不動産投資ローンは経済的耐用年数で決まる?法定耐用年数との違い

融資・ローン・金利
20190719

不動産投資ローンの借入期間が物件の「残存耐用年数」で決まることはご存知でしょうか。耐用年数は木造や鉄骨造、RC造など構造により異なりますが、融資審査の際は税務上の計算に用いられる法定耐用年数ではなく、金融機関が独自に定める経済的耐用年数が用いられます。本記事では、不動産投資ローンと耐用年数の関連性や法定耐用年数と経済的耐用年数の違いなどを解説していきます。

不動産投資ローンの借入期間と耐用年数

まずは不動産投資ローンの借入期間と耐用年数について確認していきましょう。

借入期間を長くできるほどキャッシュフローを改善できる

不動産投資では、物件を購入するのに不動産投資ローンを組んで購入するのが一般的で、物件から得られる家賃収入からローン返済額や経費を差し引いた「手残りの額」を多くすることが大切です。手残りの額を大きくするには、家賃収入を大きくしたり、経費を少なくしたりといった努力も必要ですが、物件購入の段階では「借入期間を長くして毎月の返済額を抑える」ことも重要になります。

借入期間は物件の残耐用年数で決められる

投資用物件購入のために不動産投資ローンを組む場合、その借入期間は物件の残耐用年数によって決められます。なお、耐用年数は物件の構造ごとに以下のように定められています。

物件の構造ごとの耐用年数
構造法定耐用年数
木造22年
鉄骨造34年
RC造47年

上記耐用年数は法定耐用年数と言って、減価償却など税金の計算に用いられます。なお、中古物件の購入時に減価償却費を計算する際の残耐用年数は以下のように求められます。

中古物件の耐用年数 = 法定耐用年数 – 経過年数 + (経過年数 × 0.2)

例えば、RC造築20年の物件であれば、「47年 – 20年 + (20年 × 0.2) = 31年」と計算されます。しかし、上記はあくまでも税金計算上の計算方法であり、不動産投資ローンの借入期間を求める際の残耐用年数は単純に耐用年数の残り期間だけ見られることになります。

借入期間は法定耐用年数より短く設定される

構造ごとの法定耐用年数をお伝えしましたが、例えば、新築のRC造マンションで47年の借入期間を設定できるかというとそうではなく、借入期間は耐用年数より短く設定されるのが一般的です。

耐用年数超の物件は信用棄損と見なされる

また、物件やローンを借りる金融機関によっては、残耐用年数を超えて借入期間を設定してくれるケースもあります。これは物件購入にあたってはとても有り難いことですが、耐用年数を超えても返済の続く物件を保有していると判断され、次以降の物件取得において「信用棄損」と見なされてマイナス評価をされてしまう可能性がある点に注意が必要です。これはローン審査を受ける金融機関によって取扱いが異なりますが、意識しておく必要があります。

金融機関が物件の耐用年数を重視する理由

ところで、なぜ金融機関は物件の耐用年数を見て借入期間を決めるのでしょうか。

返済できなくなった時の担保価値

まず、物件の担保価値の問題があります。不動産は基本的に築年数が経つと物件価値が落ちていきます。銀行としては「耐用年数を超えた物件は市場で売却してもまともな額では売却できない」と判断しています。つまり、耐用年数を超えても借入期間の残る物件があるということは、いざ耐用年数経過後に返済が滞ってしまえば、物件を差し押さえても残債を完済できないと判断されるのです。よって、多くの金融機関は耐用年数内で完済できるように借入期間を設定しますし、耐用年数を超えて借入期間を設定した場合、信用棄損とみなされるというわけです。

いずれ大規模修繕が発生する

また、建物を長期間保有していると劣化が進み、いずれ大規模修繕しないといけないタイミングが訪れます。大規模修繕しないと空室率は高くなり、いずれローンを返済できなくなる可能性もあることから、融資する金融機関にとっても重要な関心事となります。しかし、大規模修繕にはまとまった資金が必要となります。その資金を運営資金から捻出できればよいのですが、そうでない場合は借入れに頼ることになるでしょう。その時、物件を担保にお金を借入れできればよいですが、不動産投資ローンの残債が残っていては第1順位の抵当権を設定することができません。

いずれ建て替えが発生する

大規模修繕と同様、物件の劣化が進めばいずれ建て替えの判断をしなければならないケースも出てくるでしょう。その時、まだ物件にローンの残債があると物件を担保にお金を借りることができません。

これら3つが金融機関が耐用年数を重視する主な理由となります。

金融機関が借入期間決定時に用いる「経済的耐用年数」とは?

ここまで耐用年数についてお伝えしましたが、金融機関のローン審査時には、税金の計算に用いられる法定耐用年数ではなく、実際の建物の状況や経済状況などから総合的に判断する経済的耐用年数が用いられます。

法定耐用年数と経済的耐用年数は異なる

法定耐用年数と経済的耐用年数は異なります。法定耐用年数は税金の計算上、建物の構造ごとに一律に定められるもので、実際の建物の寿命ではありません。一方、経済的耐用年数とは、修繕状況や劣化状況など建物の物理的状況や立地や入居率など経済的状況を見て決められます。なお、経済的耐用年数は金融機関によって算出方法が異なります。このため、ある金融機関では借入期間30年がOKなのに、ある金融機関では10年しか審査承認が得られないということも起こり得ます。

法定耐用年数はなぜ短縮されたのか

実は、RC造の建物の法定耐用年数は平成10年までは100年でした。法定耐用年数が100年から47年にまで短縮された合理的な理由は見当たりませんが、通説として、税収確保と企業の競争力向上があるとされています。例えば、政府税制調査会の過去の記録などを見てみると、過去幾度となく経済界から「法定耐用年数の見直しによる償却期間の短縮」といった要望が盛り込まれていることが分かります。

この平成10年には法人税の引き下げの他、貸倒引当金の法定繰入率の廃止や減価償却法の定率法の廃止などもされています。こうした様々な改正がなされる中で法定耐用年数の短縮です。これは、定率法適用廃止など経済界に大きな影響を与える改正に対するバーター的な役割を担ったと見ることもできます。このように、法定耐用年数はこれまで政策的に短縮されており、「47年という数字そのものに建物の実際の耐久力を示す根拠はない」ということを理解しておきましょう。

金融機関が耐用年数超でも融資する理屈

法定耐用年数はあくまで一律で定められた基準であり、建物の物理的・経済的耐久力を示すものではないことは明白ながら、多くの金融機関では法定耐用年数に準拠した形で不動産投資ローンの借入期間が定められてしまいます。しかし、実際には耐用年数を超えても融資を受けられている物件は数多くあります。これらの物件は一体どのようにして金融機関から融資を引き出しているのでしょうか。金融機関の担当者はローンを通すために社内の審査部から承認を取り付ける必要があります。その時、法定耐用年数や自社独自の経済的耐用年数については無視できません。

しかし、それらを前提としてもなお、融資しても大丈夫なだけの理由を付け加えることができれば、審査で承認を得られることがあります。例えば、建物の担保価値が低くなったとしても、土地が十分に担保価値を持つといった理由だったり、不動産鑑定評価で経済的耐用年数を算出してもらうなどで説得可能となることがあります。この辺りの取扱いについては金融機関によってスタンスの異なりますで、複数の金融機関と関係性を保ちながら、物件によって利用する金融機関を変えていくとよいでしょう。

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