東京都のマンション適正管理促進制度で管理不全マンションの増加を止められるか | 不動産投資を考えるメディア

東京都のマンション適正管理促進制度で管理不全マンションの増加を止められるか

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東京都マンションポータルサイト
東京都のマンションについて、管理組合などは5年毎に行政に対する届け出が必要になるかもしれないということをご存知でしょうか。

これは「マンションの適正管理促進に関する検討会」で決められた制度案ですが、現在はまだ都民などからの意見を募集している段階です。ただ、都民からよほどの反対意見でもない限り、この制度が実施されることになると考えられます。

今回は、一体「マンションの適正管理促進に関する検討会」とは何なのか。そして、検討会で何が話し合われているのかといったことを解説します。マンション管理組合の委員などを務める方にとっては大事な制度となりますので、知っておいて損はないでしょう。

マンションの適正管理促進に関する検討会とは?

東京都は「東京都マンションポータルサイト」という老朽化マンション等の管理に関する特別サイトを運営しており、「マンションの適正管理促進に関する検討会」の議事録等が確認できます。マンションの適正管理促進に関する検討会は建物の老朽化やマンション住民の高齢化による「マンション管理不全」を未然に防ぐために設置されたものです。

主に分譲マンションの現状を把握し、適正なマンション管理の促進、良質な住宅ストックの形成、管理組合の機能強化などを図るため、行政が積極的に関わっていく事が目的となっています。

マンションの適正管理促進に関する検討会で話し合われている内容や調査報告には、マンションの住人にとって見過ごせない事実もあり、特に昨年11月に決められた制度案はマンションの管理組合にとって重要なものとなるでしょう。

管理不全に陥る可能性のあるマンションが多い理由

そもそもなぜ、マンションの管理不全という可能性が指摘されているのでしょうか。これには大きく分けて2つの理由があります。

・マンション住民の高齢化
・マンション自体の老朽化

一般にこれらを「二つの老い」と呼ぶことがありますが、分譲マンションを終の棲家と考える高齢者が増えたため、マンションの老朽化によって必要になる大規模修繕や各種管理が上手く機能しない可能性が懸念されているのです。

マンションが管理不全という状況に陥れば、壁の崩落や震災時の倒壊の恐れが出てきます。事実、マンションの壁が落下したことによる死亡事故が何度も報告されており、インターネットで「マンション 壁 落下」と検索すると、実に多くの事件やニュースや記事が出てきます。

ただ、マンションが管理不全に陥るのは、どうやら二つの老いだけが原因ではなさそうです。東京都はマンション居住者に「管理における問題点」のアンケートを取っており、回答が多い順に並べると以下のようになります。

1.マンション管理に無関心な居住者が多い
2.役員のなり手がいない
3.防災マニュアルが未整備など防災面に不安
4.役員の負担が増大している
5.居住者に高齢者が増え、バリアフリー対応が必要
6.修繕積立金が少なく将来に不安
7.不特定の人の出入りがあり、防犯面に不安
8.賃貸住戸が増え、マンション内秩序が保たれない
9.管理規約等に生活ルールが含まれていないなど内容が不十分
10.長期修繕計画が整備されていない
11.管理費等の滞納者への対応が不十分
12.管理組合が機能していない
13.管理会社が契約通り履行しない
14.管理費が不適切で管理が十分に行えない
15.管理会社への委託内容が不明瞭

■参考:東京都マンションポータルサイト マンション管理の実態

最も多いのがマンションの管理に無関心な人が多いということ。特に戸数が多いマンションほどその傾向は強く、「誰かがやってくれるだろう」という意識もまた、マンションの管理不全に繋がっていることが分かります。

大規模修繕を行っていないマンションが4割!?

なぜマンションが管理不全になってしまうのかをご紹介しましたが、マンションの適正管理促進に関する検討会では意外な事実も公開しています。以下のデータも国や東京都が調査した結果を東京都マンションポータルサイトで公表しているものです。

管理規約無し:5.9%
管理組合無し:6.5%
修繕積立金無し:5.5%
管理費等3ヶ月以上滞納の住戸:39.7%
管理費等6ヶ月以上滞納の住戸:26.2%
管理費等1年以上滞納の住戸:18.9%

管理規約や組合がない分譲マンションは割合として少ないものの、なんと管理費や修繕積立金を3ヶ月以上滞納している世帯が4割近く、1年以上も滞納している世帯が2割近くとなっています。更にもう一つ、驚くべきデータがあります。以下は大規模修繕を実施したマンションの割合です。

築年代 実施済み 未実施
2002年以降 5.2% 94.8%
1992~2001年 61.9% 38.1%
1982~1991年 91.9% 8.1%
1972~1981年 97.7% 2.3%
1971年以前 97.6% 2.4%

問題となるのが、1992~2001年に建設されたマンションの4割近くが大規模修繕を行っていないという事実です。2001年に建設されたマンションであれば、既に18年経過しています。築28年となる1991年以前のマンションでも約1割が大規模修繕を行っていないのですから、これは問題だと言わざるを得ないでしょう。国土交通省では、大規模修繕のサイクルを12年周期とするガイドラインを出しています。

これに対し、マンション管理の専門家や建築士などから「12年サイクルの大規模修繕はペースが早すぎる。15年サイクルで良いのではないか」といった意見もあります。いずれにしろ約4割のマンションで15年以上も大規模修繕を行っていないのですから、悠長に構えてはいられないでしょう。

適正管理の促進に向けて定められた3つの制度

さて、東京都にある分譲マンションの管理事情を解説しましたが、こうした事態は重く受け止められています。最初にお伝えした通り、東京都はマンションが管理不全に陥ることを未然に防止するために「マンションの適正管理促進に関する検討会」を設置しています。そして昨年11月に開かれた6回目となる検討会で、以下のような制度案が示されました。

都や管理組合、事業者等の責務・役割の明確化
本制度での役割を以下のように明確化して、関係者の責務や役割を明確化する。

「都」
マンションの適正な管理の促進のため、支援、措置を行い、指針を定める
「管理組合」
マンションを適正に管理し、社会的な機能向上に努める
「区分所有者」
管理組合の運営に参加するよう努める
「マンション管理士」
管理組合の運営や管理に対し、専門知識をもって相談に応じ、助言等を適切に行い、本制度と連携するよう努める
「管理業者」
マンション管理の受託業務を適切に行い、専門的見地にて提案、助言を行う。また、本制度への連携のために管理組合に支援を行うよう努める
「分譲事業者」
管理組合の設立及び円滑な運営に配慮したマンションの供給に努める

管理組合による管理状況の届出(管理状況届出制度)
管理組合は、「管理組合の運営体制」や「管理規約の設定等」「管理費及び修繕積立金の設定」「修繕の計画的な実施」などについて、行政に対して5年毎に届け出を行う。なお、届け出が必要なマンションの要件は以下の通り。

・昭和58年の区分所有法改正以前に建築されたマンションのうち、居住用の区分所有が6室以上であるもの
・届け出が必要なマンション以外も管理不全の可能性がある場合は、行政が届出を求めることができる
・昭和59年以降に建設されたマンションも順次、届け出が必要なマンションに指定する

管理状況に応じた助言・支援等の実施
行政は、届出によって把握した管理状況に応じて、「普及啓発」「技術支援」「財政支援」「市場誘導」などの助言・支援等を行う。

簡単にまとめると、「責任の明確化」「具体的な施策」「行政の支援」という大きな3つの柱でマンションの管理不全を予防していこうという事です。特に届け出が必要になったマンションは5年毎に管理状況等を行政に報告する必要が出てきますので、全く何も対処できていないマンションは減ることでしょう。この制度はまだ本決定ではなく、2019年1月18日まで都民などから意見を募集しています。

■参考:「東京におけるマンションの適正な管理の促進に向けた制度案の概要」への意見の募集について

まとめ

マンションの適正管理促進に関する検討会では東京都のマンションストック数についても情報を開示しています。同資料では2013年の時点でマンションの総戸数は約736万戸となっており、21~40戸規模のマンションが最も多いとされています。

マンション1棟で学校1クラス分と考えると全く意見がまとまらないということもなさそうです。旧耐震マンションも建て替えが進まずに増える一方だと言われていますが、今回解説した制度案のように住民の意識向上や行政との連携は今後のマンションにおける必須事項となるかもしれません。

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