パナソニックホームズの「定期借地権付き住宅」普通の分譲より得?損? | 不動産投資を考えるメディア

パナソニックホームズの「定期借地権付き住宅」普通の分譲より得?損?

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住宅

2018年7月にパナソニックホームズ株式会社が発表した、定期借地権付き分譲が話題を呼んでいます。定期借地権付き分譲住宅は、宅地を安く仕入れることが可能であるためグレードの高い建物を建築することができ、結果、安くて広くて、キレイなマイホームを購入できるという大きなメリットがあります。

■パナソニックホームズ株式会社7月より『パークナードテラス 桜区大久保』分譲開始
https://news.panasonic.com/jp/press/data/2018/07/jn180717-2/jn180717-2.html?_ga=2.261953028.841564650.1534035079-400419385.1534035079

一方、定期借地権とはその名のとおり、土地の権利は所有権ではないため、契約期間の終了と同時に土地を返さなければいけません。その為、一般的な土地売買では嫌厭される権利種類でもあります。では、パナソニックホームズは何故わざわざ定期借地権付きでの分譲を始めたのでしょうか。

今回は定期借地権付き分譲住宅とは何かを分かりやすくご説明しつつ、パナソニックホームズが手掛けた定期借地権付き分譲住宅から見えてくるメリットデメリット、そして実際に定期借地権付き分譲住宅を購入したら得なのか損なのかを考えてみたいと思います。

パナソニックホームズが手掛けた定期借地権付き分譲住宅とは?

そもそも「定期借地権」とは、50年以上の期間の中で土地を借りる権利です。詳細は割愛しますが、一般的に借地権は「普通借地権」と今回の「定期借地権」の2つに分かれていますが、今回のパナソニックホームズが分譲した定期借地権付き分譲住宅の契約期間は55年。この55年が経過したら更地にして土地を返還しなければならないということです。これが定期借地権付き分譲住宅と一般的な分譲住宅との大きな違いです。

また、定期借家権付き分譲住宅の取得にかかる費用には「権利金」「保証金」「賃料(毎月、前払い含む)」といったものがありますが、これらをそれぞれどうするかはハウスメーカーと地主との話し合いにより千差万別。権利金を必要としない場合や、逆に権利金と保証金のみの場合など様々です。

なお、国土交通省が平成21年に公表した調査に、全国の定期借地権付き分譲住宅にかかる費用とその平均額につて参考になる資料があります。その資料によると、それぞれの費用は以下のようになっています。

「徴収する費用の種類」
保証金:93%
権利金:2.6%
前払い賃料:0.6%
上記併用方式:3.5%
何も設定しない:0.2%
「平成21年の保証金平均額」
250万円未満:44.4%
250~500万円:50%
500~1000万円:5.6%
「権利金平均額」
100万円未満:4.5%
100~200万円:16.9%
200~300万円:18%
300~500万円:20.2%
500万円以上:40.4%
「毎月賃料」
2万円未満:18.3%
2~2.5万円:24.0%
2.5~3万円:23.2%
3~3.5万円:15.9%
3.5~4万円:8.5%
4万円:10.0%

■国土交通省「平成21年度 定期借地権付住宅の供給実態調査」
http://www.mlit.go.jp/common/001207930.pdf

定期借地権付き分譲住宅のメリット・デメリット

定期借地権付き分譲住宅についておおよそご理解いただけたかと思いますが、所有権の無い土地に家を持つということが果たしてメリットとなるのでしょうか。ここでは、一般的に言われる定期借地権付き住宅のメリット・デメリットを解説させていただきます。

(定期借地権付き分譲住宅のメリット)
・一般の分譲住宅の6~7割ほどの価格で家が持てる
・建物は所有権を持つため、リフォームや改築が自由にできる
・土地の所有権がないため、固定資産税の支払いがない
・土地を買わない分、ハイスペックな家を安く建てられる
・土地を細かく分筆する所有権付き分譲と違い、狭小地や旗竿地など使いづらい形状の土地になりづらい
・広くて良い立地であることが多い
・権利自体の売買も可能
(定期借地権付き分譲住宅のデメリット)
・地代(賃料)の支払いが必要
・住宅ローンが組みづらい
・資産価値が低いため売却しづらい
・同じく資産価値が低いため相続時の納税が厳しくなる
・土地の返還時に取り壊しとその費用が必要になる

普通の分譲住宅と定期借地権付き分譲住宅の費用比較

定期借地権付き分譲住宅の大きなメリットは、上記のとおり「広くてグレードの高い家に安く住むことができる!」ということです。では、実際にどれほど安くなるのか試算してみたいと思います。今回ご紹介させていただいた物件の土地面積と価格、路線価、公示地価を調べてみたところ、以下のようになっていました。

敷地面積 152.98㎡~180.98㎡
価格 2608~2862万円
路線価 100D(1㎡10万円)
公示地価 13.5万円

上記を踏まえて、一般の「所有権付き分譲住宅」の価格をシミュレーションしてみましょう。

最も敷地の小さい152.98㎡の土地価格を試算すると、路線価では約1530万円、公示地価では2065万円ということになりますが、一般的には土地売買の目安とするのは公示地価ですので、仮にここでは土地価格を「2065万円」とします。この土地に1500万円ほどの家を建てるなら、土地建物合わせて「3000~3500万円」が原価。そしてこの家を一般消費者が購入すると、建築会社の得るマージン(ここでは仮に1000万円)と、仲介手数料やその他諸経費などの10%が乗りますので、総額「4300~4900万円」が分譲価格になると推測できます。

では、「定期借地権付き分譲住宅」の場合はどうでしょうか。

この物件の路線価は先ほどもお伝えしたとおり、1㎡あたり100D。Dは借地権割合が「60%」であることを意味しますので、1㎡あたり「6万円」。これを公示地価にこれを当てはめたとすると「8.1万円」です。本物件で最も敷地の小さい152.98㎡の土地で計算すると、なんと土地価格は「約917~1240万円」。ここに1500万円の建物価格を乗せると2400~2700万円ほどが原価ということになります。ハウスメーカーのマージンや諸経費を乗せたとしても「3120~3510万円」ですから、かなり安い価格帯で家を持てることになります。

試算した結果、住まいを持つための費用は定期借地権付き分譲住宅の方が圧倒的に有利ということが分かりました。しかし、定期借地権付き分譲住宅の費用はこれだけではないのが注意ポイントです。

結局、定期借地権付き分譲住宅は得なのか

さて、ここからが大事なところ。上記のシミュレーションでは3120~3510万円で家が持てるということになりましたが、本物件の価格帯を見てみると、2,608万円~2,862万円と表記されています。試算よりも更に500~600万円ほど安いことになりますが、定期借地権の土地を購入するということは、敷金にあたる「保証金」、礼金と似た性質を持つ「権利金」、毎月の「地代」が発生します。

本物件のスペックを確認する限り、それら一時金は以下のようになっています。

前払い賃料 約244万2000円(毎月賃料の約8年分)
毎月賃料 約2万4400円(約47年で1380万円)
保証金 150万円
合計 約1774万円

保証金は将来返還されますが、前払い家賃と合わせると初期費用で約400万円ほどかかります。最安価格の2608万円の家を購入したなら、定期借地権の家を手放すころまでに総額で1600万円ほどの費用がかかるため、結果的に家にかける費用は「4200万円」ということになります。

結果、「お金」という面で見た時には所有権付きの住宅とさほど変わらない結果となりました。ここは、今回ご紹介させていただいた実際の物件で試算したものであり、土地価格を一律で借地権割合で試算していることから、他の定期借地権付き分譲住宅と比較すると多少の違いは生まれることが考えられます。

とは言いつつも、確実に得られる確かな利益は「ハイグレードな家に生涯を通して住むことができる」ということ。マンションにおいても、所有権を持ったというのに管理費や修繕積立金といった毎月の費用が掛かりますが、いざとなれば賃貸に出すことができます。

定期借地権付き分譲住宅も似たような考え方ができるかもしれません。毎月の費用は掛かるものの、ハイグレードな家に安く済むことができる上、いざとなれば賃貸に出すことも可能。安く購入できることから「終の棲家」として購入するという考え方もできます。

もしかすると今後、ほとんど着目されなかった定期借地権付きの住宅にスポットが当てられる日が来るかもしれません。

まとめ

今回の記事の最後に、定期借地権付きでも賃貸は可能と申し上げました。実際、定期借地権付き住宅を安く購入して賃貸したことから、40%を超える利回りで運用できたというケースもありますから、不動産投資家にとっては一つのメリットでもあります。

他にも定期借地権付き住宅は、土地価格の上げ下げで納税に悩む必要がありません。その点で考えると、誰も相続したがらない上に利用予定もない遊休地が負動産化し、所有者不明土地が増える事を抑制する効果にも期待できるのではないでしょうか。

「資産を持つ」というステータスが重視される日本の不動産事情ですが、今回のパナソニックホームズが手掛けた定期借地権付き分譲住宅が話題になっているところを見ると、今後は「不動産を持つ」のではなく「必要な時だけ使う」というスタンスに変わっていくのではないか、そんな風に思わされます。

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