中古住宅需要の伸びが如実に!国土交通省が住宅ローンの実態調査を公表 | 不動産投資を考えるメディア

中古住宅需要の伸びが如実に!国土交通省が住宅ローンの実態調査を公表

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20190402
2018年3月20日、国土交通省が「平成30年度民間住宅ローンの実態に関する調査」を発表しました。
この調査では、民間の金融機関が行った住宅ローンの貸出額や契約に至ったローンの金利タイプの割合など様々なデータがあり、大変参考になるものです。

民間住宅ローンの実態に関する調査には他にも「新築と中古住宅別の貸出額」や「融資を行う際に考慮する項目」という一般消費者にも気になるデータが含まれています。

そこで今回の記事では、過去数年の新築と中古住宅への貸出額推移や銀行が融資審査で重視する項目と各データから見えてくる銀行の融資姿勢の変化について解説いたします。

中古住宅の新規貸出額が増加傾向

民間住宅ローンの実態に関する調査とは、国民の住宅取得を計画的に実現する上で住宅ローン市場の状況を把握するのは重要という観点から、国土交通省が住宅ローンを提供している、ほぼ全ての民間金融機関にアンケート調査を行うものです。

この調査には非常に興味深いデータが多いのですが、中でも昨今その存在価値が見直されて人気が高まっている中古住宅市場に関して調査した「中古住宅向け新規貸出額の推移」というデータがあります。

同調査を確認する限りでは、2011年以降から中古住宅向け新規貸出額の調査を開始しています。
さっそく中古住宅向け新規貸出額の過去推移を見てみましょう。

中古住宅向け新規貸出額の推移
調査年 増加額 増加割合
2011年 1兆654億円
2012年 1兆2150億円 14.2%増加
2013年 1兆3058億円 7.5%増加
2014年 1兆5692億円 29.2%増加
2015年 1兆6108億円 2.7%増加
2016年 2兆2235億円 38.0%増加
2017年 1兆9049億円 14.3%減少

■出典:国土交通省の各年度別「民間住宅ローンの実態に関する調査」より
http://www.mlit.go.jp/common/001280466.pdf
http://www.mlit.go.jp/common/001226959.pdf
http://www.mlit.go.jp/common/001174891.pdf
http://www.mlit.go.jp/common/001122119.pdf

2011年以降、5年連続で中古住宅への貸出額が増加してきましたが、2017年は3000億円ほど減少しました。
ただ、この数年の傾向としては中古住宅需要が高まったと見ることができる結果とも言えるでしょう。

ではこの結果は、日本で根強い新築神話の崩壊を予見するものと言えるでしょうか。
次章で新築への貸出額と比較して考えてみたいと思います。

新築住宅と中古住宅の貸出額推移を比較

「平成30年度民間住宅ローンの実態に関する調査」では、同調査開始以来「新築住宅向け新規貸出額の推移」というデータが公表されていますが、中古住宅との比較のため、先程と同じく2011年以降の推移をご紹介します。

新築住宅向け新規貸出額の推移
調査年 増加額 増加割合
2011年 7兆2393億円
2012年 8兆4493億円 16.7%増加
2013年 8兆1263億円 3.8%減少
2014年 7兆4414億円 8.4%減少
2015年 7兆4871億円 0.6%増加
2016年 8兆3884億円 12.0%増加
2017年 7兆7247億円 7.9%減少

■出典:国土交通省の各年度別「民間住宅ローンの実態に関する調査」より
http://www.mlit.go.jp/common/001280466.pdf
http://www.mlit.go.jp/common/001226959.pdf
http://www.mlit.go.jp/common/001174891.pdf
http://www.mlit.go.jp/common/001122119.pdf

中古住宅と比べると一貫して貸出額が増加しているということはなく、2012年から2014年までは停滞していた印象を受けます。
中古住宅との貸出額の差も依然として大きく、新築神話の崩壊とまでは言えませんが、リーマンショックの影響から脱しきれず、新築から中古住宅に需要が傾いていた時期と言えるでしょう。

それにしても、中古、新築共に2017年の貸出額が減少したのは少々気になります。
土地や住宅の価格が年々上昇し続けている事実を考えると、住宅ローンの申込件数や銀行側の融資姿勢に何らかの変化があった、もしくは、住宅価格だけが上昇して労働賃金が上がらないことで審査にパスできない案件が増えたなどの原因が考えられます。

そんな住宅ローン市場の過去からの推移ですが、実はもう一つ気になる変化を見せたデータがあります。

意外な結果!住宅ローンの審査ポイントは「健康状態」

今回ご紹介している民間住宅ローンの実態に関する調査に「融資を行う際に考慮する項目」という大変興味深いデータがあります。
2017年の中古、新築住宅への貸出額減少への直接的な関係は考えづらいものの、まさに銀行の融資姿勢を表していると言えるデータです。

2018年度調査で民間金融機関の審査で何がポイントにされているのか、各年度の変化と合わせてTOP10までをランキング形式でご紹介します。

民間金融機関の審査項目ランキングと推移
回答項目 2018年 2017年 2016年 2015年 2014年 2013年 2012年
健康状態 1位 2位 2位 2位 6位 6位 6位
借入時年齢 2位 3位 3位 4位 3位 3位 3位
完済時年齢 3位 1位 1位 1位 1位 1位 1位
担保評価 4位 4位 4位 3位 4位 4位 4位
勤続年数 5位 8位 5位 5位 5位 5位 5位
年収 6位 6位 6位 6位 7位 7位 7位
連帯保証 7位 7位 7位 7位 9位 9位 9位
返済負担率 8位 10位 9位 11位 2位 2位 2位
金融機関の営業エリア 9位 9位 8位 8位 8位 8位 8位
融資可能額(融資率)①購入の場合 10位 11位 10位 9位 10位 10位 10位

民間金融機関が最も重視する審査項目が「健康状態」ということを意外だと感じる方は多いのではないでしょうか。

また、今回1位の「健康状態」と8位の「返済負担率」の順位が、2015年に大きく変動したことが分かります。逆に言えば、それ以外は常に重要視されている審査項目と言えるでしょう。

調査結果から分かる銀行の「慎重さ」

ここまで中古・新築住宅ローン貸出額の推移と民間金融機関が審査で重視するポイントの変化をご紹介しましたが、これらのデータから数年の間で銀行の融資姿勢にどのような変化があったのか考えてみたいと思います。

2017年のローン貸出額減少と審査の重要項目で健康状態が上がり返済負担率が下がった点から考えられることは何でしょうか。

  • 上昇する住宅価格に追いつかない国民の収入事情を考慮して返済負担率は見直した
  • 上記に併せ、万一の際の貸し倒れを防ぐ団体信用生命保険への加入を促すようになった
  • 慎重な融資姿勢への変化の結果、融資実行に至った件数も減少した

あくまで可能性ですが、データを見る限りではこのように考えることもできます。
その裏付けとして住宅ローン市場の背景には、以下のような事実があります。

  • 住宅ローンを始めとした金融機関の「低金利競争の激化」
  • 「フラット35(保証型)」の販売の再開

2015年は市場最低金利を更新したという話題があちこちで見られた年であり、返済負担率を多少なり下げてでも住宅ローンの利用客を獲得しようとする動きがあった可能性が考えられます。

そして、健康状態が重視されるようになった要因として「フラット35(保証型)の販売再開」が考えられます。

フラット35(保証型)というのは、金融機関が団体信用生命保険を指定できたり、住宅金融支援機構が抵当権者となるところ金融機関が抵当権者になれるなど、金融機関側にとって商品設計の自由度が高い商品です。

つまり、銀行が自社で用意した団体信用生命保険への加入を増やすため、融資審査で健康状態を重視する動きが強まったのではないかと推測できます。

フラット35(保証型)は、ローンの利用者にも低金利で借りられるメリットがあるため、ここ数年で一気に申し込みが増えています。

正確には2015年ではなく2016年から販売が再開された商品ですが、健康状態が重視されている事実を考えると、団体信用生命保険に関わる金融機関の商品開発事情が影響した可能性は否定できません。

ここまでのデータを見る限り、アベノミクス効果によりいくら景気が回復したといっても金融機関の審査が甘くなることはなく、銀行の融資姿勢はむしろ「慎重さ」が顕著になってきたと言えるでしょう。言い換えれば、「いくらまで貸すか」ではなく、「どんな人に貸すか」という姿勢に変わってきたと言えるかもしれません。

書類改ざん事件を発端とした地方銀行への金融庁の調査、融資と関連性は低いものの、レオパレス21の違法建築発覚などもあり、不動産業界は混乱の渦中といった状況です。
貸し渋りとまでは言わずとも、銀行の審査がこれまでより厳格になっても全く不思議ではありません。

まとめ

2015年はアベノミクス効果により日経平均の2万円台回復や日銀の異次元緩和の追加政策など、低迷していた日本経済に変化のあった年です。
かといってバブル崩壊という二の舞を演じることのないよう、慎重な融資姿勢への変化が見えるのが、今回の調査結果と言えるのではないでしょうか。

不動産業界では、住宅ローン審査の前に非承認と見られる人を「土俵に乗っていない」と表現することがあります。

融資審査のポイントで上位の「借入時年齢」や「完済時年齢」は、審査項目というより申込要件にあたる項目であり、年収や勤続年数、担保価値なども、ローンを借り入れる人の属性や物件の資産価値を審査するための重要項目となるため、当然ランキングで上位にくるべきものです。

「融資を行う際に考慮する項目」の上位にあるものは、まさにローン審査の土俵にあるかどうかを確認する最重要項目と言えますが、より確実な融資を受けるためには「健康である」ということが今後のスタンダードになっていくのかもしれません。

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