キャッシュフローシミュレーションに使える不動産投資10の指標まとめ

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不動産投資の指標をどのくらいご存知でしょうか。おそらく「表面利回り」と「実質利回り」の違いはご存知の方も多いかと思います。

ただ、「実質利回りより更に正確な利回りがある」というのは意外と知られていません。不動産投資の判断をするため数々の指標を理解すると、その事実や仕組みが深く理解できます。

この記事では不動産投資の収益性や効率、安全性を測る様々な指標を「なんでそんな計算になるの?」という仕組みも合わせて詳しく解説いたします。

【収益性指標】表面利回り・NOI・実質利回り・FCR

まずは基本編として「表面利回り」「NOI」「実質利回り」「FCR」の4つを解説します。「表面利回り」「実質利回り」の2つは不動産投資の話で頻繁に登場する基本の指標であり、特に「NOI」は、次章以降で解説する指標の要素に関連するため、必ず覚えておきたい指標です。

表面利回り(グロス利回り)

物件価格に対する年間の収益率を表す単純指標です。諸費用を含まない純粋な物件価格に対して、諸費用などを差し引かない想定家賃収入がどのくらいの割合になるかが分かります。

(年間の家賃収入 ÷ 物件価格) × 100 = 表面利回り(%)

NOI(純営業収益)

NOI(Net Operating Income)は、満室時の賃料から運営時の諸費用を差し引いた「純粋な利益額」です。実質利回りなどを計算する際にも使用する基本要素でもあります。算出する際の諸費用が状況により変動する結果指標のため、正確な数字で表すことができません。まず、計算に含める主な運営時の諸費用と計算式をご覧ください。

【運営時の諸費用】
  • 空室損
  • 管理委託手数料
  • 租税公課
  • ハウスクリーニング費用
  • etc…
(年間の家賃収入 - 運営時諸費用) = NOI(円)

諸費用には「ローン返済額」「減価償却費」「リフォーム等の修繕費」は含みません。NOIはその物件の収益性を計るためのもので、ローンを利用するかしないかは物件が持つ収益性とは無関係のため、ローン返済額は計算に含めないのです。

また、減価償却費は実際の金銭的支出を伴わないという理由と、リフォームなどの修繕費は資本的支出といって、その年の経費としてではなく物件価格に含めて減価償却するようになるため、NOIの計算には含めません。

※運営時諸費用に全てを含める「NCF」という指標もありますが、より分かりやすくするためこの記事ではNOIを前提に進めます。

実質利回り(ネット利回り)

上記のNOIをベースにした、より実態に近い利回りが「実質利回り」です。算出時にNOIを使用するため「NOI利回り」と言われることもありますが、計算は先ほどのNOIを理解していれば簡単です。

(NOI ÷ 物件価格) × 100 = 実質利回り(%)

FCR(総収益率)

上記の実質利回りより更に正確な利回りが「FCR(Free & Clearly Return)」です。実質利回りはNOIを物件価格で割っただけですが、FCRでは「物件価格に購入時の諸費用までを含める」ので、「真の利回り」と呼ばれることもあります。購入時の主な諸費用と計算式は以下の通りです。

【購入時の諸費用】
  • 仲介手数料
  • 司法書士手数料
  • 租税公課
  • ローン事務手数料
  • etc…
[NOI ÷ (物件価格 + 購入時の諸費用)] × 100 = FCR(%)

【回収率指標】ROI・CCR

前章で解説したのは「物件の収益性」を計る指標でしたが、ここでは「投資したお金の回収率」を解説します。「結果指標」となるため、事前のキャッシュフローシミュレーションで想定される費用の変動を加味する必要があります。

ROI(投資利益率)

ROI(Return On Investment)は、「投資総額に対する回収率」を計る指標です。正確なROIを算出するためには補足説明が必要となるため、先に計算式をご紹介します。

※計算方法の理解を深めるため式を2段階に分けています。

(NOI - 減価償却費 - ローン返済の利息) - 税金 = 年間キャッシュフロー

[(年間キャッシュフロー + 減価償却費 - ローン返済の元本) ÷ (自己資金 + ローン借入額)] × 100 = ROI (%)

まず、1つ目の式ですが、NOIから経費として申告できるローンの利子分と減価償却費を差し引いて所得税などの税金を計算し、税金を引いた最終的に残るお金を「年間のキャッシュフロー」として算出します。

そして2つ目の式で「ROI」を算出しますが、1つ目の式で引いた減価償却費は、実際にお金の増減が発生していませんので、2つ目の式でその額を足し戻しています。

また、ローン返済の元本は経費にならないものの、ROIの目的は「借入額も含めた投資総額に対する収益率」ですので、年間キャッシュフローから「ローンの元本部分」を引いて計算するのが正確なROIの算出方法になります。

CCR(自己資本回収率)

CCR(Cash On Cash Return)は、自己資金に対する回収率を計る指標です。ROIの計算式では「自己資金+ローン借入額」で割りましたが、CCRでは「自己資金」で割るだけです。ただし、税金を加味するかしないかでCCRは2通りの計算式があります。

[(NOI - ローン返済額) ÷ 自己資金] × 100 = CCR (%)

(NOI - 減価償却費 - ローン返済の利息) - 税金 = 年間キャッシュフロー

[(年間キャッシュフロー + 減価償却費 - ローン返済の元本) ÷ 自己資金] × 100 = CCR (%)

上記2つの違いは、「税金を加味しない収益率」か「税金を加味した収益率」かです。

単に不動産投資で得られる収益性だけに着目するなら、「計算式1」で求められるCCRが投資判断の目安となりますが、確定申告などによる所得税等まで加味した、より正確な収益を計算するなら「計算式2」を使用して算出する必要があります。

つまり、税金のことは後回しにして不動産に投じた自己資金を家賃収入でどのくらい回収できるかという考え方(計算式1)と、不動産投資をしていなければ発生しなかった所得税や住民税までを含めて投資資金の正確な回収率を計算するという考え方(計算式2)に分かれるのです。

どちらを使うかは考え方次第ですが、一般的には計算式1を使うケースが多いようです。

【安全性指標】返済比率・DSCR・LTV

不動産投資を始める際は、「自己資金のみ」「ローン併用」「フルローン」という3つのパターンに分かれます。どれが良いかは投資戦略によるため、正解を一つに絞ることはできませんが、その判断に役立つのが、ここでご紹介する各指標です。

返済比率

返済比率は、家賃収入に対するローン返済額の割合を示す指標です。一般的に50%以下が良いとされていますが、返済比率が低いほどデフォルトリスクの低い賃貸経営ができているということになります。

(ローン返済額 ÷ 満室時の家賃収入) × 100 = 返済比率(%)

「満室時の家賃収入」の代わりに運営時の諸費用を差し引いたNOIで計算する人もいますが、あくまで「ローンと家賃の関係性」を見るのが返済比率ですので、正確には誤りということになります。

DSCR(借入償還余裕率)

DSCR(Debt Service Coverage Ratio)は、ローンの返済額に対して、収益がどの位あるかを示す指標です。算出される数値が高いほど、家賃収入からローンを返済する余裕があり、1.3倍以上が望ましいとされています。

なお、上記までの各指標には「%」や「円」という単位が付きましたが、DSCRでは単位を付けないケースが多く、人によっては算出される数字に「倍」を付けることもあります。

NOI ÷ ローン返済額 = DSCR(倍)

LTV(借入比率)

LTV(Loan to Value)は、物件価格に対するローン借入額の割合です。その投資に対する借入の依存度ですので、その物件に対する投資の安全度とも言えます。

一般的には60~80%までに抑えるのが良いとされていますが、収益性を踏まえた投資戦略による考え方の違い次第で、どこを基準とするかは人によって異なります。

[ローンの借入額 ÷ (物件価格 + 購入時の諸費用)] × 100 = LTV(%)

【その他】イールドギャップ

イールドギャップは、「利回りとローン金利の差」のことです。考え方は様々ですが、算出される数値が高いほど手元に多くお金が残る可能性が高く、かつ数値が高いほど投資対象としては割安な物件という見方もできます。

イールドギャップの計算式は「利回り-ローン金利」と非常に単純ですが、実はこの単純計算では不動産投資の判断として使うには適切な指標とは言えず、正確には以下の計算が必要になります。

FCR - 年間ローン返済額 ÷ ローン残高 = イールドギャップ(%)

イールドギャップは「投資の旨味」を判断する指標のため、計算する時の利回りは「表面利回り」や「実質利回り」ではなく、純粋に手元に残った利益から利回りを考える「FCR」を基にしなければいけません。

また、ローン金利も単純に適用金利を使って計算すると実際の利益とはかけ離れた数字になるため、年間当たりの返済割合で考える「年間ローン返済額 ÷ ローン残高」という計算が必要になります。なお、「年間ローン返済額 ÷ ローン残高」の部分は「K%(ローン定数)」と言います。

一般的なコラムではイールドギャップは2%以上が良いとされていますが、不動産は時が経つにつれて収入が減るものですし、ローンも返済を続けるうちにK%が変化します。

よって、イールドギャップを事前にシミュレーションするのであれば、「時間経過」までを加味して計算するのが望ましいと言えるでしょう。

まとめ

今回は「不動産投資のキャッシュフローシミュレーションで使える10の指標」を解説しましたが、最後に注意点を2つほどお話いたします。

1つ目は、NOIを算出する際の諸費用に「仲介手数料(広告費)」を含むかどうかです。本来は恒常的な支出とならない仲介手数料は含まず計算するのが正確なNOIの計算方法です。実際には「物件運営中の本当の利益を知りたい」ということで、仲介手数料や税金まで全部含むケースもあるため、どちらも間違いではありません。

そして2つ目は、ROIとCCR、ROE、ROAなどを混同している記事をよく見かけるということです。大まかな認識を持つ程度なら問題ありませんが、不動産投資に関する記事を読む際に上記4つの指標を混同して考えると、誤った認識のままになってしまう可能性もあるため、正確にはそれぞれの計算式や指標の定義も違うことを知っておいた方が良いでしょう。

※話がややこしくなるため、当記事ではROEとROAの解説を省略しました。

このように、各指標の本来の意味や計算式に含める要素は間違って認識されている場合が少なくないのですが、重要なのは不動産投資の黒字を継続できるかどうかですので、どの指標も使いやすいようにアレンジしたところで何の問題もありません。

各指標から見えてくる収益性等は非常に大事なものではありますが、あまり数字にこだわりすぎると、買える物件が見つかっても指標の数値が合わないという理由で買い逃す可能性もありますので、これらはあくまで一つの目安や基準値として見て、数値だけにこだわり過ぎない事も大切です。

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