想定利回り、表面利回り、実質利回り、還元利回りの特徴・計算方法と各指標の比較

20190710

不動産投資関連のコラムでは、これまでに散々語りつくされてきた「利回りの違い」。何となく理解している方もいれば、「もう教えてもらう必要はない!」くらい自信を持っている方もいるでしょう。実際のところ、具体的な計算方法はボンヤリ覚えている方も多いのではないでしょうか。

この記事では一般的なメディアではあまり解説されていないポイントも踏まえて、「想定利回り」「表面利回り」「実質利回り」を始め、誰もが学ぶことを避けがちな「還元利回り」をどこよりも分かりやすく解説します。

「想定利回り」の特徴と計算方法

「想定利回り」とは、「その物件から得られると想定される1年間の収益」を計る指標です。計算式は以下の通りです。

想定される年間家賃収入 ÷ 物件の取得費用 = 想定利回り

例えば、半年前から空室の区分所有マンション1戸を1000万円で売りに出すとします。入居者がいた時は家賃8万円で賃貸していました。収益用物件として売るのですから、利回りも掲載しなければなりませんが、普通に考えれば以下の計算で利回りを算出します。

【オーナーが想定する利回り】
家賃8万円 × 12ヶ月 ÷ 1000万円 = 9.6%

売りに出す直前、空室になっていたのは周辺相場より高い家賃が原因だったと判明。売却を依頼した不動産会社の見解では、家賃は6万円が妥当との判断です。つまり、6万円の家賃なら入居者が確実に決まるだろうとの予測ですが、そうすると利回りは以下のように変わります。

【不動産会社が想定する利回り】
家賃6万円 × 12ヶ月 ÷ 1000万円 = 7.2%

実は上記どちらも「想定利回り」であり、「誰の想定(どういった根拠)での利回りか」という違いがあるのみです。現時点で空室のため、実際に入居者が決まらないと本当の利回りは算出できません。つまり、「実際に運営したらこの位の利回りになるだろう」というのが想定利回りなのです。

「表面利回り」の特徴と計算方法

「表面利回り」は、満室時における家賃収入が物件価格の何割であるかを示す利回りです。維持費や税金、ローン返済などを加味しないで得られる1年間の家賃収入を計算し、物件を取得する時に払った費用の何%にあたるかを計算します。計算方法は以下の通りです。

1年間の家賃収入 ÷ 物件の取得費用 = 表面利回り
(例)
物件価格4000万円
購入時の初期費用400万円(物件価格の10%)
家賃7万円
物件タイプアパート
戸数6戸
【表面利回りの計算】
(家賃7万円 × 6戸 × 12ヶ月)÷(4000万円 + 400万円)= 11.45%

上記の計算例で得られた「11.45%」の利回りは、「物件購入に支払った投資額の11.45%を1年間で回収できる」とも言い換えられます。つまり、「約8.7年で投資額を全てを回収できる」という事です。

「実質利回り」の特徴と計算方法

「実質利回り」は、維持費を始めとした出費を考慮する本当の利回りです。実質利回りの計算方法は考え方がいくつかあり、維持費以外にローン返済額を含めるケースや、時には減価償却費という税制上の控除額まで考慮するケースもあります。一般的な計算方法は以下の通りです。

(家賃収入 - 維持費)÷ 物件の取得費用 = 実質利回り

維持費には主に以下のような費用を含めます。

【維持費に含める費用】
  • 空室による損失
  • 委託管理手数料
  • 固定資産税などの租税公課
  • 小規模な修繕やハウスクリーニング費用
  • 不動産会社に払う広告費
  • etc

税金の計算をする時は「減価償却費」を計上しますが、実際に支出がない金額のため、維持費として適切ではないとの理由から、実質利回りの計算時には多くのケースで減価償却費は含めません。また、ローンの返済額に関しても人それぞれ借入額と返済額が違うとの理由で含めないのが一般的です。ただし、個人的に「自分の所有物件が純粋にどのくらい稼いでいるか」を計算する場合は、必ずしも上記の慣例に従う必要はないでしょう。

「還元利回り」の特徴と計算方法

さて、利回りの中で最も難解なのが「還元利回り」です。上記までに解説した3つの利回りとは「指標としての目的」が明らかに違います。前述の3つの利回りを見る目的は「物件の収益性」です。利回りのパーセンテージが分かれば、物件価格から家賃収入を知ることができます。

それに対して、還元利回りは「適正な物件価格を知るための指標」です。別名で「キャップレート」とも言われ、将来的なリスク、周辺環境、物件の利用価値など様々な観点による収益性への影響を考慮して算出されます。還元利回りは複数の計算方法に分かれていますが、主に以下のような種類があります。

【還元利回りの主な計算方法】
  • 周辺不動産の取引事例から還元利回りを求める方法
  • 借入金と自己資金に対する還元利回りから求める方法
  • 土地と建物を個別に見た時の還元利回りから求める方法
  • 割引率から還元利回りを求める方法
  • 借入金償還余裕率(DSCR)から求める方法

上記全てを覚えるのは、超難関資格の不動産鑑定士が覚える知識を習得するようなものですので、一般の個人投資家が全てを覚える必要はないでしょう。しかし上記算出方法の違いを見れば、「どんな要素を基に不動産の適正価格を算出するか」は何となく判断できるのではないでしょうか。以下のように言い換えると分かりやすいでしょう。

  • 過去の取引で起きたことを考慮しながら不動産の価格を決める
  • 資金調達の視点から適当だと考えられる不動産の価値を決める
  • 土地と建物の収益性を別々に考えて不動産の価格を決める
  • 今と将来では不動産の価値は違うということを考慮して不動産価格を決める
  • どの程度までのローン返済なら余裕かを考慮して不動産価格を決める

還元利回りと物件価格の求め方

それでは、肝心な還元利回りの計算方法ですが、前述の通り目的が違えば計算方法も全く違うため、一つの式を示すことができません。最も分かりやすい「周辺不動産の取引事例から還元利回りを求める方法」で説明すると、以下のように計算できます。

表面利回り - 維持費 - その他リスクなど = 還元利回り

もし、表面利回りが10%で、年間の家賃収入から維持費やリスク等を考慮して30%を引くとします。すると以下の計算式で還元利回りが算出できます。

10% ×(1 - 0.3)= 7%

上記で還元利回りが分かりましたので、物件価格を求めてみましょう。仮に年間の家賃収入が300万円あるとして、還元利回りから物件価格を求めると以下の計算になります。

年間の家賃収入300万円 ÷ 還元利回り7% = 約4286万円

還元利回りについては他の利回りとは使用目的が違いますので、すぐ理解するのはなかなか難しいですが、まずは「物件の価格を求めるための利回り」ということを念頭に置くようにしましょう。

また、還元利回りは土地柄やローンの借り入れ状況、将来のリスク等を考慮しながら計算することを改めて認識してください。つまり、計算式に含まれる数値を随時変更しながら計算するのが還元利回りの基本であり、予め決まった数値を入れて計算するものではないという事です。

4種類の利回りを比較!違いと定義

では最後に、今回解説した利回りを一覧でまとめておきましょう。

想定利回り
計算方法想定される年間家賃収入 ÷ 物件の取得費用
目的主に空室の物件について想定される収益性を表す
特徴周辺の家賃相場などを参考に想定する利回り
表面利回り
計算方法年間家賃収入 ÷ 物件の取得費用
目的維持費等を考慮しない家賃収入で大まかな収益性を計る
特徴投資判断における最初の段階としておおまかな収益性を確認できる
実質利回り
計算方法(年間家賃収入 - 維持費) ÷ 物件の取得費用
目的維持費等を差し引いた純粋な利益から収益性を求める
特徴手元に残る実際の利益を計算できるためキャッシュフローが明確になる
還元利回り
計算方法複雑な計算方法が複数ある(→還元利回りの主な計算方法
目的適正な物件価格を計算するために用いられる利回り
特徴自分の目的に応じた適正な物件価格を多角的に判断できる

個人投資家なら物件探しの際に不動産情報サイトに表示された表面利回りを見ることになります。ただ、その物件が空室なら根拠の薄い想定利回りで表示されていることがありますので、必ず自分で家賃相場を調べて計算してみましょう。それができると今度はキャッシュフローが気になって最終的に実質利回りまで計算するという行動を自然と起こしているはずです。

利回りというのは、あくまで収益性を計るための指標に過ぎません。利回りの数字を追うばかりでなく、競合物件より有利に入居募集をするための差別化や日々の不動産マーケットを探るなどの行動の方が先決です。常に収益の最大化を念頭に置くことが、不動産投資における成功への近道と言えるのではないでしょうか。

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