もう一つの2022年問題!不動産融資が厳しくなる「バーゼル規制」とは? | 不動産投資を考えるメディア

もう一つの2022年問題!不動産融資が厳しくなる「バーゼル規制」とは?

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バーゼル

先日、住宅ローン金利が0.05%引き上げられたというニュースをご覧になられた方も多いかと思いますが、不動産市場を中期的に見た時に、不動産融資に関するネガティブなイベントがもう一つ控えています。その名は「バーゼル規制」。

住宅ローン金利の上昇により不動産需要に影を落としそうな雰囲気が出てきましたが、それだけでなく実はバーゼル規制も日本の不動産市場に悪影響を及ぼす可能性があるのです。今回は不動産融資が厳しくなるかもしれない「バーゼル規制」について解説させていただきます。

国際的に定められた銀行の統一基準「バーゼル規制」

バーゼル規制とは、簡単に言うと「銀行が倒産しないように国際機関が定めた自己資本比率等についての規制」のことです。1988年に最初のバーゼル規制が策定され、2000年代に最初の内容見直しが行われました。

しかしその直後、世界的な金融危機が起こったことから再び厳格な見直しが行われ、3度の変更を経たことから「バーゼル3(スリー)」とも言われています。

では、バーゼル規制とはどんな機関がどこで決めているのか。これは10か国の財務大臣と中央銀行総裁が集まる国際会議G10が設立した、金融に関して議論する「バーゼル銀行監督委員会」で話し合われて決めています。

バーゼル規制の名称は、このバーゼル銀行監督委員会が定めた基準であることから名付けられたもの。住宅ローンに関する規制も含まれるため度々経済ニュースで取り上げられており、更なる別名として「BIS規制」とも呼ばれていますので、もしかすると一度は耳にしたことのある方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、専門的すぎる内容であることから、詳しく中身を知る人は多くありません。そこで、簡単な例を元にバーゼル規制の中身をご説明します。

バーゼル規制の概要

バーゼル規制は銀行の自己資本比率等について規制するものですが、以下のA銀行とB銀行を例にご説明します。

A銀行:自己資本100万円 + 他人資本900万円 = 総資産1000万円
B銀行:自己資本50万円 + 他人資本950万円 = 総資産1000万円

「自己資本」= 銀行が自分のお金として運用できるもの
「他人資本」= 主に私たちの銀行預金などから運用するお金
「総資産(融資残高含む)」= 自己資本と他人資本(企業・住宅ローン等の融資の返済予定分も含む)

では、上記の銀行が企業や住宅ローンなどで1000万円を貸し出したとすると、自己資本比率は以下のようになります。

A銀行:100万円(自己資本)÷ 1000万円(総資産)= 10%(自己資本比率)
B銀行:50万円(自己資本)÷ 1000万円(総資産)= 5%(自己資本比率)

A銀行は自己資本が多く、他人のお金に頼らない運用ができているため自己資本比率は高くなります。B銀行は自分のお金ではない資本を頼りに運用しているため、自己資本比率が低くなっています。

つまり、自己資本比率が高いほど健全な経営をしていると判断できるわけですが、バーゼル規制では自己資本比率を「8%以上にせよ」と定めています。この式は後述の解説の基本となりますので、覚えておいてください。

なお、日本のメガバンクの自己資本比率は以下のようになっています。

三菱UFJ銀行 16.90%
三井住友銀行 21.11%
みずほ銀行 18.72%
りそな銀行 10.0%

※出典:各行の有価証券報告書より

特段、問題がなさそうですので安心したいところですが、実はバーゼル3において変更された自己資本比率の構成要素に不動産投資家を不安にさせるものが含まれています。

不動産融資が厳しくなる?バーゼル規制の見直し内容

2018年2月に金融庁と日銀が共同作成した資料によると、バーゼル3は2022年から段階的に導入されるとしています。

■金融庁「金融庁・日本銀行作成説明資料」
https://www.fsa.go.jp/inter/bis/20171208-1/02.pdf

では、どのような変更があったかですが、詳細解説を踏まえつつ下記をご覧ください。

≪現行≫
LTV RW
0~100% 35%
100%以上 75%
≪見直し後≫
LTV 住宅ローンRW 賃貸物件等RW
50%未満 20% 30%
50~60% 25% 35%
60~80% 35% 45%
80~90% 40% 60%
90-100% 50% 70%
100%以上 70% 105%

LTV(Loan To Value)は、「住宅ローン残高 ÷ 担保価値」で算出される、言わば「債権のリスク度合い」のこと。貸出金額に対して不動産の価値が高いほどLTVは低くなるため、安全性が高い債権ということになります。

「RW(Risk Weight)」の数値は、リスクウエイト割合の事であり、銀行の自己資本比率を算出する際の分母に組み入れる時の割合です。

簡単に言えば、「銀行の総資産に算入する住宅ローンの債権額を上記RWの割合を乗じたものにしなさい」ということですが、現行のバーゼル規制を元に例を挙げると、住宅ローン債権額は35%の評価で自己資本比率の分母に算入して良いので、融資額100万円なら35万円で計算して良いということです。

しかし、見直し後からはLTVの高い(リスクの高い)ものほど、自己資本比率の分母に算入する金額を多くしなければならず、返済が賃貸収入に依存する不動産はRWの割合が高くなっています。

この変更に対して銀行がどう動くかというと、自己資本比率を保持するためには分子である自己資本を増やす必要があるのはもちろん、分母に含まれる不動産融資の貸出残高を極力抑えたいと考えます。つまり「銀行は不動産融資を引き締める可能性がある」ということなのです。

地方銀行にもバーゼル規制の影響が波及する!?

さて、バーゼル規制は本来、国際業務を行うメガバンクに対して適用される規制です。国内業務のみを行う地方銀行には直接影響することはありません。

しかし、バーゼル規制が日本で適用になった1990年代、国内業務しか行わない地方銀行や信用金庫にも自己資本比率4%という規制が設けられました。バーゼル銀行監督委員会で定められたものではなく日本独自の規制ですので、そう考えると今後、国が独自に地方銀行に対して規制を行う可能性はゼロではないと言えるのです。むしろ、昨今の地方銀行への風当たりが強くなっているため、規制を強める可能性すらあります。

例えば、最も注目されているスルガ銀行の自己資本比率。2019年3月期第1四半期決算情報を確認すると自己資本比率は12.14%ですが、今回のシェアハウス案件への書類改ざんや不正融資、社内の不正な資金流用などにより貸倒引当金を膨らんでおり、9月7日のロイターの記事においても、自己資本比率4%を切る可能性を示唆しています。

■アングル:地に落ちた地銀の優等生・スルガ銀 揺らぐ財務健全性
https://jp.reuters.com/article/angle-suruga-0907-idJPKCN1LN1TT

また、スルガ銀行を始めとした不正融資の実体について金融庁も調査に乗り出すとしており、調査結果によっては地方銀行への規制を厳しくする可能性は十分に想定されます。

ついに始まった!金融庁が全国の地方銀行の不動産融資を調査開始!
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今年2018年に入ってから、次々と発覚した不動産業界と銀行による書類改ざんや不正融資という問題。先日8月31日には、不動産テック企業大手の「T...

メガバンクが投資用不動産への融資に後ろ向きになったことから、ここ最近では地方銀行を頼りにしていた不動産投資家が多いのも事実。外国人投資家が日本の不動産市場を牽引してきたことは否めませんが、もし今後、地方銀行が不動産融資を引き締める可能性があるとするなら、日本の不動産市場への悪い影響が懸念されます。

まとめ

不動産における2022年問題というと「生産緑地開放」の文字を思い浮かべる方は多いかと思います。しかし、ここ数年でバブルと言われ続けてきた不動産市場の今後を見据え、バーゼル規制と国による規制が水を差すのではないかという向きもあります。

本来、自己資本比率を維持することは健全な経営を促すものであるため歓迎されるべきなのですが、机上の理論と現場の処世術が必ずしも一致するとは限らず、むしろ貸し渋りを引き起こす可能性は否めません。「だからこそ今!」とは言いませんが、少なくとも不動産関連のローンが今までよりも借りにくくなることは想定しておいた方が良いかもしれません。

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