民法改正が不動産投資の実務に与える影響とは | 不動産投資を考えるメディア

民法改正が不動産投資の実務に与える影響とは

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民法改正により不動産投資の実務に与える影響とは?│画像1

2017年5月26日、民法(債権法)の改正法案が参議院で可決され、6月2日に公布されました。改正民法は、公布日から3年以内に施行することが定められており、法務省は2020年施行を目指し準備を進めています。実は民法の債権関係の規定(契約など)は、1896年(明治29年)に初めて制定されてから約120年もの間ほとんど改正がなされていませんでした。

この120年の間に日本経済は大きく様変わりしており、取引量は増大し、複雑化しています。このような社会経済の変化への対応を図るための見直しと、分かりやすいものにする必要性の2つの目的から民法が改正されています。改正された項目は小さなものまで含めると約200項目もありますが、今回はその中で不動産投資に関わる部分についてご紹介いたします。

民法のどの部分が改正された?

まず、今回の改正でどのような部分が変更されたのか、ということをざっくり紹介しておきましょう。今回は次の2つの点で大きく変更があります。一つ目は「社会・経済の変化への対応の観点からの改正検討項目」。もう一つは、「国民一般に分かりやすい民法とする観点からの検討項目」です。

不動産投資に関わる改正点において、前者に関連するものでは、入居者の連帯保証人対する保護が強化されたということです。連帯保証人を頼まれて断れず安易に連帯保証人となってしまい被害を被ることがないように法律が改正されました。

一方、後者に関連する改正点では、アパートやマンションに関する賃貸借契約についてとなります。この法改正により、敷金の返還や原状回復に関するルールが明記されることになりました。
これら改正内容の周知徹底を行うために、2020年を目標として改正民法が施行される見込みとなっています。つまり、賃貸借契約書などに法律内容と異なる条項があれば、2020年までに改正民法の通りに訂正しなければいけないということです。

連帯保証人の扱いはどう変わった?

では、それぞれ詳しく内容を見ていくことにしましょう。まず連帯保証人の扱いは、保護の観点からどのように変化したのでしょうか。

ポイント1

1つ目は、連帯保証人について保証限度額の設定が義務付けられたことです。
今までは入居者が家賃滞納したり物件を壊したりなどした場合、連帯保証人が代わりに滞納した家賃を支払ったり、補償をしたりしていましたが、その限度を明確にする改正がされました。改正後は無限に連帯責任を負うのではなく、限度額を決めてその範囲内で責任を負うということになります。

また、土地や建物の賃貸借契約書には、連帯保証人の責任限度額を明記することになりました。「限度額●●●万円の範囲内で保証する」「家賃●ヶ月分の範囲内で保証する」など契約書への明記が必要です。今後は責任限度額を定めていない連帯保証条項は無効になりますので、十分注意が必要です。
なお、限度額の設定については特に規定はありません。家主と連帯保証人で合意した金額を記載することになります。家賃を滞納してすぐに退去してもらえればいいのですが、なかなか退去せず、滞納から退去するまで半年から1年かかるケースもあります。裁判を起こして退去してもらう場合、さらに時間がかかるでしょう。1年分の家賃相当額が妥当な金額になるのではないでしょうか。過去の事例と合わせながら設定することが大切です。

ポイント2

2つ目は、連帯保証人から家賃滞納状況についての問い合わせに対する回答が義務付けられたことです。
これまで個人情報保護の観点から、連帯保証人が家賃の滞納状況について問い合わせをしても答えられない部分がありましたが、改正民法では連帯保証人が家賃を滞納した場合、その情報を正しく伝える必要があります。

正しい回答をしなかった場合、連帯保証人に滞納家賃を請求する際に回答義務違反を指摘され、請求に支障が出るということもあり得るのです。

また、注意しなければならないのが、1ヶ月でも家賃滞納があった場合、支払うべき残りの全ての家賃を支払わなければならないという「期限の利益喪失」の取り決めです。カーローンなどでよく見かける条項ですが、家賃に関してこの取り決めをしている場合、期限の利益喪失をした時から連帯保証人に対して2ヶ月以内に通知する必要があります。そこで問題になってくるのが、管理会社に管理を依頼しているケースです。

管理会社に管理を依頼している場合、会社によって対応が変わります。入金管理がしっかりしている優秀な管理会社であれば、1日でも入金が遅れれば、オーナーへ連絡するとともに催促のメールを入居者にも送付してくれるでしょう。

しかし、ひどい管理会社では、家賃滞納をしている事実を知らせてくれないばかりか、数ヶ月間も放ったらかしで何も対応をしてくれないというケースも少なくありません。このように問題のある管理会社に管理を依頼していると、改正民法施行後では「滞納された家賃が回収できなくなる」可能性があるのです。

ひどい管理会社のケースというのは、何も小さい管理会社ばかりではありません。大手の管理会社でもこのようなことは起こるのです。管理会社にルールを徹底するように、予め伝えておくのが無難でしょう。

ポイント3

事業用賃貸について、新たに賃借人自身が連帯保証人に対して自分の財産状況についての情報提供を行うことが義務付けられました。

賃借人から連帯保証人へ情報提供が義務付けられた項目は次の5つの項目となります。

  1. 賃借人の財産状況
  2. 賃借人の収支の状況
  3. 賃借人が賃貸借契約の他に負担している債務の有無並びにその額
  4. 賃借人が賃貸借契約の他に負担している債務がある場合、その支払い状況
  5. 賃借人がオーナーに保証金などの担保を提供するときはその事実および担保提供の内容について

法務省が改正民法の施行を目指している2020年以降、店舗やオフィスなどの事業用物件の賃貸借契約については、この5項目について賃貸借契約書に記入欄を設けることが必須になります。そして、賃借人にそれを記入させた後、連帯保証人に署名、捺印を求めるということです。

もし、前述した5項目について何にも触れていない賃貸借契約書があれば、連帯保証人が賃借人の財産状況を把握できていないということにもなりかねません。その場合、連帯保証契約を無効にできる可能性もあるということです。

たとえば、個人事業で飲食店を新しく開業する人が店舗を借りるために家族を連帯保証人にするケースで考えてみましょう。

店舗やオフィスなどの事業用物件の不動産賃貸借契約で連帯保証人をつける場合、賃借人の財産状況などの情報提供を行うことを改正民法では義務付けています。

これは、賃借人の連帯保証を引き受ける際に、賃借人にどのくらい財産があるのかということを把握する機会を与え、その上で連帯保証人を引き受けるかどうかを判断してもらうという趣旨で設けられたものです。

一見するとオーナーには、何の関わりもないと思われる情報提供義務ですが、実はそうではありません。
賃借人が財産状況などの情報提供を連帯保証人に伝えることが十分でなく、そのことを誤解して家族が連帯保証人になっている場合や、オーナーが財産などの情報提供義務を果たしていないことを知っていたり、または知り得たのに知ることを怠った場合については、連帯保証人は連帯保証契約を取り消すことができるのです。

賃貸借契約書に賃借人が連帯保証人への情報提供義務を果たしていない(情報の記載がない)場合は要注意です。オーナーが連帯保証人契約を取り消される危険性があるからです。賃貸借契約書には、必ず情報提供欄を設けるようにしましょう。

家賃の遅延損害金の利率改正

「社会・経済の変化への対応」の観点からの民法の改正検討項目については、法定利率の改正があります。

この法定利率の改正とは、世の中の金利が低い状態が続いているという現状を踏まえて、契約の当事者間に利率や遅延損害金の合意がない場合などに用いられる法定利率についての項目です。この法定利率を年5%から年3%に引き下げた上で、将来的に市中金利動向に合わせて変動する仕組みを導入する予定になっています。

たとえば、賃貸借契約の契約書に記載される家賃の遅延損害金の利率を記載しておらず、取り決めがなされていない場合には、法定利率に準ずるということになります。

前述したように、将来的に市中金利動向に合わせて変動する仕組みが導入され、法定利率は3年ごとに見直しが行われます。このまま金融緩和による低金利が続けば、法定利率も順次引き下げられるということになります。

つまり、きちんと賃貸借契約書に記載をしてお互いに合意しなければ、超低金利が続いている現状では、家賃滞納をした場合の遅延損害金の利率がどんどん下げられてしまい、遅延損害金の罰則の意味がなくなってしまうということです。

ここで、おさらいです。改正民法は次の2つの観点から検討されました。一つは「社会・経済の変化への対応」の観点から、もう一つは「国民一般にわかりやすい民法」という観点からです。
「社会・経済の変化への対応」という点からの改正項目としては、連帯保証人への保護が強く打ち出された改正内容であることがポイントでした。
次に「国民一般にわかりやすい民法」という点からの改正項目について紹介していきます。

敷金返還や原状回復ルールを契約書に明記する

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この改正項目では、これまで商習慣などで法律には明文化されなかった賃貸借終了時の敷金返還や原状回復ルールについての明確化がポイントになります。
ルールが明文化されていなかったが故に、敷金返還や原状回復について、オーナーと賃借人のどちらが負担するのかトラブルになりがちでした。そうしたトラブルをなくすべく、今回ルールが明文化されたのです。

敷金については、賃貸借契約が終了して賃料の未払い分や故意、過失による損傷の修繕費用などがない限り、明け渡しを受けた時にオーナーは敷金の全額が返還されます。これまでの判例上のルールが明文化されたのが改正民法の特徴として挙げられています。

これは原状回復についても同様です。
通常の使用によって生じる部屋の傷や汚れ、経年変化によって生まれる汚れや色の変化などは、原則としてオーナーの負担となります。
ただし、補修費用を負担する範囲が賃貸借契約書に具体的に明記されている場合は、賃借人の負担とする特約を設けることは改正民法の施行後も問題がないとされています。

「敷引き」も違法にならない

一部の地域で行われている商習慣で「敷引き」というものがあります。これは、賃貸借契約終了時に敷金のうち一定額を無条件で差し引かれるものです。
たとえば、敷金が50万円で敷引きが20万円であれば、退去時には、残りの30万円が返還されることになります。原状回復の特約がある場合は、30万円の中からさらに差し引かれることになります。
契約書にも敷引きの特約条項が記載されているケースが多いです。この敷引き特約は改正民法の施行後にも、差し引く額が高額すぎない限り違法ではないとされています。

修繕に関して入居者(賃借人)の権限が明確化

また、修繕に関しては賃借人の権限が明確になっています。これにより、オーナーが修繕に対応してくれない場合、賃借人が独自で修繕をして、その費用をオーナーに請求することができるようになります。

ただし、条件があります。一つ目は賃借人が修繕の必要性を連絡をオーナーに連絡し、オーナーが修繕の必要性を知ったのに、相当期間修繕をしない場合。
二つ目は差し迫った事情がある場合。
そして、三つ目は賃借人の責任で修繕が必要になった場合。たとえば、お酒に酔って壁を壊してしまったなどの理由で、修繕が必要になってもオーナーはその義務を負わないということが明文化されています。

改正民法施行後はこの修繕に関する規定でトラブルが起きる可能性もあります。たとえば、修繕が発生した経緯や修繕の度合いなどがわからない状態なのに、独自に賃借人が修繕をしてしまい、その費用をオーナーに請求してしまいトラブルになるなどです。
ですので、賃借人から修繕の依頼があれば速やかに対応すべきでしょう。管理を管理会社に依頼している場合では、入居者から修繕の依頼があれば、速やかに対応するということを伝えた方がいいでしょう。再三、言っても対応してくれなければ、管理会社を変更することも必要です。

まとめ

改正民法が施行されれば、多くのオーナーが家賃保証会社を利用するケースが増えると言われています。なぜなら、個人の連帯保証人に関しては限度額を表示しなければなりませんが、法人についてはこれまで通りとされるからです。

一方、敷金返還や原状回復に明確なルールが持ち込まれることによって、客観的で公平な判断をしてくれる管理会社の重要性が高まっています。また、修繕にも迅速に対応してくれなければ、オーナーが不利な立場に立たされることになります。優秀な管理会社の選定がとても重要になるでしょう。

改正民法施行に備えて、これまでの賃貸借契約書は書き換えが必要になります。この契約書の書き換えをやってくれる管理会社もあれば、そうでない管理会社もあるでしょう。これを機会に管理会社との付き合い方を大きく見直す必要があるかも知れません。

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