賃貸業界に激震!「仲介手数料が0.5ヶ月分」になる可能性!?

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賃貸に住んでいる人も物件を貸しているオーナーも、支払う仲介手数料は家賃何ヶ月分かと聞かれたら「1ヶ月分」と答える人がほとんどではないでしょうか。しかし正確には「0.5ヶ月分」です。実際、宅地建物取引業法で0.5ヶ月と定められており、それ以上の額を受け取るのは禁止されています。ではなぜ、世に出回る物件の多くは「仲介手数料1ヶ月分」と堂々と記載されているのでしょうか。それは約50年間続けられてきた慣習に起因します。今回は不動産業界の常識を大きく変えるかもしれない判決と宅地建物取引業法における仲介手数料のルールについてご紹介します。

賃貸の「仲介手数料0.5ヶ月分」を認める判決

仲介手数料の常識が変わるかもしれないと第一報が流れたのが2019年8月10日。毎日新聞が以下の記事で「賃貸住宅の仲介手数料は原則0.5ヶ月分」となる可能性を報じました。

賃貸住宅の仲介手数料は原則0.5カ月分 手数料の一部返還認める 東京地裁
賃貸住宅を借りた際に、家賃1カ月分の仲介手数料を支払った借り主の男性が「原則は賃料0.5カ月分だ」として、仲介業者の東急リバブル(本社・東京都渋谷区)に手数料の一部返還を求めた訴訟で、東京地裁(大嶋洋志裁判長)は「業者が男性から承諾を得ていなかった」として男性の請求を認めた。

【引用】毎日新聞

上記の裁判は東急リバブルの仲介により賃貸契約を締結した男性が、物件の仲介手数料を返還するよう求めていたもの。法により定められている仲介手数料は0.5ヶ月分であると主張し、支払った仲介手数料1ヶ月分の半分を返還するよう請求したのです。結果、東京地方裁判所の判決は男性の勝訴。東急リバブルに仲介手数料の半分、約12万円の返還を命じました。この裁判での主な論点や確認すべき点は2つあります。

  • 本来、仲介手数料は家賃何ヶ月分が上限なのか
  • 男性の主張する0.5ヶ月分という根拠は何か

上記2点の疑問を整理しながら見ていきましょう。

宅地建物取引業法における仲介手数料のルール

まず宅地建物取引業法の第46条「報酬」では、以下のように定められています。

宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。
2 宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。

【引用】e-Gov 宅地建物取引業法

実は宅地建物取引業法の中で報酬について記載されているのは、上記の部分のみです。家賃何カ月分という表記はありません。そこで条文内にある「国土交通大臣の定めるところ」というのを見てみましょう。国土交通大臣の定めるところというのは、昭和45年に当時の建設省が告示した内容に基づきます。以下は建設省が示した、賃貸契約における宅地建物取引業者が受けとることができる報酬の額です。

貸借の媒介に関する報酬の額
宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の額の合計額は、当該宅地又は建物の借賃(中略)の一月分に相当する金額以内とする。この場合において、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の一月分の二分の一に相当する金額以内とする。

【引用】国土交通省

上記を分かりやすく言い換えると次のように解釈できます。不動産業者が賃貸の仲介で受け取れる仲介手数料の合計金額は上限を1ヶ月分とする。ただし、借主と貸主の一方から受け取れるのは各0.5ヶ月分が上限である。仲介手数料はどんなに多くても「1ヶ月分」が最大であり、入居希望者と不動産オーナーから受け取れる仲介手数料は「それぞれ0.5ヶ月分」。つまり、ニュースで報じられているのは、まさに上記の建設省告示に沿った判決なのです。

「仲介手数料1ヶ月分」という慣習の理由

それにしても「仲介手数料1ヶ月分」と言われても何の違和感もなかった賃貸業界。実際に仲介手数料1ヶ月分を支払ったことのある方も多いのではないでしょうか。先ほどの条文でお気づきかもしれませんが、仲介手数料は当事者の了承があれば入居希望者、もしくは不動産オーナーのどちらか一方から「0.5ヶ月 + 0.5ヶ月 = 1ヶ月分」を受け取っても良いのです。

当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の一月分の二分の一に相当する金額以内とする。

【引用】国土交通省

私たちが普段目にしている賃貸物件の広告では、費用欄に「仲介手数料1ヶ月分」と記載されているケースがほとんどです。しかしながら、何を以って「了承を得た」とするかが問題であり、少なくとも契約前に仲介手数料1ヶ月分という事実は伝える必要はあるでしょう。

では、物件紹介の時点で「仲介手数料は1ヶ月分である」と意識的に伝える業者があるかというと少し疑問です。もちろん仲介手数料について、業者は嘘をつきませんし隠そうともしません。そんなくだらない嘘で業務停止というバカバカしい処分を受けたくないからです。しかし、積極的に「仲介手数料は1ヶ月分です」と、前置きしてから仲介業務に入る担当者がいるでしょうか。

つまり、「仲介手数料1ヶ月分」という慣習の存在と同時に、「入居希望者からも了承を得ている」という暗黙の了解で話が進められてきたのが賃貸業界なのです。不動産業者も、わざわざ「宅地建物取引業第46条において……」とは説明しません。不動産関連の法律に詳しくない入居希望者も、それがルールなのだと勝手に認識して了承するでしょう。これが賃貸業界において、特に説明もないまま仲介手数料1ヶ月分が徴収されてきた理由なのです。

今後の賃貸業界の仲介手数料はどうなる?

では、今後の賃貸業界で仲介手数料は0.5ヶ月分になっていくのでしょうか。ここまで解説した内容をまとめつつ考えてみましょう。

  • 賃貸会社が受け取れる仲介手数料の上限は家賃1ヶ月分まで
  • 借主と貸主のそれぞれ一方から受け取れるのは家賃0.5ヶ月分まで
  • 入居希望者または不動産オーナーの了承を得れば片方から家賃1ヶ月分を受け取れる

今回の報道によると、東急リバブルが敗訴した理由は予め入居希望者に仲介手数料が家賃1ヶ月分だと説明していなかった事が原因です。逆に言えば、予め仲介手数料1ヶ月分と伝えた上で契約していれば何の問題なかったとも言えます。そして今回の判決を単純に捉えれば、以下のような事態も考えられます。

  • 賃貸会社の売り上げが半分になる
  • 不動産オーナーも仲介手数料0.5ヶ月分を支払うケースが発生する

しかし実際は上記のように単純にはいかないでしょう。仲介手数料0.5ヶ月分を今後の常識としてしまっては、賃貸業界が大打撃を受けるのはどの業者も認識しています。仮に入居希望者が仲介手数料1ヶ月分に納得できず他の業者を訪れても、その業者が仲介手数料1ヶ月分というスタンスを変えるとは言えません。

契約のチャンスを逃す可能性は高くなりますが、ただ一言「仲介手数料1ヶ月分」の事実を予め伝えて物件を紹介すれば済む話。各社が一斉に仲介手数料0.5ヶ月分にするとは現時点ではまだ考えづらいところです。

昭和45年に発出された建設省告示による仲介手数料のルール。約50年間に渡って続けられてきた取引慣行は、少なくとも今回の判決で一定の変化を見せる可能性は十分あります。各社が仲介手数料値下げ競争に入るのか、はたまた業界が一丸となって取費慣行が守られていくのか。今後の動きに注目です。

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