『所有者不明土地特措法』が閣議決定!北海道を超える面積に!? | 不動産投資を考えるメディア

『所有者不明土地特措法』が閣議決定!北海道を超える面積に!?

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北海道を超える面積に!?「所有者不明土地特措法」が閣議決定

平成30年度の税制改正において「土地の相続登記に対する登録免許税の免税措置」が新たに創設されましたが、それと同時に新設されることとなった「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(以下、「所有者不明土地特措法」)」という法律をご存知でしょうか。

この法律は私たちの生活などに直接関係するものではありませんが、土地相続の観点から見ると少々気になるものなのです。これは数年前から懸念されている所有者不明土地への対策の一環として平成30年度税制大綱でも盛り込まれていたものであり、ようやく所有者不明土地問題も解決に向けて一歩前進したと言えるのかもしれません。

しかし、所有者不明土地問題自体が一般の方には直接影響がないという事で、その詳細を知らない方も多いと思います。そこで、所有者不明土地問題に一翼を担うかもしれない「土地の相続登記に対する登録免許税の免税措置」と、今回ついに閣議決定された「所有者不明土地特措法」について解説させていただきます。

所有者不明土地の意味と弊害

そもそも所有者不明土地というのは、最後に土地の登記をした所有者が死亡し、相続による所有権移転登記が行われないまま更に次の世代へと受け継がれていった結果、最終的な所有者が誰なのか分からなくなっている土地の事を指します。
ただしこれは一般的な認識であり、他の理由で所有者不明になっている土地もあるかもしれません。
所有者不明土地が本格的に問題視されるようになったのは東日本大震災がキッカケでした。
震災により多くの家や建物が津波や火事で消失し、いざ復興となった時に誰のものか分からない所有者不明土地が復興の妨げとなったのです。

以降、所有者不明土地という一つのカテゴリとして取り上げられることが多くなったこの問題、一般財団法人国土計画協会で行われている「所有者不明土地問題研究会」の調査によると、全国の所有者不明土地が2016年時点で410万ヘクタールとなっており、九州の367.5万ヘクタールを超えています。
更に驚くことに、2040年にはいよいよ740万ヘクタールにまでその面積が拡大し、ついには北海道の780万ヘクタールを超える可能性も示唆されています。

■参考:一般財団法人国土計画協会「所有者不明土地問題研究会」
http://www.kok.or.jp/project/pdf/fumei_land171213_02.pdf

所有者不明土地が復興の妨げとなっただけでなく、整備できない土地が荒れ放題になった結果、災害の危険さえ伴っているといった問題も発生しています。
さらには、それを理由に地方の税収や地域活性化の弊害にもなっているという報告もありますので、決して他人事とは言えないのです。
仮に、もしこのまま所有者不明土地が放置され北海道よりも広くなった場合、日本の国土の2割ほどが所有者不明という事になるため、私たち日本人の生活に与える弊害は見て見ぬ振りをする事ができなくなるでしょう。

所有者不明土地特措法は抜本的な対策となるか

では、所有者不明土地問題に対し、今回の政策でどのような対策が講じられることになるのでしょうか。
冒頭でご紹介させていただいた「土地の相続登記に対する登録免許税の免税措置」はあくまでも税制措置ですので、それだけで所有者不明土地の問題を根本から解決できるとは、国を含めて誰も考えていません。
そこで、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」にて、まずは所有者不明土地を把握し、自治体が所有者に代わって不明土地を有効利用できるようにしたのです。

この所有者不明土地特措法は、以下3つの措置と、後にご説明させていただく免税措置による相乗効果で問題を解決しようという狙いがあります。

所有者不明土地を円滑に利用する仕組み

国や都道府県知事が認定した公共事業として所有者不明土地を利用する場合、その手続きを円滑かつ合理的にすべく、都道府県に置かれた中立な立場である収用委員会に代わって裁定できるようにし、審理、権利、明渡等の決裁を一本化できるようになります。
また、福祉や利便性の向上に役立つ公共事業として所有者不明土地を利用する場合、市区町村の意見を聞きつつ、一定期間の公告を行った上で都道府県が最大10年間の利用権を設定できるようになりました。
なお、所有者が現れて明け渡しを要求した場合は期間終了後に原状回復するものとし、特に異議申立がなければ期間延長が可能となります。

所有者の探索を合理化する仕組み

固定資産課税台帳や地籍調査票など、所有者不明土地の本来の所有者を探索するため、必要な情報を親族等までの範囲に限定して行政が利用できるようになります。
更に、長期間に渡って相続登記が行われていない土地は、登記官により「長期相続登記等未了土地」として登記簿に記録できるようになりました。

所有者不明土地を適切に管理する仕組み

民法上では利害関係者や検察官にのみ許されている財産管理人の選任ですが、所有者不明土地の管理のために特に必要であると判断された場合、地方自治体などから家庭裁判所に対して財産管理人の選任請求を行えるようにしました。

以上、所有者不明土地特措法の内容を確認してみると、そんなことも許されていなかったのかと思える厳しい制限が所有者不明土地問題の足かせになっていたことが分かります。
この所有者不明土地特措法により、該当する土地の収用手続きにかかる時間を3分の2まで短縮することを目標としており、同時に本法施行から10年間の間に福利増進事業への利用権設定を100件にするという目標も掲げられています。
なお、所有者不明土地特措法は公布から1年以内に施行される予定となっています。

土地の相続登記に対する登録免許税の免税措置

所有者不明土地特措法では、主に地方自治体が所有者不明土地に対してアプローチしやすくなるという内容が中心となっています。
ただ、国や自治体ばかりが動いているのでは負んぶに抱っこにしかならず、所有者の自発的な対応は期待できません。
そこで考えられたのが「土地の相続登記に対する登録免許税の免税措置」です。

法務局の公式サイトにてこの説明が分かりやすく記載されていますので、それを基に解説させていただきます。

「土地を相続した人が相続登記をしないで死亡した場合の登録免許税の免税措置」

個人が相続により土地の所有権を取得した場合において、当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは、平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さない事とされました。

■引用:法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000017.html

分かりやすくご説明させていただくと、所有者Aの土地をBが相続で所有権を取得し、その後Bが死亡した後にCがその土地を相続することになっても、AB間の相続に関わる登録免許税についてCは免税されるというものです。
つまり、AとB、BとCという間にある2つの登録免許税のうち、AとBの間での登録免許税が無しになるという事です。
更に、価格10万円以下の所有者不明土地については、相続登記を促進するために所有者不明土地特措法の施行から2021年3月31日までに所有権登記をする場合の登録免許税が免税となります。
ただし、これは法務大臣の指定がある場合に限ります。

このように、所有者不明土地特措法では、自治体に任せきりにするのではなく、土地所有者の自発的な相続登記を促そうという登録免許税の免税措置の2つを柱として、問題解決への足掛かりとしたい考えが見受けられます。
今後も進む人口減少や高齢化社会に向けての効果に期待したいところです。

まとめ

「所有者不明土地が2040年には北海道を超える面積になる」と聞くと、由々しき問題だと感じられる方もまだ先のことだからと楽観的に考える方もいらっしゃると思います。
所有者不明土地問題に対して、登記の義務化や更なる減免措置などを求める声もありますが、まずは今回制定された法案や措置がどのような効果をもたらすのか見ていきたいところです。

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