自己資金1割は嘘!? 準備すべき資金を決めるたった2つの指標 | 不動産投資を考えるメディア

自己資金1割は嘘!? 準備すべき資金を決めるたった2つの指標

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グラフと資料のイメージ

不動産経営に慣れている方ですと、次の物件の購入時に自己資金をどのくらい用意すべきか、感覚的にでも理解されている方は多いことでしょう。
しかし、初めて不動産投資を行う方の場合、何を基準に自己資金の額を決めるべきかイマイチ理解できないなんて方もいらっしゃるかもしれません。
最初に用意する自己資金をいかに少なくするかが、不動産投資のレバレッジを語るにあたって重要な事ではありますが、そのレバレッジを意識しすぎて無茶な不動産経営になってしまっては本末転倒です。
そこで、不動産投資における自己資金について、準備する資金は一体いくら用意すべきなのかを解説させていただきます。

返済比率から安全性と必要な自己資金を確かめる

まず、不動産投資を行う上でローンを利用するのであれば、購入した物件の返済比率がどのくらいになるかを必ず把握すべきです。
つまり、銀行から「どのくらいの期間」で「何%の金利」で「何万円の融資」を受けるのかを計算しつつ、ローンの返済額が家賃収入をどのくらい圧迫するか試算し、その投資が危険かどうかの安全性を判断する必要があるのです。
返済比率への考え方は、金融機関が融資を決める際には以下のような基準で見るとされています。

  • 30%未満「とても安全」
  • 30~40%「安全」
  • 40~50%「普通」
  • 50~60%「危険」
  • 60%以上「とても危険」

上記のことから、購入する物件運用のシミュレーションを行い、返済比率が50%以下になるように自己資金を投入すればよいという考え方ができます。
尚、返済比率の計算方法は至極簡単です。

( ローン返済額 ÷ 家賃収入 ) × 100 = 返済比率

ここで、中古マンションを購入した際のシミュレーションをしてみましょう。

  • (ケース1)
  • 物件価格1000万円
  • 自己資金100万円(1割)
  • 借入額900万円
  • ローン金利2.5%
  • 借入期間30年
  • 家賃収入5万円
  • ローン返済額3.5万円

ローン返済額3.5万円 ÷ 家賃収入5万円 = 70%

このように、自己資金1割の場合、非常に高い返済比率となり危険すぎる投資という判断になります。では、物件価格の4割である400万円を自己資金として用意したらどのようになるでしょうか。

  • (ケース2)
  • 借入額600万円
  • 自己資金400万円
  • ローン返済額2.3万円
  • 他、同条件

ローン返済額2.3万円 ÷ 家賃収入5万円 = 46%

物件価格の40%を用意してようやく安全と言えるところまで返済比率を上げることができました。
このように考えると、一般的に不動産購入時の自己資金は1割だとされる定説的な話を鵜呑みにしてはいけないという事が分かりますが、それと同時に、不動産投資とはやはり高額なお金を用意する必要があるのかとモチベーションが下がる気分にもなるかもしれません。
ただ実は、金融機関ではもう一つ目安としているものがあるのです。

DSCRで更に綿密な計画を立てる

金融機関が融資する物件を見る時の判断基準として、「DSCR」というものもあります。
「Debt Service Coverage Ratio(借入返済余裕率)」の頭文字を取った指標であるため、DCRやDCSと呼ばれることもあります。
このDSCRは「年間のローン返済額」に対して「家賃による純利益」が「何倍」なのかを見る時に使われる指標であり、金融機関の審査の際にはDSCRの倍率「1」を基準として、その物件のDSCRが何倍であるかを考慮すると言われています。
あくまで一般的な解釈ではありますが、金融機関でDSCRの倍率を見る際には以下のように判断されることが多いとされています。

  • 1.2未満:融資不可能
  • 1.2:ギリギリ融資可能
  • 1.3以上:融資可能
  • 1.5以上:積極的に融資

また、DSCRを算出する際に必要な「家賃による純利益」の定義ですが、ご存知の方も多い「NOI」を使用して計算します。
念のためその意味をご説明させていただくと「Net Operating Income」の頭文字を取ったものであり、「営業純利益(=年間家賃収入)」という意味となりますが、DSCRとNOIの算出は共に難しいものではなく、以下のような計算式になります。

家賃収入 - 諸費用 = NOI(営業純利益)
NOI ÷ ADS(年間のローン返済額) = DSCR(借入返済余裕率)

注意点としてNOIを算出する際に控除する諸費用には減価償却費、ローンの支払いなどは含めません。家賃収入を生む物件としての実力を見るのがNOIの目的ですので、そもそも減価償却費のような支出を伴わない費用、意図的に有無を変更できる支払利息、物件の価値を高めるための修繕や改築費などの資本的支出などを家賃収入から控除してしまうのは、適切な計算方法ではないと考えられるためです。

さて、そんなマメ知識を頭に入れつつ、改めて前項のシミュレーションの(ケース1)を例にしてDCSRを算出してみましょう。

  • (ケース1)
  • 物件価格1000万円
  • 自己資金100万円(1割)
  • 借入額900万円
  • ローン金利2.5倍
  • 借入期間30年
  • 年間家賃収入60万円
  • 年間ローン返済額42万円
  • 諸費用6万円(仮)

60万円 - 6万円 = 54万円(NOI)
54万円 ÷ 42万円 = 1.3倍

ここでお気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、前項ではケース1は自己資金を100万円用意したものの、返済比率が70%となったため危険だと判断しました。しかし、DSCRでは銀行が融資を実行する最低ラインである1.3倍になっています。
つまり、返済比率とDSCRとで比べた時に、用意した自己資金の割合が適正かどうかの判断が分かれているのです。
これは何故なのでしょうか。
では、その答えを解説させていただくと共に、より安全に不動産投資を行うための自己資金について考えてみましょう。

DSCRを上げて自己資金を抑えるための方法

返済比率とDSCRによる自己資金の適正な割合に違いが出る理由ですが、結論から申し上げますと「それぞれの定義が違う」という事が答えとなります。

改めて思い出してみましょう。
返済比率は、ローンの返済額が家賃収入をどのくらい圧迫するかを判断するためのものとお伝えしました。
これを逆から見ると、ローンを返済して残った家賃収入で諸費用等を支払わなければいけないということでもありますので、自己資金割合の基準を決めるにしては甘い計算と言えるかもしれません。

対するDSCRは、諸費用を除いた家賃収入がローン返済額の何倍にあたるのかを示すものですので、仮に1.3倍だとするのであれば、ローンや諸費用を支払った後の「0.3」が純粋な利益に近いと言えます。つまり、残った0.3から他の修繕費や万一の際の費用を賄うことになります。

よって、より安全で適正な自己資金割合を知りたいのであれば、DCRを追求することが大事だと言えるでしょう。
では、先のシミュレーションにあった(ケース2)でDSCRを計算するとどのようになるでしょうか。

  • (ケース2)
  • 物件価格1000万円
  • 自己資金400万円
  • 借入額600万円
  • ローン金利2.5%
  • 借入期間30年
  • 年間家賃収入60万円
  • 年間ローン返済額27万円
  • 諸費用6万円(仮)

60万円 - 6万円 = 54万円(NOI)
54万円 ÷ 27万円 = 2倍

なんと、DSCRは2倍になりました。
非常に安全な投資ができていると言えるレベルですが、これは自己資金を4割も出しているためローンの返済ができなくなる可能性が低くなるためです。
では、自己資金を多く出さずにDSCRを高める方法はないのかと考えた時、以下のような工夫が行うことができればDSCRを高められる可能性があります。

  • 金利の低い金融機関で借り入れる
  • 借入期間を長くできないか交渉する
  • 物件価格の値引きをしてもらう
  • 諸費用を抑える
  • 物件のある土地を有効活用して他の収益も得る

最後にあった、「他の収益を得る」ということのためには所有する土地でアパート経営をしている場合に有効なものですが、ともあれ、家賃収入という上限が決まっている収入に対して支出をどう抑えるかがポイントであり、物件購入前のシミュレーションと、それらが実際に可能であると判断できるのであれば自己資金を低く見積もっても良いという結論になるのです。

まとめ

途中、細かな数字やその計算式などが登場しましたので、それらを見慣れていない方ですと少々理解に時間がかかることもあるかもしれません。
しかし、上記はあくまで基準として持っておきたい一つのツールという範囲であり、本来であれば、もっと詳細なシミュレーションを行いつつ、その逆算から用意すべき自己資金を決めるというのが最も堅実な方法だという事ができます。
しかし、あまり堅実さを求めすぎてしまうと投資効率を悪くすることに直結しますので、リスクの許容範囲まで自分自身で決めるというところまで考えておけると良いかもしれません。

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