水利権にまつわる事件・事例。購入した古民家に引かれた水を使うのは違法なのか? | 不動産投資を考えるメディア

水利権にまつわる事件・事例。購入した古民家に引かれた水を使うのは違法なのか?

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田舎の水路

田舎や山に訪れた際、田んぼや古民家などに伸びる黒いウレタンチューブから水が延々と出ている光景を見たことがある方は多いのではないでしょうか。実は、それらが必ずしも許可を得て水を引いているとは限らず、かといって違法とも言い難い”グレーゾーン”である事を知る人はそう多くはありません。

昨今では古民家などの不動産を買い取り、田舎生活を楽しもうという方も増えていますが、もしかすると元々家に引かれていた水が違法と判断されることがあるかもしれないのです。今回は筆者の体験談も踏まえつつ、あまり知られていない田舎の「水」の権利について解説させていただきます。

水利権とは?

川の水を使用するにあたって「水利権(すいりけん)」というものが存在します。簡単に一言で説明するなら、「誰にも文句を言われずに山や川の水を使用する権利」といったところになります。川や沢の水を使用するにあたっては色々な目的が考えられますが、主には以下のように分けられます。

  • 生活用水
  • 発電や工業として使用する
  • ダムの貯水目的
  • 農業用水
  • その他

上記を目的とした河川の水を使用するにあたっての権利関係ですが、正確には使用目的により細かく分かれるものの、さしあたって「慣行水利権」と「許可水利権」の2つを覚えておけば問題ありません。

「慣行水利権」

農業用水や生活用水として使用するために、古い慣習によって社会的に認められてきた権利です。現在の河川法による許可を正式に受けていませんが、古くからの水の使用や支配が社会的に認められてきたものは、現在も取水許可を得ていると見なされます。

「許可水利権」

工業、発電、上下水道として使用する行政による許可が必要な権利です。河川法23条等により農業用水利権、工業用水利権、水道用水利権など細かく分類されますが、一般的にはこれらを総称として許可水利権と呼ばれます。

このように川の水を使うにあたっては、何らかの許可が必要になります。よって、「田舎に家を建てて川の水で生活しよう!」と勝手に川から建物に水を引くことは違法となる可能性があるのです。

実際にあった!筆者の聞いた水の争い

水利権というもの自体が初耳という方は意外と多いのですが、ここで筆者が実際に聞いた話をご紹介します。

とある地方の山中。母の生家でもあり、現在は親戚が住む古民家に法事の為に訪れました。親戚一同に挨拶を交わして一旦落ち着いたかと思った矢先、親戚のお爺さんが野菜を持っていけと私を庭に誘います。庭には昔使っていたという台所の跡(昔は外で料理をしていた)があり、古いシンクには家の裏から伸ばされてきた黒いウレタンチューブが固定され、絶え間なく水が出ています。

そこで「この水は誰かの許可を得て取水しているのだろうか」と変な疑問が湧き、親戚のお爺さんに尋ねたところ「そんなもの昔からあるから分からん」とのこと。続けてお爺さんは物悲し気にこんな話も。

「まだこの辺りに家がたくさんあった頃に、水で随分揉めた」
「違うとこだと、水の奪い合いで人が殺されたりした」
「あそこの家も昔から人が住んでて川の水使っとる」
「みんな分かってて水使ってんだ。許可があるかどうかで誰も文句なんか言わん」

筆者も色々と調べてみたところ、確かに昔は山の上に住む人ほど水の恩恵が得られ、山の下に住む人ほど水量が少なくなるという不公平があったため、田んぼに引くための水や生活で使う水を川から引くにあたって争いがよく起きたそうです。まるで農民一揆のような村同士の争いもあり、死者が出るようなこともあったとのこと。

今では地方の山間部や村の人も少なくなり、表立った争いが起こることも少ないようですが、自然に流れている川の水を使うというのは、その土地に住む人にとっては少々シビアな面もあるのだという知ることができました。

水利権にまつわる事件、事例

既にお気付きの方もいらっしゃるかと思いますが、水利権という言葉はあっても、誰から何の許可も得ずに川の水を使っているという田舎の家は多く、さほど珍しい事ではありません。おそらく慣行水利権に基づいて使用許可を得たと見なされているのだろうと考えられます。

但し、生活用水としての範囲を超えて明らかに営利を目的とした使用をする場合や、田舎の古民家を購入する際の水利権については注意が必要です。実際にあった過去の事件や事例を見てみましょう。

水利権の売買が違法とされたケース

福岡県春日市、並びに那珂川町で作られた春日那珂川水道企業団は、企業団発足時から給水人口の増加による水源確保のために、那珂川を始めとした河川流域の団体と契約書等を交わした上で、6億円以上の代金を支払って水利権を購入していました。

河川法では河川管理者(この場合は都道府県)の許可なく水利権を譲渡したり、取水することなどは認められていません。つまり、春日市を中心として作られた水道企業団は河川の水を公金を使って違法に売買していたということが分かり問題となりました。

■毎日新聞「春日那珂川水道企業団 河川水利権を違法売買」
https://mainichi.jp/articles/20160320/k00/00m/040/111000c

これは個人が関わる事件ではありませんが、水利権は売買ができないということが分かる事例です。個人の事に代えて言うのであれば、水利権を得て池などに水を溜め、もしくは別の場所に流すなどした場合、その水を使う権利を金銭で売買してはいけないことになります。

所有した家の敷地に湧水が…水利権はいかに?

続いてはインターネット上で相談されている事例です。相談内容は知人と共同所有する山の私有地にある湧水の水利権についてです。

その湧水は村の2軒の家も利用しており、自分たちも生活水として利用しているとのこと。この湧水の水利権が自分にあるのか、村や県にあるのかと言うことを相談しています。この事例に対して明確な答えを出すことは難しく、第三者による回答も「恐らく2軒の家に水利権がある」としています。継続してその水を利用しているという事実があれば、土地の所有者にも既に水を使っている世帯にも水利権が認められる可能性が高いでしょう。

よって、溜め池や別の水路を作ったりして水を独占的に使用したり、水を使用する人に使用料などを請求することは違法になる可能性があります。しかし、その権利の保有者が明確になっている場合、別途許可が必要になる可能性もあり、一概にどうすべきとは言えない事例です。

■教えてgoo「取水権」
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/1231966.html

田舎に買った家の近くに川が…。どこに許可申請すべき?

さて最後となりましたが、今回のテーマでもある「購入した古民家に引かれた水を使うことは違法?」という話に戻って考えてみましょう。

筆者が実際に聞いた話にもありました通り、水利権が云々という話以前に「昔から使ってる」という事実を基に継続して川から家屋に水を引く家は多く存在し、その状態のままの家が売りに出されていることもあります。

ではもし、川から水が引かれた田舎の古民家を購入する場合、またはこれから購入する家に川の水を引くために、その使用許可はどこに確認するべきでしょうか。

川は「一級河川」「二級河川」「準用河川」「普通河川」という4つに分けられますので、まずは購入した家に引かれる水の源泉となる川がどれにあたるかを確認しましょう。その上で、その川の「河川管理者」が誰かを確認する必要がありますが、一般的には以下のように区分されます。

一級河川
国土交通省
二級河川
都道府県
準用河川
市町村
普通河川
市町村の他、組合や関係事務所

「田舎の古民家を購入して…」という前提であれば、恐らく河川法の適用を受けない普通河川であることが考えられますので、その地域の組合や市町村に確認することが適切な方法となります。

ただ実際には、そういった川の水の許可申請や確認をしないままに水を使用する世帯もあります。それまでタダで使えていたのに使用料を請求されたり、入りたくもない組合に加入させられたりということもあり得ます。

この辺りの問題は「地元の慣例」という色が強い地域もあって判断が難しいというのが正直なところですので、自己責任でと言う他ないのが現状です。とはいえ、無駄な争いごとに発展しないような円満な話ができるよう下準備をしておくに越したことはないでしょう。

まとめ

一般的な宅地の水事情については、上下水道を引いてくるだけであるため問題になることはほとんどありません。一方で、もし山や田舎の広い土地を購入して渓流釣りの営業をしたり、米農家などを始めるなどとなると川の水は大変重要なものになります。

都心回帰、東京一極集中などと言われる中「Iターン」という言葉もあります。Iターン希望者は10年前と比べて倍増したというデータもある中、都会から田舎に移り住もうという方はこういった水の問題でつまらない争いや揉め事に巻き込まれないような配慮が求められます。

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