積水ハウス巨額地面師事件の犯人逮捕!犯行の手口に見る「登記」の穴 | 不動産投資を考えるメディア

積水ハウス巨額地面師事件の犯人逮捕!犯行の手口に見る「登記」の穴

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先日、積水ハウスの巨額地面師事件の犯人らが逮捕されたというニュースが大々的に流れたのをご存知の方も多い事でしょう。案の定、世間の声として「司法書士や弁護士がいて何故?」ですとか「積水ハウスの取引が杜撰」というものが見られます。

確かにそれは一理ありますが、これは事件当事者のミスだけでなく、「登記」という仕組みに存在する一つの「穴」も要因となっています。事件の内容を改めて整理し、どのような手口で不正な登記が行われたのかを見てみましょう。

積水ハウスの地面師事件まとめ

まず、改めて積水ハウスの地面師事件の経緯と登記簿の動きをまとめてみます。

【2017年3月】
積水ハウスが事件対象となった東京都品川区「海喜館(うみきかん)」の土地の情報を仕入れる
【2017年4月】
・積水ハウスの阿部社長により取引を進行
・IKUTA HOLDING株式会社と積水ハウスにより売買予約と所有権移転の仮登記
【2017年5月】
「(該当の土地は)売買してない」「偽造である」との書面が届くが、積水ハウスは怪文書として無視
【2017年6月】
・売買決済の実行
・同時期、積水関係者が該当の敷地に入ろうとした際に警察に通報される
・登記内容が偽造と判断されて所有権移転の仮登記が解除
【2017年7月】
・該当土地の所有者である弟らによって正式に相続による所有権移転が行われる
・積水ハウスの所有権移転請求の仮登記の抹消
【2017年8月】
積水ハウスが詐欺に遭ったと公式リリース
【2018年1月】
今回の事件をきっかけに積水ハウス内での内紛。会長交代劇に発展
【2018年10月】
土地の所有者に成りすました羽毛田正美容疑者逮捕

報道内容から犯行の手口を探る

以上が事件の概要となりますが、この流れの中で犯人らがどんな手口で不動産使った巨額詐欺を行ったのかがここ最近の報道で明らかになっています。

逮捕容疑は平成29年6月1日、品川区西五反田の旅館跡地(約2000平方メートル)の売買をめぐり所有者の名義を変更するため、東京法務局品川出張所に偽造した登記原因証明情報と委任状を提出し、虚偽の登記をしようとしたとしている。

■出典:産経新聞
https://www.sankei.com/affairs/news/181016/afr1810160006-n1.html

所有者役だったとされる羽毛田容疑者が社員らに身分証明として示した偽のパスポートや印鑑証明は「公証役場でも容易には見破れない」(捜査関係者)精巧な作りだったという。

■出典:産経新聞
https://www.sankei.com/affairs/news/181016/afr1810160032-n2.html

ここまでを見る限り、所有者本人と偽った犯人が偽造パスポートを使っていたこと、そして印鑑証明も何らかの方法で偽造していたようです。以前には他の不動産会社にも詐欺の話を持ち掛けていたことが分かっており、さらに別の書類も偽造していた疑いが持たれています。

預かった登記済証のコピーに東京法務局品川出張所の印影があり、念のため出張所で真偽を確かめると、「100%偽造だとは言えないが、気を付けた方がいい」などと回答された。

■出典:時事通信社
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018101700153&g=soc

一旦は偽造の登記済権利証(土地の権利証)を出したのだろうと思われる報道内容ですが、この後ご説明するとおり、犯人らは犯行が発覚することを恐れただけでなく、登記済権利証の偽造が見破られることが分かったため詐欺を行う相手を変えつつ手口も変えたことが予想されます。

所有権移転の仮登記ができてしまった理由

事件の概要にもあるとおり、一旦は法務局にて積水ハウスとIKUTA HOLDING株式会社による所有権移転請求権の仮登記が行われています。これに対し、世間の声として「書類の偽造に気付けなかったのか」という非難の声があります。

しかしながら、実は所有権移転の「仮登記」という事であれば手続きはさほど難しいものではないのです。仮登記の時に必要な書類は以下の4つとなります。

  • 登記申請書
  • 売買契約書
  • 印鑑証明書
  • 委任状

申請書や売買契約書、委任状というのは当人らが作るものですので、言ってしまえば他人が書いたものでも済むという話です。

ただ、印鑑証明書については誰でも簡単にというわけにはいかないのですが、実際に事件の報道を確認する限りでは「偽造した」とされているため、偽造する役割の人間がいたのだろうと推測されます。

なお、報道では「不正に第三者の所有する不動産の登記を行おうとした」という理由で犯人らを逮捕していますが、犯人らが所有権移転までをキッチリ行おうとしていたとは考えづらいところがあります。

実際に積水ハウスは仮登記の時点で既に被害額相当の決済を済ませてしまっており、犯人らにしてみれば、お金さえ手に入れば本登記が行われようが行われまいが関係ないのです。

ではなぜ、各メディアの報道では「不正に登記を行おうとした」と報道しているのでしょうか。

不動産売買契約における同時決済の穴

積水ハウスの地面師による巨額詐欺事件の発覚は、まさに仮登記後の「本登記」のタイミングでした。この本登記における出来事が事件発覚のポイントであり、メディアが「不正登記をしようとした」と言っている理由となります。

基本的に不動産売買というのは「同時決済」です。同時決済というのは、お金と権利の交換を同時に行うことを指しますが、分かりやすくご説明するために、具体的な例で見てみましょう。

  1. 売主、買主にて各々必要書類の確認
  2. 双方の確認の下で売買契約の締結
  3. 売買代金の受け渡し
  4. 所有権移転登記

上記の作業というのを関係者が一堂に集まり、一つの机の上で行います。しかし、4番の所有権移転だけは法務局に行かなければなりませんので、実際には同時に行えていないということになります。つまりここが穴だったわけです。

一般に上記の流れの中で所有権移転手続きを済ませた後は司法書士がそれを正式に法務局へ向かって申請することとなります。

最近ではオンラインで行えますが、それでも必要書類などを別途提出する必要がありますので、どちらにせよタイムラグが生じます。更に、本登記の際に必要な登記済権利証を紛失したなどで提出できない場合は、司法書士の本人確認書類の提出により代替することができます。

ご紹介した時事通信の報道にもあるように、積水ハウスの前に犯行を行おうとした不動産会社にて登記済権利証の偽造が発覚している事実がありますが、既に偽造は見破られる可能性が高くなっています。となると、司法書士の本人確認という方法で手続きが勧められていたのではないかと考えられます。

以上の内容と報道内容をまとめていくと、どうやら犯人らは時間をかせぐために本登記の直前までの手配を行っており、最初に話を持ち掛けた不動産会社により発覚が濃厚となった偽造の登記済権利証を無しで行ったのではないかと推測されます。

何にせよ本登記までに既に決済は済んでしまっており、犯人らもその時点で四方に散らばってしまっていることは容易に想像できます。

積水ハウスが「杜撰だ!」と非難される背景には以上の同時決済を確実に行っていなかったことが理由として挙げられるわけですが、これは日頃から不動産売買に関わるオーナーにとっても対岸の火事ではないと言えるでしょう。

まとめ

最後に不動産オーナーは対岸の火事ではないと申しましたが、地面師というのは高額な詐欺を行うのが特徴であり、土地所有者が入院などで連絡が取りづらいと言ったことがない限り積極的には動きませんので、日頃の不動産売買を極度に心配される必要はないかもしれません。そもそも、例えば一般の分譲住宅においてそのような詐欺を働いたところで、無駄に犯行を重ねてしまうばかりではなく、金額的な旨みもありません。

しかし、地面師のかかわる事件には悪質な司法書士や弁護士が関わっていることもあります。日頃から懇意にしている司法書士や弁護士がいなければ、決済の際に利用する銀行が普段から指定している司法書士や弁護士が望ましいと言えるでしょう。どちらにしても、上手い話が転がり込んできたときは、まずは提出された各書類の偽造を疑って念入りに確認すべきでしょう。

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