38年ぶりの相続法改正を解説!今回の大改正で何が変わった? | 不動産投資を考えるメディア

38年ぶりの相続法改正を解説!今回の大改正で何が変わった?

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相続にまつわる

手続きの煩わしさや揉め事に発展しがちなことで嫌厭される相続税問題。
かねてより話し合われていた「民法(相続関係)等の改正に関する要綱案」が、6月6日に衆議院法務委員会で審議入りしました。

問題なく通過すれば本会議での採決という事になりますが、今のところ特に厳しい指摘もなく話し合われており速やかに可決される事が想定されます。

各報道機関などでは約40年ぶりの改正と報じられる事とありますが、正確には昭和55年以来、38年ぶりの大きな改正です。
では、この改正案が成立した場合、相続税はどのように変わるのでしょうか。

今回は、相続に関する民法改正案の内容について、なるべく分かりやすく解説させていただきたいと思います。

改正される6つのポイント

相続というと、何かと難しい用語やルールがあって、自らその仕組みを理解しようとする方はあまり多くありません。
実は、一度理解しようとすればそこまで難しいものではないのですが、身近でない相続の話はどうしても後回しにされてしまいがちなようです。

しかし、人生何が起こるか分からないもの。そこでまず先に、今回の大改正で変わる6つのポイントから見てみることにしましょう。

改正案で審議される内容

今回の改正案で審議されるのは以下の6つです。全てを解説させていただく前に、まず概要をまとめました。

「1.配偶者の居住権を保護するための方策
配偶者の居住権を短期的に保護するための方策
配偶者の居住権を長期的に保護するための方策
「2.遺産分割に関する見直し等
配偶者保護のための方策
仮払い制度等の創設・要件明確化
一部分割
遺産の分割前に遺産に属する財産を処分した場合の遺産の範囲
「3.遺言制度に関する見直し
自筆証書遺言の方式緩和
自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度の創設
遺贈の担保責任等
遺言執行者の権限の明確化等
「4.遺留分制度に関する見直し
遺留分減殺請求権の効力及び法的性質の見直し
遺留分の算定方法の見直し
遺留分侵害額の算定における債務の取扱いに関する見直し
「5.相続の効力等に関する見直し
相続による権利の承継に関する規律
義務の承継に関する規律
遺言執行者がある場合における相続人の行為の効果等
「6.相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

参考:法制審議会第180回会議「民法(相続関係)等の改正に関する要綱案」
http://www.moj.go.jp/content/001250062.pdf

これらの改正案はニュース等でも報道されていますが、主に注目されているのは「配偶者の保護に関する改正案」「遺産分割に関する見直し」「遺言に関する制度の見直しと新制度の創設」「相続人以外の人の貢献に対する考慮」の4つです。
他2つの重要度が低いという訳ではありませんが、現行の制度で不公平感が強かった部分にあたる4つの改正が特に注目されているようです。

それでは、相続法の6つの改正ポイントを特に重要なものから順を追って解説させていただきます。

配偶者の居住権を保護するための方策

配偶者の居住権を短期的に保護するための方策

配偶者が相続開始時に住んでいた建物の遺産分割の必要が生じた場合、相続開始日から6ヶ月間は住み続けることができます。但し、建物の一部を使用していたなどの場合は、その部分のみに限定されます。これを「配偶者短期居住権」といいます。

なお、相続開始時に配偶者が住んでいた建物に対して、次の項で説明する「配偶者居住権」を取得した場合は、この限りではありません。
また、以下のような注意点もあります。

  • 建物の使用に関する善管注意義務がある
  • 配偶者短期居住権は譲渡できない
  • 全相続人の許可なしに他人に建物を使わせることはできない
  • 建物の修繕が必要と判断された場合、所有者にその旨を知らせなければならない
  • 建物の通常使用で発生する費用は配偶者の自己負担だが、修繕などで発生した費用は共同相続人で支払わなければならない

配偶者短期居住権の消滅

配偶者短期居住権を得ると、以下のような場合に権利が消滅し、修繕の義務を負うことになります。

  • 善管注意義務の違反や勝手に他人に建物を使わせた場合
  • 配偶者が死亡、または「配偶者居住権」を取得した場合
  • 居住権が消滅するまでの間に建物を破損させた場合は修繕の義務を負う

配偶者の居住権を長期的に保護するための方策

配偶者短期居住権で出てきた「配偶者居住権」ですが、要は配偶者が相続開始時に居住していた建物は使用する権利を得るということです。
要綱案では「長期」という言葉が出てきますが、配偶者の基本的な居住権について定められたものです。
つまり、基本的な居住権を指すものですから、配偶者短期居住権とは相続開始時に他の相続人から退去を要求された場合に対抗できる権利と考えると分かりやすいでしょう。

なお、配偶者居住権についても注意点や権利があります。

  • 第三者による占有や居住権の妨害は返還、停止を請求することができる
  • 配偶者居住権の期間は配偶者が死亡するまでだが、遺産分割協議や遺言、家庭裁判所の遺産分割審判によって定められたものがあれば、それに従う
  • 建物の所有者は配偶者居住権を登記する義務を負う
  • 当然、建物の善管注意義務を負う
  • 居住権の譲渡もできない
  • 建物の所有者の承諾なしに、増改築や賃貸をしてはいけない
  • 所有者の承諾または元々住んでいる建物の一部を賃貸していた場合、賃貸は継続可能となり、所有者は配偶者居住権の消滅を理由に第三者を退去させる事はできない(但し、善管注意義務違反や無断で第三者に建物を使用させていた等の場合を除く)

遺産分割に関する見直し等

今回の改正で注目されているもう一つのポイントが「遺産分割時の持戻し免除」です。

これは、結婚してから20年以上経過した夫婦間で遺贈や贈与があった場合、それを相続時の計算に含めなくてよいというものです。

例えば、遺産が建物2000万円、現金1000万円だとした場合、現行法では合計の3000万円を遺産として考え、妻と子で1/2ずつの1500万円という風に分けることになります。しかし、残された妻が今までどおり自宅に住む場合は、子に現金500万円を渡さなければなりません。
もし持ち合わせの現金が無い場合、現行法では自宅を売却したり借り入れしたりという問題がありました。

これを解消したのが今回の相続法改正です。
被相続人から家を贈与や遺贈された場合においては、その家は遺産分割の計算に含めなくてよいと改正されますので、上記の例であれば、妻も子も500万円ずつを受け取れるという事になります。

これまでは民法の規定により、「贈与した家は相続の計算に含めないでほしい」といった意思表示が無い場合、贈与された家も含めて相続の計算を行う必要がありました。
しかし、今回の改正ではその意思表示が無くても、配偶者に限り、贈与された家を持ち戻す必要が無くなったのです。

相続時に家族を悩ませる葬儀代や生活費などの捻出。
終身保険等も受け取りに1週間前後かかる場合があったり、そもそも故人が保険に加入していなかった等のケースもあります。

その為、遺族は個人の預貯金等を頼りとしたいところですが、銀行側は相続人同士の話し合いが完了するまで預貯金の払い戻しを許可しません。

仮払い制度等の創設・要件明確化

これらの問題を解消してくれるのが、仮払い制度の創設です。

  • 遺産に対する債務返済や相続人の生活費等に必要と判断された場合、家庭裁判所に遺産分割審判や調停を申し立てることで、相続人は預貯金を受け取ることができる
  • 上記に限らず、家庭裁判所の判断が無しに各相続人は遺産である預貯金の1/3までは受け取ることができる。但し、受け取った預貯金は後の遺産分割の計算に含める事になる

つまり、今までは遺産分割協議が完了するまで受け取れなかった個人の預貯金が、改正後は一定の条件下で受け取れるようになるという事です。
分かりやすく言えば、葬儀代などを個人の預貯金から賄いやすくなるという事です。
ただし、遺産の一部でも取得させてしまうことが相続人らの利益を害する場合にはこの限りではありません。

この改正に対しては、「相続人のうちの一人が勝手に預貯金を引き出せてしまうが、いかがなものか」という意見もあり、一概に歓迎できるものとは言えないようです。
しかし、少なくとも早く故人を弔いたいと考える家族にとっては朗報となり得るでしょう。

遺言制度に関する見直し

遺言は、テレビなどでもしばしば取り上げられる事があり、何となく「効力の強いもの」という認識を持っている方も多いのではないでしょうか。
しかしながら、「貯金は全部ネコにあげる」と書かれたメモがある程度では法的な効力はありません。

実は、遺言の作成には厳格なルールがあり、その要件を満たしていなければ遺言として認められないケースもあります。
しかし、そのルールがあまりにも厳格過ぎてかなりの手間となっていたため、今回の改正で以下のように改められる事になったのです。

自筆証書遺言の方式緩和

現行法では遺言の目録を含めた全てが自筆である必要がありました。
しかし、この法律の問題は、遺産の数が多岐に渡った場合それら全てを書き出さなければならず、特に高齢者に対する負担は非常に大きいものとなります。

そこで、今回の改正では財産目録について必ずしも自筆である必要はないと改められました。
要は、パソコンなどで目録を作成しても良いという事になるわけですが、目録のページ毎に署名と捺印がされている事が条件となります。

自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度の創設

また、これまでは全ての遺産分割協議が終わった後に遺言が発見されて、大きな揉め事や遺産分割の話を一からやり直すというケースも少なからずありました。
そういった問題を解消するため、遺言書を法務局に保管できる制度が創設されます。

法務局に保管された遺言は本人であればいつでも閲覧や返還を請求できます。
本人でない場合、自身が相続人となる場合の遺言のみ、遺言者の死亡後に閲覧、交付を受けることができます。

更に、民法1004条の家庭裁判所による遺言の検認という手間や時間のかかる手続きを省けるようになるため、速やかな相続が可能となります。

遺留分制度に関する見直し

さて、今回の改正で最も難解なのが「遺留分制度の見直し」です。極力分かりやすく解説しますので、少し腰を据えるつもりで読んでみてください。

遺留分減殺請求権の効力及び法的性質の見直し

相続は時に「愛人に全ての遺産を渡します」といった遺言があったために残された家族が多大な迷惑を被るケースがありますが、そういった事態を防ぐため「遺留分減殺請求権」という権利があります。

この権利によって、故人が第三者に全ての財産を渡すという遺言を残したとしても、家族は最低限の相続を受けることができます。

例えば、賃貸経営で生計を立てていた故人が、生前にお世話になったAさんに賃貸物件を渡すという遺言を残していたとします。
遺言によりAさんに賃貸物件の所有権等が移ってしまうと、家賃収入で暮らしていた家族の生活が危うくなるため、当該賃貸物件で得られる家賃の一部を受け取れるのです。

しかし、これは逆に賃貸物件を取得したAさんにも不都合が生じます。
仮に、アパートの一部を遺留分減殺請求によって相続人と共有することになった場合、「アパートの一部は遺留分だから、その部分を取り壊して別の建物を建てます」なんて言われたら大変です。

つまり、他の相続人の身勝手な行動などにより、せっかく取得した賃貸物件の経営に深刻な影響を及ぼす可能性があるのです。
このようなケースは極端かもしれませんが、賃貸経営に限らず、Aさんが取得したものが会社だったりすれば、なおさら大問題です。

そこで、今回の相続法改正により「遺留分の権利者は、遺留分に相当する額を金銭で支払うように請求することができる」と変更されます。

要するに、遺留分に見合う金額を請求できるというように変更されたことで、わざわざ「建物を壊す!」といった極端なケースに発展することなく、話し合いで解決できる可能性が高くなったのです。

ただ、金銭の支払いによって相続の問題が解決しやすくなったとはいえ、すぐにお金を用意できないAさんが「今すぐ払え!」なんて言われたら、それはそれで問題です。

そこで「裁判所は受遺者の請求によって遺留分の支払いに対して期限を設けることができる」という改正も同時に行われます。

遺留分の算定方法の見直し

さて、相続にはもう一つ悩ましい問題があります。
現行法の民法1030条では、1年以内に贈与されたものは遺留分の算定に組み入れるとしていますが、これが誰に対する贈与の事かは明記されておらず、これまでは「第三者に対する贈与のこと」と解釈されてきました。

要するに、第三者ではない「正式な相続人」に関しては何年前の贈与であろうが、遺留分に算入するという事になります。

よって、子であるBが父から20年前に1億円受け取っていようが、3ヶ月前に1000万円の贈与を受けていようが、子であるBは贈与されたものを含めて遺留分の計算をしなければならず、既にお金を使ってしまって手元になくても、遺留分を他の相続人に支払わなければいけなくなるのです。

そこで「相続人に関しては10年前の贈与分を遺留分に算入する」と明記されることとなりました。
期間を限定することで、過去に受け取ったものを遡って計算されることが無いため、受贈者にとって安心材料となります。

では、故人が生前にお世話になった他人のAさんに対し、生前贈与していた場合はどうでしょうか。
ここでは、遺留分減殺請求権でAさんが遺言によって賃貸物件を取得したという例は一旦忘れてください。

例えば、子であるBさんが20年前に1億円の贈与を受けとっており、Aさんは遺言により故人から100万円の遺贈を受けたとします。また、それとは別に贈与を受けていない子供が数人いたとします。

現行法では「相続人に対する贈与が10年以内のものであれば」という条文が無いため、20年前に子になされた1億円の贈与とAさんが遺贈で受け取った100万円を足した上で遺留分の計算をしなければいけません。

まさか、過去に子であるBさんが1億円を贈与されていたなんて知るはずもないAさんが、喜んで100万円を受け取ったとしても、その100万円とBさんの贈与分1億円を遺留分として計算した結果、他の子どもたちが受け取る遺留分が優先され、Aさんの100万円がまるまる無くなるという可能性があるのです。

生前に故人の世話をしたAさんにとって、こんな不公平な話はありませんし、「そんな過去の事をAさんが知るはずもない」という解釈もできます。

「相続人に対する贈与が10年以内のものを遺留分に参入する」という条文を付け加えたのには、こういった第三者への遺贈分を守る狙いもあるのです。

相続の効力等に関する見直し

遺留分制度の見直しは少々難しかったかもしれませんが、ここで不動産業界での話題を少し挟みたいと思います。

昨今問題になっている所有者不明土地の問題が、今回の相続法改正で解決に向けて少し前進することになりそうです。
これまで、相続した事実を登記していなくても遺言どおりに相続しているのであれば、登記は義務とはされていませんでした。これが、所有者不明土地が増え続けた要因の一つです。

しかし、今回の改正により「相続した事実は登記していなければ第三者に対抗できない」ことになります。
これによって、完全な義務ではないものの相続登記を促すことに繋がり、所有者不明土地の増加を抑制することにもつながるだろうと考えられます。

いくら「負動産」であったとしても、先祖代々受け継がれた土地を見知らぬ第三者の手に渡すまいとして相続登記をするなんて動きが出てくるかもしれません。

相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

いよいよ相続法改正ポイントの最後となる「相続人以外の者の貢献を考慮するための方策」です。
今回の目玉でもある改正ポイントですが、相続人以外でも故人の財産維持や増加に貢献した場合は、それに見合った金銭の請求ができるようになります。

現行法では、直接の相続人ではない子の妻が一生懸命に介護をしたところで、場合によっては相続どころか介護報酬すら全く受けることもできず、全てが徒労に終わる事が多々ありました。

しかし、故人に対して生前に「無償」で、介護などの「労務の提供」をしたことで故人の財産維持、増加の寄与に繋がった場合、正式な相続人に対して労務に応じた額の「特別寄与料」の支払いを請求することができようになります。

仮に相続人同士が遺産分割で揉めていても、家庭裁判所が代わって請求することができますので、介護問題において大きな前進と言えるのではないでしょうか。

ただし、特別寄与料は相続人を知った時点から6ヶ月以内、もしくは相続開始から1年を経過するまでが期限となるため注意が必要です。

まとめ

今回は、改正された6つを解説させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
細かな規定はありつつも、一つ一つの条項自体はさほど難しいものではないと感じた方もいたのではないでしょうか。

38年ぶりの民法改正による相続法の緩和と新たな制度の創設。その難解さから、終活を始めるとなればある程度の決心を以て臨まなければなりませんが、どうやら今回の改正によって国民目線の緩和が実現しそうです。

「争続」と揶揄されるほど揉め事が起きがちな遺産分割などの相続の問題ですが、大きな争いにならずとも何やら親戚同士がお葬式の後に言い争いをしているところを見かけたことがある方もいるかもしれません。

特に、賃貸経営や不動産投資を行っている方に関しては、自分の亡き後に所有する財産で家族が揉めないようにするためには、早めの準備が必要です。今回の改正により遺言をパソコンで作成できるようになる見込みですので、是非とも本会議ですんなり成立してほしいものです。

相続について全く興味が無かった方や不動産投資にどう関係してくるかを考えていなかった方でもいずれは必要になる法律知識ですから、これを機に相続について一度考えてみてはいかがでしょうか。

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