NHK受信料に初の合憲判決!家具付き賃貸にまさかの影響が!? | 不動産投資を考えるメディア

NHK受信料に初の合憲判決!家具付き賃貸にまさかの影響が!?

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NHK受信料に初の合憲判決!家具付き賃貸にまさかの影響が!?

2017年12月6日、最高裁判所(以下、最高裁)にてNHKの受信料関連の重要な判決が下ったのをご存知の方も多いかと思います。事の重大さに、このニュースはインターネットを含めた多くのメディアで取り上げられ、様々な議論を巻き起こしています。

『受信料の強制徴収は、憲法が保障する契約の自由を侵害するものである』

被告となった男性はこのように述べて今回の裁判に臨みましたが、結果的に最高裁の判断としては、NHK側の主張を大枠で認める形となりました。つまり、NHKを受信できる世帯については、強制的に受信契約を求めることができると最高裁が判断したのです。
そんな報道を耳にして「サービスでアパート各戸に取り付けたテレビはどうなるんだろう。」なんて疑問が湧く不動産オーナーもいらっしゃるかもしれません。
今回は、最高裁の下した判決が不動産経営にどのように関わってくるのかを改めて確認してみましょう。

判決の概要と男性の主張

NHKの事業収入のほとんどは受信料で成り立っており、2016年の全事業収入7073億円のうち、95.7%にあたる6769億円が受信料です。最高裁はこれを再認するように、判決で以下のように述べています。

『NHKの財源は特定の個人や団体等による支配や影響が及ばないようにし、放送を受信するか否かを問わず、受信装置の設置の下に公平に受信料の負担を求めることで支えられる事業体である。』

つまり、受信料がNHKを支えているという事を言っているわけですが、この根拠となるのが放送法64条の「受信契約及び受信料」です。放送法64条で「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」と定められているのをご存知の方も多いかと思いますが、この放送法64条とNHKの受信契約や受信料について、今回の被告となった男性は以下のように主張していました。

  • 受信設備を設置することが、必ずしもNHKの放送を受信することになるとはならない
  • 民間放送の受信料の支払い義務がない自由な視聴への制約となっている
  • 契約内容自体が法で定められたものでなく、受信契約が強制的に締結される点で憲法違反である
  • 仮に支払いが強制であったとしても、時効成立により支払いの一部は時効である

被告男性の主張には頷ける部分もあるかと思いますが、NHKとの主張の違いとそれに対する最高裁の判断を見てみましょう。

引用:裁判所「平成26(オ)1130  受信契約締結承諾等請求事件」
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/281/087281_hanrei.pdf
参考:放送法「受信契約及び受信料」
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000132&openerCode=1#120

NHKの主張と争点。そして最高裁の判断

今回の裁判は、元々NHKが男性に受信契約と受信料の支払いを求めて提訴したこと発端としています。一審二審ともに契約と受信料の支払いを命じる判決を出していましたが、それに対し上記の理由で男性が上告していたのです。
ではまず、NHKの主張と争点も見てみましょう。

  • 受信料制度は放送法に沿ったものであり違憲ではない(NHK主張)
  • 契約は申し込んだ時点で成立する(NHK主張)
  • 支払い義務は受信装置を設置した時点からである(NHK主張)
  • 受信料の消滅時効はどの時点からか(争点)

4点目が分かりづらいかもしれませんが、受信料の時効は5年という判例があります。つまり、NHK受信装置の設置時点から5年としてしまうと、その受信装置の設置から契約までの期間が5年以上経過している人には、その期間は時効となるためNHK側に不利になります。そもそも、NHK側には時効という考え方はなく、全額請求という姿勢です。
男性とNHK側の主張、そして消滅時効という争点についてまとめてみましたが、最終的に最高裁は以下の理由により男性の上告を棄却することとなりました。

  • 放送法64条は受信契約の強制を定めているもので、契約を求める裁判の判決をもって契約成立とする
  • 同法に定められた受信契約の強制は、公平な受信料徴収という旨についても寄与するものであり違憲ではない
  • 判決により契約が確定するのであれば、受信装置の設置以降の受信料債権が発生する
  • 受信料の消滅時効は契約成立(=判決確定時)からである

これらも少々分かりづらいかもしれませんが、つまりは「受信契約の強制と受信料の徴収は違憲とは言えず、判決が出た時点で契約が成立したとみなすことができ、同時に受信料も発生するが、消滅時効はテレビ設置時ではなく契約が成立した時点から起算して5年である」としていますので、契約前の受信料については時効が成立しないという事になります。

参考:裁判所「平成26(オ)1130  受信契約締結承諾等請求事件」
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/281/087281_hanrei.pdf

不動産経営への影響が!?

上記までの事実に対して、様々な意見や疑問を持った方もいらっしゃるかもしれませんが、この判決によって不動産経営に何か影響があるのかを見ていきたいと思います。
実は、今回の裁判以外にもNHKの受信料に関しては多くの裁判が行われてきましたが、「賃貸物件に予め設置されていたテレビについてはどうなのか?」という裁判も過去に行われています。実はこの裁判、まだ決着がおらず、最高裁に持ち込まれることとなっています。今回の最高裁の判決の次に注目されていると言っても良いでしょう。

賃貸物件に設置されたテレビに関する訴訟ですが、地裁では「入居者は設置者にあたらない」としていましたので、不動産オーナーや管理会社へ支払い義務が生じるのではないかということで注目されていました。しかしながら、2017年5月に行われた東京高裁の控訴審判決では「放送法の立法の趣旨からすると、テレビを設置した者ではなくテレビを占有、管理している者も受信料支払いの対象者となる」としています。
NHK受信料も月に2000円以上しますので、この判決によってホッとしているアパートオーナーもいらっしゃるかもしれませんが、先にも申し上げましたとおり、まだ最終的な決着には至っていません。
更に、2017年3月にはホテルチェーン大手の東横インに対して、19億円の未払い分を支払うように命じる判決が出ています。この裁判で争点となっていたのは「支払いの一部免除の合意があったかどうか」というところではありますが、結果的に「全部屋に設置しているテレビ台数分」の支払いを命じていますので、先ほどの賃貸物件の入居者に対する受信料支払いの義務との矛盾が生じます。
つまり、「テレビの設置者である不動産オーナーではなく、入居者に支払い義務がある」という判決と、「ホテルの部屋数分の受信契約が必要である」とした判決では支払い義務の対象が違うのです。

参考:裁判所「平成29年5月31日 東京高等裁判所判例」
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/848/086848_hanrei.pdf

今後の裁判や動向に注意

さて、上記のホテルに設置されたテレビへの考え方は、現状では、設置された場所が住居かどうかで判断が分かれるようです。
ただ、昨今の受信料徴収方針に対して疑問視する声が多くなったことや、NHKが未払い者に対して起こす裁判の件数も非常に多くなってきたところを考えると、賃貸物件の各部屋に設置されたテレビに対する決着が付いていないことや、住居かどうかという点での矛盾を解消するための訴訟や法改正が行われる可能性は十分に考えられます。よって、今後の動きによっては、テレビやアンテナを設置した不動産オーナーにNHK受信料の支払い義務が課せられる可能性はゼロではないのです。
良かれと思って家具付き賃貸にされる方もいらっしゃいますが、設置したテレビについて、今は良くとも、今後はオーナーにも何らかの義務や責任が課せられる可能性があるという事は、頭の片隅に置いておいたほうが良いかもしれません。

思い出してみてください。今回、最高裁による「過去の未払いにまで遡及して受信料を支払え」という判決において、時効に対する考え方が明確になりました。もし今後、支払い義務者がテレビを設置した不動産オーナーという明確な判断が下されたとしたら、入居者がいようがいまいが、テレビ設置時点からのNHK受信料を全てオーナーが支払う必要が出てくるかもしれません。
当然、法の不遡及や残置物であるテレビへの判断など、また細かな疑問が湧いてくるかもしれませんが、今後のNHKの受信契約や受信料の裁判や動向には注意しておきたいところです。

まとめ

契約が成立していない過去の受信料にまで遡及して受信料が請求できるという、いささか不思議な判決が下された今回の裁判ですが、消費生活センターへ寄せられる受信料徴収のトラブルに関しての相談件数は、この10年の間に4倍以上の5万5千件という異常な数字が明らかになっています。
テレビやインターネット、スマホといったNHKの受信ができる装置があった場合、それらの受信契約や受信料の支払いの義務が、どのように課せられるのかといったところは不動産に関わる方にとっても対岸の火事ではないと言えるでしょう。

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