悪質すぎる金融機関と売買契約書に潜む落とし穴 | 不動産投資を考えるメディア

悪質すぎる金融機関と売買契約書に潜む落とし穴

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悪質すぎる金融機関の実態│画像

日銀や金融庁が、アパートローンの新規融資について従来より厳しい対応で望むように監視を行っているのは、多くのニュースや報道でご存知の方も多いと思います。こうした情勢を受けて金融機関に厳しい対応を取られたという不動産投資家も増えています。融資は実行されるまでどうなるかわかりませんが、金融機関が態度を翻した時にしかるべき対応を取らないと、取り返しのつかない問題となってしまう恐れがあります。

金融機関から内諾をもらっているのに融資を断られた!?

Sさんは3棟のアパートやマンションを経営しているサラリーマン大家さん。今まで単身向けの物件ばかりを選んで投資していましたが、つい最近知った不動産会社からファミリー対象で掘り出し物の物件があると紹介されました。

Sさんは、ある金融機関から2億円までの融資の内諾を得ているので、すぐに買付を入れ、不動産会社の紹介で金融機関に融資を依頼し、事前審査をお願いしました。その後、売主からもOKの連絡をもらい、事前審査も無事に通り、金融機関の担当者も「ほぼ大丈夫だ」と言ってくれました。

手付金の500万円を支払い、融資特約をつけて、売買契約を締結しました。
金融機関からの正式な承認も下りて、金銭消費貸借契約も行い、あとは融資実行を待つのみでした。ところが、決済日の2日前で特に理由もなしに金融機関から融資を断られてしまったのです。理由は本部での融資の姿勢が大きく変わったため、融資ができないという結論に至ったとのことでした。

あまりにも急すぎる対応にショックを受けたSさんでしたが、幸い、手付金の融資特約の期日前だったので、融資が降りなければ白紙で契約が解除されるものと思っていました。しかし、Sさんが締結した売買契約書の融資特約条項は、実は「解除権留保型」の文章だったのです。

売買契約の解除の意思を表明する契約書がアダに…

このタイプの文章で売買契約書が書かれていると、買主が売主に対して売買契約を解除するという意思表示をする必要があります。意思表示は内容証明などで買主から売主に送付されるのですが、これが行われないとそのまま売買契約が解除されず保留されることになるのです。融資特約の期日が過ぎてから、これに気づいたSさんが契約解除の手続きを行いましたが、時すでに遅し。
売主から手付金の放棄と違約金の請求を迫られ、窮地に陥っているそうです。

「解除権留保型」と「解除条件型」の違い

不動産会社が売買契約書を書くときに、昔の書式のひな形を使っていたり、独自のひな形を使っている場合、Sさんの事例のような問題が起こりがちです。
たとえば、解除条項が「融資機関の審査等により買主に対する融資が否認された場合は、この契約締結後1ヶ月以内に限り、買主はこの契約を解除する事が出来るものとします。」のように記載されている場合は、Sさんのように意思表示を売主にしないかぎり、売買契約の解除が留保されます。
このような契約を「解除権留保型」といいます。この場合は、買主側から申し入れないと融資特約による契約解除は出来ません。

一方、「融資の全部又は一部について承認を得られないとき、又、金融機関の審査中に標記の融資未承認の場合の契約解除期限が経過した場合には、本売買契約は自動的に解除となる。」のように記載されている場合は、期日までに融資が通らなかったら契約は自動的に白紙解約となります。このような契約を「解除条件型」といいます。

不動産会社の売買契約書は、定型文のひな形によって作成されています。このため、ひな形が解除権留保型の場合、買主がそのことを知らなければ、Sさんのように融資が通らなかったことを売主に不動産会社を通じて伝えれば、それで売買契約は解除されたと勘違いしがちです。解除権留保型なのか、それとも解除条件型なのか、きちんと見極める必要があります。

売買契約書は重要事項説明のときに口頭で説明されるので、融資特約条項の文章が「解除権留保型」なのか、それとも「解除条件型」なのかを必ず不動産会社に確認しておくことが大切です。

売買契約解除で手付金放棄や違約金が請求される条件とは?

ところで、売買契約解除によって手付金の放棄や違約金の請求が発生するケースがあります。どういう条件でそれが発生するのか手付金や違約金の意味を詳しく知ることで理解することが出来ます。少し紹介しておきましょう。

手付金は売買契約が結ばれたときに支払われるお金のことです。手付金の相場は物件価格の10%と言われています。不動産は高額のため、売買契約時にすべてのお金が支払われるわけではなく、取引の進捗にあわせて代金が買主から売主へと支払われます。これによって支払う代金の名称も変化していきます。
売買締結時には、「手付金」として、物件価格の10%を支払います。すぐに用意できる金額が少なければ、追加で金額を入れる「中間金」を支払うことになります。そして、最終的に物件引渡しの際に支払う「残代金」などがあります。

「申込金」は購入意志を表示したり、買付の順番を保全したりする意味がありますが、手付金にも意味があります。主に手付金には3つの意味があるとされます。

①証約手付

「契約が成立しました」という証拠としての意味合いがあります。

②解約手付

売買契約が履行されるまでの間に売買契約を解約したい場合にいつでも手付金で解除することができるという意味で、手付解除とも言われます。
たとえば、買主が売買契約を解除したい場合は「手付流し」と呼ばれ、手付金を放棄することで契約を解除できます。売主が売買契約を解除したい場合は「手付の倍返し」と呼ばれ、受け取っている手付金を買主に返還し、さらに手付金と同額を買主に支払います。ただし、手付解除がいつまでもできる状態にあると取引が不安定になるため、「売買契約日から●日以内」など期限を設けたり、一方が契約を履行した時点で手付解除ができないように契約を結ぶのが一般的です。

③違約手付

契約の当事者との間で債務不履行などの契約違反があった場合に損害賠償とは別に罰金として没収する意味合いです。

このように手付金には、3つの意味がありますが、不動産取引で手付金といえば、一般的に解約手付と考えられています。

ところで、手付解除という契約解除以外に「違約解除」と呼ばれる契約違反による解除があります。これは契約書に記載されているルールを買主と売主のどちらか一方が守らない場合に、相手方に契約解除と違約金の請求を求める罰則になります。不動産売買での違約金は損害額の判定が難しいので予め違約金の金額を決めて売買契約書に記載するケースが多く、違約金の額は物件価格の10%~20%とされています。
融資が承認されずに、やむを得ず融資特約の期日を過ぎて売買契約を解除する場合、「手付解除」と「違約解除」の両方を求められることがよくあります。サラリーマン大家さんは、万が一のことも考えて、正確に契約書をチェックしておくことが非常に重要です。

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