日銀の金融政策決定会合が発表!不動産ローンや業界への影響は? | 不動産投資を考えるメディア

日銀の金融政策決定会合が発表!不動産ローンや業界への影響は?

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日銀

7月31日正午過ぎ。日本銀行による金融政策決定会合の内容が発表されました。今回はその内容をまとめつつ、住宅ローンや不動産へどう影響するのかを解説させていただきます。

日銀金融政策決定会合の発表内容まとめ

発表された内容を見てみると、不動産市場に大きく影響すると思われるものは多くはありません。とは言え、住宅ローンへの多少の影響と「家賃」という存在が物価上昇を抑える要因になっていると分析している点は興味深いところ。まずは発表内容とその影響について見てみましょう。

日銀が今回の決定会合で発表した主な内容は以下の7つとなります。

  • 消費税率引き上げの影響に備え、当分の間、低金利政策は維持する
  • 短期金利のマイナス金利の適用は今までどおり
  • 長期金利(10年国債)の0%誘導の方針に変わりはないが、経済、物価情勢等に応じてある程度の変動は許容する
  • ETFやJ-REITの年間6兆円、年間900億円の買入れ額は変更しないが、市場の状況に応じて変動し得る
  • コマーシャルペーパー、社債等の残高は、それぞれ2.2兆円、3.2 兆円を維持する
  • 日本銀行当座預金のうち、マイナス金利が適用される政策金利残高を10兆円から5兆円に減少させる
  • 年間5.7兆円のETFの買い入れ比率を、日経平均を中心とした指数連動のETFからTOPIXに連動するETFにウエイトを移す

これらの発表内容と併せて、日銀がどのような見解か気になるところですが、同じく日銀が発表した基本的見解を読み解いてポイントをまとめると、以下の10項目になります。

  1. 2018年度は海外経済が成長を続けることを前提として、金融緩和や政府支出により「潜在成長率を上回る成長を続ける」としている
  2. 2019年度以降は、設備投資の減速、消費税率引き上げの影響を理由として成長ペースは鈍化するが、外需による支えで「景気の拡大は続く」と見込んでいる
  3. 消費者物価はプラスだが動きは弱いことから、中長期的予想が後ずれしている
  4. 長期的なデフレにより賃金や物価が上がりにくいという意識や慣行が根強く残っていることが物価上昇に歯止めをかけている
  5. 特定の分野で物価の強い押し下げがされている
  6. 消費者物価は想定より時間はかかるが、徐々に2%の上昇率に近づくと考える
  7. リスクバランスは、2018年度は概ねニュートラルだが、2019年度以降は下振れリスクの方が大きい
  8. 物価安定に向けた勢いは維持されるが、力強さに欠けている
  9. 2018年度の物価上昇率の見通しを1.3%から1.1%へ下方修正
  10. 2019年度の物価上昇率の見通しは1.8%から1.5%へ、2020年度は1.8%から1.6%へ下方修正

家賃が物価上昇の妨げになっている?

これらの発表内容で気になる点はいくつかありますが、先に上記5にあった「特定の分野で物価の強い押し下げがされている」とはどういうことなのでしょうか。

これは日銀が今回発表した「賃金・物価に関する分析資料」を見ると分かります。同資料では、「公共料金と家賃の伸びの悪さが消費者物価の上昇を抑えている」としつつ、消費者物価指数を計るにあたって公共料金と家賃が占める割合が5割弱と書かれています。

その事実に対し、補助金の投入で設備投資などの費用が公共料金に反映されにくくなっていることや、節税効果を狙った貸家の着工数の増加が家賃上昇に歯止めをかけているといったことを挙げ、これらが物価上昇の足かせになっていると分析しています。

他にも、格安スマートフォンの登場により携帯電話料金が下がっていることや、インターネット通販の普及やドラッグストアの成長などの影響を受けて、スーパー販売価格が下がったことなども物価の押し下げ要因となっているとしています。

あくまでこれらは日銀による分析ですが、物価の上昇が抑えられているという事実は変わりません。結果的に今回の金融政策決定会合では上記に挙げた変更がなされるわけですが、不動産業界として最も気になるのは「長期金利の変動を許容する」という部分。これが何を意味するのか見ていきましょう。

■参考:日本銀行「賃金・物価に関する分析資料」
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2018/rel180731f.pdf

住宅ローンへの影響は?

今回の金融政策決定会合の内容でメインとなっているのは、金利に関するスタンスの変更と、債券等の買い入れについてとなっています。

そして、最も気になるのが「長期金利の上昇の容認」。日銀はこれまで、住宅ローン等の指標となる長期金利が上昇することを抑え、0%に近い水準を維持するために長期国債を大量に買い入れるオペレーションを行ってきました。

結果としてそれらが不動産市場に与えてきた「副作用」と呼ばれる悪い影響を緩和させる狙いで、今回の決定会合では0.1%程度の振れ幅は許容するという結論に至ったと考えられます。

長期金利が住宅ローンの固定金利に影響するのは周知の事実ですが、要するに今回の日銀決定会合の内容な「住宅ローンの固定金利が0.1%程度上昇する可能性がある」と捉えることができるわけです。

今回の日銀の発表を受けて、既にりそな銀行が10年固定ローンの金利を0.05%、みずほ銀行や三井住友銀行、三井住友信託銀行が15年以上の固定金利を0.05%引き上げています。

ただ、基本的に0%の水準を維持するという日銀のスタンスは変わっておらず、あくまでも許容できる振れ幅を少し拡大するだけの話。仮に10年固定ローンの金利が0.1%上昇したところで、一般の戸建て住宅のローン返済額も数千円変わるかどうかという程度です。

「その数千円が大きい!」と言われれば返す言葉もありませんが、今回の発表で大事なのは、住宅ローンや不動産市場にただちに大きな影響が出るということではなさそうです。

金融緩和の今後の展望は?

直接の影響が少ないとはいえ、長期的な視点で各市場を見た時に安心していられるとは言えません。この数年で物価上昇率2%を達成できなかったことに加え、金融市場への悪影響が大きくなったこともあり、今回の変更は「長期戦を見込んだ変更」という見方が有力。

それは、来年10月の消費税増税の影響を今回の決定会合で述べていることや、2020年の物価の見通しも1.6%としていることからも容易に判断できます。付け加えるなら、物価上昇率2%という目標がかなり遠のいたと言える状況で、わずかに諦めのムードが見えてきているようにも思います。

また、今回の長期金利の上昇容認については今後の利上げの布石であるという見方もあります。これについては筆者も同意見です。

「金融緩和で供給されたお金で不動産市場が盛り上がった」
「ETFなどの買い入れにより株価を歪めている」
「現在の買い入れは将来の緩和縮小時の影響が大きすぎる」

など、日銀による金融緩和は様々な意見が飛び交っていますが、未だ出口の見えない金融緩和をどう収めようとしているのか、もし今の金融緩和の副作用が予想に反して大きなものになってしまった場合、どう対応していくのか。

いずれ金融緩和ではこれ以上景気の底上げに期待できないと判断する時が来るかもしれませんが、その時の方針転換による市場への影響はいかほどのものか危惧せざるを得ません。

まとめ

今回は、2018年7月31日に行われた日銀決定会合の内容から不動産市場や住宅ローンへの影響を考えてみました。日銀の長期金利に対するスタンスの変更は不動産やローン金利などにすぐに大きな影響があるとは言えません。

しかし、これまでとは少し違う日銀の姿勢は、これまで「低金利の今こそ!」と浮かれがちだった不動産市場に少々水を差したのではないか、そんな風に感じられるものでもありました。

徐々に金融緩和に対する姿勢を変えてくるのではないかと思える今回の金融政策決定会合でしたが、2019年の消費税増税以降が不動産投資においても特に重要な分岐点となってくるかも知れません。

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