東京都が促進する「老朽マンション建替え制度」が凄い! | 不動産投資を考えるメディア

東京都が促進する「老朽マンション建替え制度」が凄い!

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老朽化マンション

東京都が老朽化マンションの建て替えに本腰を入れてきたかもしれません。先日、日経新聞などで以下のような報道がありました。

■老朽マンション、玉突き建て替え 都が容積率上乗せ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34322660Z10C18A8MM8000/

老朽化マンション関連のニュースに以前から特に関心があっても「このニュースの何が凄いの?」と思われる方もいるかも知れません。今回は今さら聞けないニュースの肝となる部分と併せ、老朽化マンションの問題について改めて解説させていただきます。

ニュースの概要と老朽化マンション建替えの問題

これまで東京の老朽化マンションの建替えは南海トラフを代表とした巨大地震に備えるための喫緊の課題とされてきました。しかし、実際に建替えられるマンションは少なく、そのスピードの遅さが問題となっています。

その主な理由は「建替え資金」が無い事。本来、マンションの建替えは管理組合が徴収する毎月の積立金や住人の一時金によって行われるところですが、老朽化マンションともなると住人自体が高齢化している上、空室も多くなり、積立てられてきた資金も修繕費用などで少なくなります。更には「終の棲家だからどうでもよい」という住人の反対意見などもあり、老朽化マンションの建替えは誰かが本腰を入れない限りなかなか進んでこなかったのです。

そんな負のループを解決すべく新たに創設されるのが、今回東京都が創設を検討し始めた「老朽マンション建替え促進制度」です。

報道によると、東京都が2019年に「老朽マンションの建て替えを促進する制度」を創設するとされています。簡単にご説明すると、不動産デベロッパー等が老朽化マンションの買い取りをすることを条件に、新たに建設するマンションを建築基準法で定められた以上の高さにしても良いとするというもの。更に、買い取ったマンションを解体した跡地に建てるマンションについても高さ制限を緩和しましょうという、そんな制度です。

誰が得する?東京都の老朽マンション建替え促進制度

そもそも「いくら東京都とはいえ、勝手にそんなこと決めていいの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は2016年(平成28年)4月に改正、施行された「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」の第105条で認められている事です。

(容積率の特例)
第105条 その敷地面積が政令で定める規模以上であるマンションのうち、(中略)総合的な配慮がなされていることにより市街地の環境の整備改善に資すると認めて許可したものの容積率は、その許可の範囲内において、建築基準法(中略)による限度を超えるものとすることができる。

■引用:e-Gov「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=414AC0000000078&openerCode=1#642

この法令に沿って東京都は老朽マンション建替え制度を創設するわけですが、問題解決の立役者となるのがマンションデベロッパーや大手不動産会社など、建替えのコンサルティングが可能な企業。今回の新制度の創設により新たに建替えるマンションの高さ制限が緩和されて「戸数が多くできる=多く売れれば儲かる」という図式が成り立つことから、マンションデベロッパーは通常よりも高い利益を得ることができます。

また、建替えの計画によって、老朽化マンション住人はデベロッパーの建設する新築マンションへ住み替えも可能。都民を保護する役割のある東京都にも、マンションの住人にとってもメリットがあります。更に今回の新制度では、本件に関わるデベロッパーや不動産会社が新たにマンションを建設する場合も高さ制限が緩和されますので、更にデベロッパーは利益を上積みすることができます。東京都、マンション住人、デベロッパーという3者にメリットがあるため、今後の老朽化マンションの建替えが促進されるのではないかと期待されています。

容積率も老朽化マンション建替えの足かせに…

マンションデベロッパーと老朽化マンションの住人の両方が得するという、まさにWin-Winともいえる制度ですが、もう少し詳しくご説明するために「容積率」について理解していただく必要があります。既に容積率の概要をご存知の方は、次の章からお読みいただいても差し支えありません。

先ほどの説明では、東京都が創設する新制度を「マンションの高さを建築基準法以上にしてよい」としましたが、前記の法令にもあるとおり、正確には「容積率(土地の面積に対する建物面積の割合)を上乗せしましょう」ということ。分かりやすく、一般の宅地を例にしてみましょう。

建築制限が…建ぺい率60% 容積率100%の場合

100㎡の土地に対して建ぺい率が60%と決められている地域だとしたら、建物は敷地に対して60㎡の範囲でしか建てることができません。そこで「2階建てにすれば延べ床面積120㎡、3階建てにすれば180㎡の家が建てられる!」という話になるわけですが、もしその地域で「容積率100%」と決められているとしたら、1階と2階を合わせても結局「100㎡」しか建てられません。

つまり、土地の面積に対して「平面で使える面積の制限」と「建物の延べ床面積としての制限」があるため、建物の高さで住居面積を稼ごうと思っても自由にはならないのです。先ほど東京の老朽化マンションの建替えが進まない理由をご説明しましたが、実はこういった容積率の不都合も要因の一つとなっています。

建ぺい率や容積率によって30戸が限界の土地にあるマンションを建替えても、完成するマンションも結局30戸。「マンション買取 → 解体 → 新たなマンション建設」という流れの中で発生する費用を考えると、デベロッパーには何の得も生まれないどころか単なる赤字です。仮に赤字覚悟でマンションを建設したところで「マンション買取」「解体」の費用が余分にかかっていることから、通常よりも割高な販売価格となるため売ろうにも売れません。そもそも、住人の退去すらスムーズには進められないでしょう。

このように、これまでの制度ではマンションを建設する会社に全くメリットが無かったため、老朽化マンションの建替えが進まなかった理由の一つとなっていました。

老朽マンション建替え促進制度は何が凄いのか?

では、上記までを基本知識として、今回のニュースの何が凄いのかという結論です。分かりやすくするために、今回の新制度で老朽化マンションを建替えた場合の仮のイメージを見てみましょう。

  1. 不動産関連企業が老朽化マンションを買い取る(=住人には売却益)
  2. 別の場所に容積率を上乗せした住戸の多いマンションを建設(=通常よりも利益が増える)
  3. 元住人は建設したマンションを原価で購入、もしくは無償で移転してもらう(=解体前の移転交渉がスムーズ)
  4. デベロッパーは容積率上乗せにより増えた戸数分で建設費用がペイできる(=場合によっては利益が出る)
  5. 買い取ったマンションを解体し、容積率が上乗せになったマンションを建設して販売(=4.で赤字であったとしても、ここでペイor利益が得られる)

これはあくまで、新制度によりマンションを建替えた場合の一般的な考え方とメリットです。これまでにあった建替えの実例では、マンションデベロッパーが買い取ったお金を元に、老朽化マンションの住人が建替えたマンションを安く購入するというケースもありますし、増えた戸数分の販売益で建設費をペイできることから元住人が無償で移転できたというケースもあります。どちらにしても、基本的には以上のような良い循環が生まれるのは確かです。

こう見るとメリットだらけなのに、何故この流れが促進されてこなかったのか。それはマンションを建設するエリアに条件があったためです。これまでは「建替えする建物の周辺住宅との共同建替え」などが条件となっていたため、スムーズに建替えが進んでいきませんでした。

今回のニュースでは、マンションを建替えるエリアを広げることが想定されるとありましたので、今までよりもスムーズな建替え可能になると期待されています。どのような制度となるのかはこれから詰められていきますが、次々と建設されるマンションに対して、なかなか進まない老朽化マンションの増加を考えると、是非とも進めていくべき政策と言えるでしょう。

まとめ

今回はいずれ訪れる可能性の高い「老朽マンションの建替え問題」と「東京都の老朽マンション建替え促進制度」の解説させていただきました。ポイントだけおさらいしておきましょう。

  • 老朽マンションの建替えが進まない理由は資金難と容積率の制限によるもの
  • 2019年に東京都の老朽マンション建替えを条件にした容積率緩和の制度が新設される
  • 新制度により東京都、老朽マンションの住人、マンションデベロッパーの3者に旨みがある
  • 新制度は建替え先のマンションだけでなく、老朽マンションのあった場所についても容積率が緩和される

老朽化マンションの建替え問題は決して対岸の火事ではなく、マンションに住む人々全員がいつか直面する問題として考えるべき問題。これを機に、自身が将来も住み続けるマンションということで考えてみてはいかがでしょうか。

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