLOSURE 2018・9 貸出金業種別内訳

全貸出の中で不動産業が12%、不動産賃貸業が43.64%の合計55%を超えています。それに対し、東京の信金で預金積金残高が第2位の多摩信用金庫の貸出残高を見ると、不動産関連の貸出金は28.6%と西武信金の約半分に留まっています。

■参考:多摩信用金庫 たましんレポート2018 貸出金業種別残高内訳

東京オリンピックによるインバウンド需要の増加も下火になるどころか未だ不動産価格は上昇を続けています。過剰融資が抑制されて融資額が減ったとしても、不動産業者との健全な関係をさえ保てれば破綻という憂き目も回避できるはずです。

ただ、会社組織の不正や汚職は根が深く、なかなか根絶できるものではありません。これまで何度も不正を繰り返して事件が発覚した三菱自動車の二の舞にならないよう、西武信金は長く続いてきた内部の不正・腐敗を正し、全ての膿を出し切る転機を迎えていると言えるのではないでしょうか。

5/5 (3)

記事の平均評価

各種お問い合わせやご相談はこちら