【2020年4月】瑕疵担保責任から契約不適合責任へ!売買契約後の責任はどう変わる?

20190708

2017年5月に民法の改正法案が成立し、2020年4月1日より施行されることになりました。この改正民法では、不動産の売買契約における瑕疵担保責任が廃止され、新しく契約不適合責任が規定されます。これまで不動産の売買契約時には瑕疵担保責任について気を付ける必要がありましたが、契約不適合責任に変わると、売買契約後の責任はどのように変わるのでしょうか。本記事では、瑕疵担保責任と契約不適合責任について解説すると共に、改正後どのように売買契約後の責任がどう変わるのか解説していきます。

2020年4月1日の改正民法施行で瑕疵担保責任が契約不適合責任へ

2020年4月1日、約120年ぶりに抜本的に民法が改正(施行)されることになりました。改正箇所は200項目にもわたりますが、インターネット取引の普及など時代が変化に対応することが主目的で、消費者保護の重視などかねてより問題とされてきた部分が見直しされています。その中で特に不動産売買において関連の深いものが、これまでの瑕疵担保責任が削除され、契約不適合責任に変わるという事です。瑕疵担保責任と契約不適合責任の主な違いを表にすると、以下のようになります。

 瑕疵担保責任契約不適合責任
法的性格法定責任説契約責任説(債務不履行責任)
責任の対象隠れた瑕疵であること契約の内容に適合しないこと
損害の範囲信頼利益に限定履行利益も含む

このように、今回の民法改正では法的性格や責任の対象、損害の範囲まで変わっています。不動産の売買契約において、これまでと同じ感覚で契約してしまうと後々トラブルに発展した時に大きな損害を負いかねません。瑕疵担保責任と契約不適合責任でどのような違いがあるのか、これを機にしっかり把握しておきましょう。

瑕疵担保責任とは?

まず、瑕疵担保責任について解説していきます。

瑕疵とは

瑕疵とは、簡単に言えば「欠陥」のことです。瑕疵には「家が傾いている」「建物が雨漏りした」といった分かりやすいものもありますが、近隣の騒音や異臭なども瑕疵に該当します。これらの瑕疵は以下の4つに分けられます。

瑕疵の種類概要
物理的瑕疵建物:雨漏りやシロアリによる被害、基礎や柱の傾き、建物内の配管の水漏れなど
土地:敷地の土壌汚染、軟弱地盤、地中に廃棄物が埋まっていたなど
法律的瑕疵都市計画法や建築基準法、消防法などに違反している物件など
心理的瑕疵過去に自殺や殺人などの事件、事故が起こったなど
環境的瑕疵近隣の騒音や振動、日照障害、異臭があるなど

瑕疵担保責任を問われるのは、物件に「隠れた瑕疵」がある時とされています。隠れた瑕疵とは、「買主が通常の注意を払ったのにも関わらず発見できなかった瑕疵」のことを指し、「見えない欠陥」などと表現されます。つまり、買主が物件を購入する際、その瑕疵について「過失がなく、知らなかった(善意無過失)」である必要があります。売主は売買契約前に買主に対して瑕疵について十分に説明していれば、基本的に瑕疵担保責任を問われる心配はありませんが、たとえ売主が善意無過失だったとしても買主も善意無過失であれば、売主は瑕疵担保責任を負わなければなりません。

瑕疵担保責任を負う期間

民法では、瑕疵担保責任を負う期間を「買主が事実を知った年から1年以内」と定めています。しかし、これでは買主が10年後、20年後に事実知ったとしても、そこから1年以内であれば請求可能で、売主はいつまでも心が休まりません。このため、特約で「引き渡しから〇ヶ月」などと予め期間を設定するのが一般的です。ただし、売主が宅建業者の場合、民法の内容より売主に有利な特約を付けられないとされています。そこで、救済策としてプロの宅建業者であっても瑕疵担保責任は「引き渡しから2年間」とすることが許されています。

瑕疵担保責任の「信頼利益」とは

瑕疵担保責任に基づいて買主が請求できる損害賠償の範囲は「信頼利益」に限るとされています。信頼利益とは、契約の有効性を信じたために発生した損害のことで、例えば、契約締結にあたり登記費用を支払ったものの、契約の目的物に瑕疵があったことが原因で契約を解除する場合、支払った登記費用について請求できます。後述しますが、契約不適合責任の損害賠償は「履行利益」に及ぶとされ、一般的に信頼利益より金額が大きくなります。これは瑕疵担保責任は売主が善意無過失でも請求される可能性があるため、そうした落ち度のない売主に履行利益まで賠償請求されることへの救済策とされています。

契約不適合責任とは?

契約不適合とは、目的物が種類、品質、数量に関して契約の内容に適合しないことを指します。契約不適合状態であれば損害賠償請求などができることを「契約不適合責任」と呼びます。例えば、建物に雨漏りが生じていることを売買契約書に記載し、買主も了承の上、売買契約を締結したのであれば責任は問われませんが、契約書にその記載がなければ契約不適合責任になり得るということです。

契約不適合責任の「履行利益」とは

瑕疵担保責任で請求されるのは「信頼利益」に限られますが、契約不適合責任では「履行利益」まで請求されます。履行利益はその契約が履行されていれば得られていたであろう利益のことで、一般的には信頼利益より範囲が広くなります。つまり、契約不適合責任に基づいで損害賠償がなされる場合、これまで以上に多額の請求がなされる可能性があります。

売買契約後の責任はどう変わる?

これまで瑕疵担保責任と契約不適合責任についてお伝えしましたが、では売買契約後の責任は具体的にどう変わるのでしょうか。

隠れた瑕疵かどうかは関係ない

まず、瑕疵担保責任が問われるのは瑕疵が隠れたものである必要があります。つまり、買主が通常の注意を払えば発見できる程度の瑕疵であれば、責任は追及できません。一方、契約不適合責任においては、契約書に書かれている内容と契約の対象物の内容が一致しているか否かが焦点となり、問題が隠れているかどうかは問われません。これは、瑕疵担保責任における「隠れた瑕疵」が本当に隠れたものかどうかの立証が難しいことが変更理由の一つと言えます。

例えば、家が傾いているのを売主が知らず、そのまま売却しても、買主が善意無過失であれば瑕疵担保責任を追及することができます。しかし、買主が本当に善意無過失かどうかを立証することは困難です。本当は知っていたのに知らないふりをして売買契約を締結した可能性もあり、そうなると後々瑕疵担保責任の追及はできなくなります。契約不適合責任に変わると、こうした問題は起こらなくなります。

契約書に記載する内容がより重要になる

上記のように、契約不適合責任では契約書の内容と契約の対象物が合致しているかどうかが問われます。このため、売買契約書に記載する内容がより重要になります。改正前にも瑕疵担保責任を問われないため、物件の状況について書きますが、民法改正後はより詳細に書くことが求められます。改正により売主の負担が大きくなったようにも思えますが、売主としては契約書に詳細を書いておけば問題を回避できるとも言えます。

追完請求と代金減額請求が可能になる

瑕疵担保責任では、信頼利益に限り損害賠償請求が可能で、瑕疵が原因で契約の目的を達成できない時には契約解除ができました。一方、契約不適合責任では損害賠償請求や契約解除もできますが、それに加えて「追完請求」と「代金減殺請求」も可能となります。「追完請求」とは簡単に言うと、契約不適合となっている部分について直してもらうよう請求することで、「修補請求」と考えて差し支えありません。

また、代金減殺請求とは契約内容に不適合の部分について減額請求できる権利のことです。なお、基本的には追完請求を先に行い、催促しても対応されない場合に代金減殺請求が可能となります。

 瑕疵担保責任契約不適合責任
損害賠償請求可/信頼利益に限る可/履行利益も含まれる
契約解除可/契約の目的を達成できない場合催告により可能だが、不履行が軽微の場合は不可
追完請求不可
代金減殺請求不可催告により可

まとめ

契約不適合責任について、瑕疵担保責任との違いという観点でご説明しました。これまでも将来のトラブルに備えて売買契約書にはできるだけ詳細に記載することが求められていましたが、瑕疵担保責任から契約不適合責任に変わることで、契約書の記載内容がより重要となります。特に2020年4月の民法改正以後、不動産の売買契約を締結する場合は瑕疵担保責任と契約不適合責任の違いについて十分理解した上で契約書を交わすことが大切です。

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