初期投資ゼロの不動産経営。「個人の転貸ビジネス」は可能なのか?

ビルのイメージ(グレー)

数年前からAirbnbを中心とした民泊ビジネスが、新たな不動産投資の手法として注目されています。ただ民泊新法施行後からは、様々な規制や自治体ごとの決まりがあって不動産投資初心者にとってハードルが高いイメージがあることでしょう。

ところで先日「わざわざ不動産を購入しなくても、家賃を上乗せして他の人に自分の借りた部屋を貸せばいいのでは?」という質問をいただきました。つまり「個人の転貸ビジネスなら儲かるのではないか」という意味です。

確かに転貸が可能なら高額な初期費用を用意せずに投資できそうですが、果たして物件を持たない個人による転貸ビジネスは可能なのでしょうか。そこでこの記事では、不動産投資という視点で見た物件を持たない個人による転貸ビジネスを考えてみたいと思います。

転貸可能物件は初期投資ゼロで高利回り!?

いよいよ日本でも賃貸物件の空室を住まい以外に活用する物件が増えてきました。空室の間だけ民泊として活用したり、短期貸しの可能なサブスクリプション住宅として活用したりするケースも少なくありません。

そんな状況下で、立地は悪くないのに運営も管理も放置された賃貸住宅があるのも事実。そういった放置物件を活用できれば初期投資ゼロで高利回りの不動産投資が可能です。仮に空室になっている物件を個人で借り、民泊として転貸した場合の簡単なシミュレーションをしてみましょう。

月家賃5万円
年間家賃60万円…(A)
民泊売り上げ1泊3,000円(×2名)
180日稼働108万円…(B)
差額48万円…(B)-(A)

家賃6万円の物件を1泊3,000円と設定して2名宿泊を原則とすれば、週2~3日の営業でランニングコストはペイできます。もし民泊営業が可能な半年をフル稼働できたなら、売り上げは年間で108万円。家賃でかかるコストを差し引いても年間50万円近くの利益を得られます。

転貸ビジネスなら不動産投資に必要な物件購入費などがまるまる削減できます。最初の賃貸契約で多少の初期費用が必要だとしても、転貸可能な物件があれば高利回り、かつ高いキャッシュフローを得ることができるでしょう。

個人が行った転貸ビジネスの実例

転貸ビジネスの原則は「転貸可能な物件があれば」の話であり、初期投資ゼロでもリスクはゼロにはなりません。仮に転貸可能な物件があったとしてもオーナーと賃貸契約を結び、更にその物件を別の人に貸すわけですから「サブリース」と同じ状況になります。空室でも家賃を支払わなければなりませんし、入居者トラブル等のリスクは転貸オーナーが負うことになるのです。

完全に放置された物件なら、稼働率によって家賃を支払うという契約も交渉により可能かもしれません。ただ、自分にとっても物件オーナーにとってもリスクが大きすぎます。

実際、筆者個人の知り合いである会社経営者は、不動産会社と交渉を重ねてマンション一棟を借り上げ、その全ての部屋に知り合いや、知り合いの知り合い、そして自分の会社の従業員などを住まわせる転貸ビジネスを始めました。しかし、家賃滞納や近所とのトラブルが絶えず、結果的に物件オーナーにまで苦情が入る始末。最終的には契約が打ち切られ、ビジネスはご破算となりました。

不動産オーナーは、上記のようなリスクを負ってまで物件を運用しようとは思わないでしょう。そもそも個人と転貸借契約を結ばずとも、信頼できる不動産管理会社とサブリース契約をしたほうが無難です。個人が転貸を可能とする契約を結ばない文化は、以上のような理由を考えると当然と言えば当然と言えるのかもしれません。

転貸ビジネスが可能な物件

では、仮にリスクを許容してでも転貸ビジネスをやりたい場合、転貸ビジネスが可能な物件をどう探せばよいのでしょうか。転貸可能な物件が全く無いわけではありませんが、街中の不動産屋さんに訪れたとしてもほとんど断り前提の回答しか得られないでしょう。良いところ「もしあったら後日ご連絡します」と後回しにされます。

そんな中、個人法人問わずに取引ができるポータルサイト「ジモティー」では、不動産売買や賃貸の情報が掲載される中に混ざって「転貸」「又貸し」の可能な物件が多く見つかります。

【出典】ジモティー

賃料と民泊需要との兼ね合いを考え、ビジネスとして成り立つようであればジモティーなどを活用すれば転貸可能な物件は見つかります。実際のところ供給過多となった賃貸業界において、物件を賃貸以外に活用するニーズは高まっているのが現状です。

しかしながら転貸可能な物件数は少なく、個人が行うビジネスとしてはリスクが大きいことに変わりありません。ランニングコストと売上の見込みをじっくりシミュレーションして、マイナスを発生させない事業計画が必須になります。

転貸ビジネスに潜む3つのデメリット

さて、個人による転貸ビジネスも全く不可能ではないのが分かりましたが、同時に転貸ビジネスにもリスクがあることも分かりました。最後に転貸ビジネスにおける3つのデメリットを確認しておきましょう。

  • 転借人による家賃滞納と賃貸人に対する家賃の支払い義務
  • 転借人による故意過失による破損の修繕義務
  • 一般の不動産投資で使える節税効果が見込めない

例えば、一般的な賃貸物件だと、賃貸人(オーナー)と賃借人(借り主)の間で契約が取り交わされます。当然、契約には修繕費用についての細かな約束も盛り込まれるでしょう。自然損耗以外の破損汚損の修繕は、賃借人が費用負担しなければいけません。これは転貸借も同じであり、転借人(転貸借契約で住む人)による故意過失の破損は賃借人(転貸する貸し主)にも修繕の義務があるのです。民法613条に関連する条文があります。

(転貸の効果)
第613条賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
2前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。

引用:e-Gov「民法」

基本的にオーナーは、転借人と賃借人の両方に請求する権利を有しています。つまり、オーナーは家賃の滞納や故意過失による破損部分の修繕について、転貸を行った人にも転貸で物件を借りた人にも損害賠償を請求できるのです。分かりやすく言うと、入居審査もロクにせず物件を貸して滞納や破損が発生したら、転貸を行った人にも弁償する義務があると解釈すれば良いでしょう。

また、リスクとは少し違いますが、転貸借の場合は一般の賃貸経営にあるような節税効果が見込めません。減価償却費はもちろん、ローンの支払いもありませんし固定資産税の納付も必要ありません。転貸借における賃料はそのまま経費にできますが、あとは転借人に書類を送ったり、直接会いに行ったりする交通費などを経費にできる程度になるでしょう。後は全て売り上げとして計算されます。

転貸は空室や空き家を活用した新しいビジネスとして、今後も広がる可能性があります。ただし一般の賃貸と違って歴史が浅く税金周りも通常ルールとは異なります。転貸ビジネスを始めるのであれば、一般の不動産投資以上に、リスクやデメリットをヘッジする工夫が必要と言えるでしょう。

まとめ

個人による転貸ビジネスは難しいと思われたかもしれません。実際、テナントを改装して転貸するビジネスも多く存在しますが、法人が行う事業という信頼があってこそ成立するものです。個人でテナント改装後の転貸ビジネスを行うにしても、オーナーから見ると信用だけでなく、万一の際の補償が受けられるかどうかといったところを真っ先に気にするでしょう。

ただ法律上では「賃貸人の了承を得られれば転貸可能」と決められています。転貸可能な物件は皆無ではありませんので、リスクやデメリットとどう付き合うかが転貸ビジネスにおける成功と失敗を分けるカギとなるでしょう。

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