相続税対策としてのアパート経営と節税方法 | 不動産投資を考えるメディア

相続税対策としてのアパート経営と節税方法

不動産投資家の多くは相続税はまだまだ自分の問題だと認識できていない場合が多いです。「サラリーマンの自分には相続税なんて課税されない」とすら考えている人もいるかもしれません。しかし、相続税は別名「資産税」とも呼ばれています。「資産」を所有している人に課税される税金なのです。不動産という資産を持つからには資産に課税される相続税の問題は避けて通ることができません。

何の対策もしなければ、せっかく老後のため家族の将来の幸せのためにコツコツと蓄えてきた大切な資産が税金として徴収されてしまうのです。そのようなことにならないためには一体どうすればいいのでしょうか。今回は「不動産投資家のための相続税対策」をご紹介いたします。

相続税対策としてのアパート経営

相続税対策としてのアパート経営

近年サラリーマンの方や定年を迎えた方などを中心に、相続税対策としてアパート経営を始める人が増えてきています。目的は副業としての収入や定年後の安定収入を得る為など人によって様々ですが、よく聞く目的の一つに相続税対策があります。「アパートを建てて相続税を減らせます」など、テレビやインターネット広告でもよく見かけますが、一体どういった仕組みで相続税を減らせるのでしょうか。

遺族が資産を相続する場合、現金で相続すると相続税に対する減額効果がなく相続税は100%かかってしまいます。しかし土地や建物などの不動産の形で相続した場合には相続税は不動産の価値により決定され、またアパートなど賃貸物件の形にした場合にはさらに相続税を下げることが出来ます。

現金で相続しても無駄に税金で取られてしまうのであれば、「相続税が減額できて相続後の家賃収入も得られるアパート経営を」と人気に拍車がかかり、各種不動産投資セミナーなどでも頻繁に講義が開催されています。

相続税が下がるポイントは主に以下の3つです。

  • 小規模住宅用地の減額の特例
  • 貸家建付地での土地の評価額の低下
  • 建物の評価額の低下

これらを組み合わせることで最大30%程度も相続税評価額を下げることができ、相続税を大幅に減額することが可能となります。

次項ではこれら3つの相続税評価額の減額についてご説明しますが、これだけを聞くとアパート経営で相続税対策を行うのはメリットだけのように感じてしまいます。逆に不動産経営に伴うデメリットもありますので、併せてご説明します。

一棟アパート・マンションを所有する投資家は危ない!?

一棟アパート・マンションを所有する投資家は危ない!?

相続税とは、相続財産に課税される税金です。相続財産とは、被相続人(死亡した人)が所有していた財産(権利義務)のことで、相続人(財産を受け継ぐ人)が税金を納税します。不動産投資家は被相続人の立場なので、自分が死んだら関係がないと考えるかもしれませんが、自分の大切なパートナーや子どもが自分の残した財産によって苦しんだり、悩んだりするのを見たくないと思う人の方が多いのではないでしょうか。

実は、2015年1月1日から相続税が実質的に増税になっています。実質的に増税というのは、相続税の基礎控除額が減ったからなのです。2015年1月1日以前の基礎控除額は5000万円。これに法定相続人の数に1000万円を掛けた金額を加算します。

たとえば、日本の標準世帯である夫婦に子ども2人の計4人世帯の場合、法定相続人は3人になります。5000万円(基礎控除額)+3000万円(法定相続人3人×1000万円)で合計すると8000万円になります。つまり、相続財産が8000万円までは、基礎控除内に収まるので課税されないということになります。

しかし、2015年1月1日以降は、3000万円+法定相続人の数に600万円を掛けたものが、控除額になります。前述した事例と同じように法定相続人を3人と考えて計算してみます。そうすると3000万円+1800万円(法定相続人3人×600万円)で4800万円にしかならない計算になります。以前と比べて、基礎控除額は約4割も減っていることになるのです。

ここで多くの人は「ウチにはそんなにお金はないから、相続税なんて関係がない」と考える人がほとんどなのではないでしょうか?しかし不動産投資家は収益物件を所有しています。また、収益物件に加えて自宅を所有している人も少なくないのではないでしょうか。実際に相続税の申告で最も多い相続財産は不動産なのです。

平成26年度の相続税申告状況を見ると、相続財産の内訳は次の通りとなります。

  1. 土地・家屋(46.9%)
  2. 現預金等(26.6%)
  3. 有価証券(15.3%)
  4. その他(11.2%)

相続財産のほとんどが土地家屋の不動産で占められているのです。

さらに一棟ものの収益不動産を複数所有しているメガ大家さんは、税率まで上がってしまう可能性があるのです。今回の相続税の改正で3億円を超える相続財産を持っている人は、税率自体が上がります。しかも、相続人一人当たり6億円を超える財産を相続する場合は最高税率の55%が課税されることになるのです。

一般的に土地の相続税財産評価額は、路線価によって求められます。路線価とは、街路に接している標準的な土地の1㎡当たりの価格を表示したものをいます。地価の高い東京23区内に不動産を所有している場合、相続税が課税されることが多いと言われています。もちろん、都内に物件を持っていない場合でも要注意です。

たとえば、神奈川県などは横浜や川崎などの中心区域、東京都大田区や世田谷区に隣接した中原区、高津区などは、地価が高く相続税が発生する可能性があります。同じように埼玉県も浦和区や大宮区などの駅に近い中心街では路線価が高く相続税が課税される可能性が非常に高いでしょう。

同じように名古屋、大阪、京都、神戸などの関西圏でも相続税が発生する可能性があります。人気のあるエリアや交通の便がいいエリアに物件があるだけで、基礎控除が低くなったので相続税が課税される可能性があるのです。今後、相続税についてよく勉強しないとせっかくの資産をうまく残すことは難しいと思います。

不動産の評価を減らして節税する

不動産の評価を減らして節税する

仮に相続税が課税されるということになれば、どうすればいいのでしょうか?相続税は原則、現金で支払うということが決められています。相続税を納税するのは不動産を所有している不動産投資家ではなく、自分のパートナーや子どもになります。彼らに資産を残すこともできても現金を残すことができなければ、納税をすることはできません。

ところが、不動産投資家の多くは自分の財産を不動産で所有している人がほとんどだと思います。このため相続税が課税された場合、不動産を売却するなどして納税資金を調達しなければなりません。所有している物件を運良く売ることができればまだいい方です。納税をしなければいけない時期までに売れなかったり、売れたとしても納税額に足りなかったりする場合もあります。このような状況をなるべく避けるためには、どうすればいいのでしょうか?

最も簡単な解決方法は、相続税が課税されないようにすればいいのです。現金では難しいのですが、不動産であれば資産の評価を下げることができます。不動産は現金と異なり、その不動産が活用されている方法や土地の形状などによって、財産の評価額が大きく変化するのです。相続税の財産評価は土地の場合は、前述しましたが路線価で行います。しかし、ちょっと工夫するだけで財産評価を軽減する方法があります。

たとえば、2つの道路に面している土地があるとしましょう。税法のルールでは高い方の路線価で土地の評価するということが決められています。仮に正面道路(路線価が高い方の道路)が1㎡あたり200万円、裏面道路(路線価が低い方の道路)が50万円で、土地の広さが300㎡だった場合を考えてみましょう。計算式は以下の通りです。

土地の評価額 = 路線価 × 道路に面している状況や形状による加減(補正率)× 土地の面積

土地にかかる補正率を無視して計算するとします。正面道路で計算する場合は、土地の評価額は6億円になります。ところが300㎡の土地を150㎡で分けて、相続人がそれぞれその土地を相続するという工夫をするとしましょう。そうすると、正面道路に面した土地は3億円になりますが、裏面道路に面した土地は50万円×150㎡で7500万円となります。単に土地を分けただけですが、2億2500万円の評価減額となります。

そのほかにも旗竿地やがけ地など、そもそも土地の形状に問題がある場合もあります。土地の形状に問題がある場合は、土地の評価を下げることができます。一方、建物の評価額は貸家の場合、固定資産税評価額を元に算出されます。建物の評価額は新築時の建築価格の6〜7割になっています。

また、不動産投資家の多くが収益物件として土地にアパートやマンションが建った状態で所有していると思います。もちろん入居者も住んでいるでしょう。そのような土地は「貸家建付地」として土地の評価が下がります。アパートやマンションの入居者の利用した権利の分を差し引いて評価されます。差し引きされる分は、借地権割合と借家権割合(30%)を乗じた割合が差し引かれます。計算式は以下の通りです。

貸家建付地の評価額=自用地の評価額×(1−借地権割合×借家権割合)

相続税評価額の計算上の借地権割合は、地域により異なりますがだいたい60%から70%の地域が多くなっています。借家権の割合は、全国共通で30%となっています。このため更地の評価に比べて、約18%(借地権割合60%)から21%(借地権割合70%)ぐらい評価が下がるというわけです。ですから土地をたくさん持っている地主さんは、自分の土地にアパートを建てて節税をするのです。アパートの建物は貸家として、借家権割合が30%が差し引かれます。計算式は以下の通りです。

貸家の評価額 = 固定資産税評価額×(1-借家権割合)

もともと建物の評価額は新築時の建築代金の6〜7割で計算されて、さらに貸家の評価減があります。これを計算すると貸家の相続税評価額は建築代金の50%ぐらいになると言われています。

たとえば、更地の土地の評価が1億円の土地に建物の建築費用を1億円かけてアパートを建てたなら、その時点で評価額は土地の評価額が貸家建付地の評価で7900万円(借地権割合70%の場合)。貸家の評価額約5000万円となります。このように不動産の評価を減額する軽減措置があります。

小規模宅地の特例で節税する

小規模宅地の特例で節税する

小規模宅地等の特例という財産評価の軽減措置があります。これはマイホームや居住用建物、店舗や工場などの事業用建物が建てられている土地に対して、最大8割の評価減ができるという仕組みのものです。この軽減措置を活用すれば、たとえば1億円の評価を受けている土地でも最大で2000万円へ評価を減額することができます。ただし、不動産投資で所有している収益物件はマイホームと異なり、財産評価の軽減措置の範囲が決められています。

相続した土地を相続税の申告期限まで保有し、かつ賃貸経営を引き続き営むことを条件に200㎡までの部分については50%減額することができます。複数の不動産を持っている場合や自宅と収益不動産で小規模宅地等の特例を使う場合は、適用できる範囲に制限があるので注意をしてください。

こうした財産評価の軽減措置を活用して不動産の評価を下げることができれば、相続税の課税対象とならずに済む可能性が非常に高まります。また、小規模宅地等の特例は路線価が高ければ高いほど節税効果が高くなります。つまり、地方や郊外の地価が低いところの収益物件を売却して、首都圏や地方都市圏に新しい収益物件を購入すれば、地方や郊外で申告するよりも節税効果が高いと言われています。

ただし、小規模宅地等の特例を利用するためには特例が適用される条件をクリアすることが必要になります。そもそも特例を適用するためには、相続税の課税対象者でなくても相続税の申告が必要になります。申告をするためには、申告の準備が必要になります。相続の申告は相続が発生してから、つまり被相続人が亡くなった日から10カ月後と決められています。くれぐれも申告が間に合わず適用できないなんてことのないようにしましょう。

アパート経営の相続税対策のメリット

アパート経営の相続税対策のメリット

アパート経営を行うことで相続税評価額を下げるには、以下の3つの項目が重要となります。

小規模住宅用地の減額の特例

小規模な住宅用地の場合に建物の経っている土地の価値を減額する特例です。戸建ての場合は一戸あたり200m2までの土地が減額対象となりますが、アパートなど賃貸住宅の場合には「200m2 × 住戸数」が減額対象となるため、非常に広範囲の土地が減額対象に指定できます。この特例により、土地の評価額が50%減額されます。

貸家建付地での土地の評価額の低下

アパートが立っている土地は「貸家建付地」とみなされ、土地の借地権割合によって評価額が決まります。
貸家建付地の評価額 = 自用地の評価額×(1-借地権割合(30〜90%)×借家権割合)
評価額はこの計算式により決定され、おおむね評価額は2割程度減らせる見込みがあります。

建物の評価額の低下

アパートの建物の評価額は、その建物の取得金額ではなく固定資産税評価額で決定されます。固定資産税評価額は一般的には取得金額の60%程度です。さらにアパートの価値は固定資産税評価額から借家権割合(30%)を減額した金額として扱われますので、元のアパートの取得金額に対して、4割減+3割減の2つの減額要素が組み合わされ、大きな評価額の減額につながります。

また、アパート購入時にローン等で借金をしている場合には建物の評価額は借金総額を下回りますので、借金はマイナス資産として計上されその差額分が相続税評価額よりマイナスされますので、さらなる相続税額の減額が見込めます。

アパート経営に伴うデメリット

アパート経営に伴うデメリット

相続税対策としてのアパート経営にはデメリットも存在します。まず一番大事なのが利回りです。これは簡単にいえばアパート経営による営業利益の割合のことで、家賃収入の総額から月々のローンやアパートの修繕費、管理費など必要経費を引いた金額を実質利回りと呼びます。

実質利回りは家賃相場やアパートの築年数などにより変動しますが、一般的には10%前後の実質利回りが必要とされています。この実質利回りの分を相続税支払いに充てるわけですから、これが確保されていないアパートを相続した場合は非常に苦しい経営となってしまいます。

その他にもアパート経営には以下のような不安定要因が存在します。

家賃収入による所得税・住民税の増加

所得税・住民税もあらかじめ計算に入れておかないと、相続税支払いに回す貯蓄分が減ってしまいます。

修繕費の増加

築年数の多いアパートほど修繕費が年々増加して実質利回りを圧迫していきます。

空家率の増加

入居者が減ることによる家賃収入が減少するリスクが常につきまといます。

アパート管理業務

副業としてアパート経営を行う場合は本業以外に負担が増加してしまいます。人を雇ったり不動産投資会社に運営を任せることもできますが、その場合は別途経費が発生します。

アパート経営をするうえで以上のようなリスクは付き物です。相続性対策としてアパートを購入する場合には利回りや築年数などにしっかり気をつけておかないと、相続した後で思わぬ落とし穴に落ちることとなります。結果的に相続税支払いのためにアパートを手放さざるをえなくなりますので、十分注意してアパートを選定する必要があります。

まとめ

相続税というと自分には関係がないと考えがちですが、相続税は言わば資産に課税される税金です。資産増やし、資産から収入を得る不動産投資家にとっては見逃せない税金です。

しかし、きちんと節税対策を取れば問題はありません。相続税の基礎控除と財産評価の軽減措置を組み合わせることによって相続税を大幅に節税することができます。ただし、相続税の節税対策はどれも時間がかかるものですので早めに手を打っておくことが必要です。自分が死んで相続が始まってからでは、節税方法も限られてしまうのです。

少なくとも現状の資産規模で相続税がかかるか、かからないかということは事前に調べておいた方がいいでしょう。知らない間に自分の資産が増えていて、とてつもなく大きな相続税が課税されることもあります。相続税の重さを表現した言葉に「相続は3代続けば、どんなお金持ちでも財産は残らない」という言葉があります。

今後、日本政府は世界の税制に習って資産税の課税を強めていくことでしょう。「持てるものから持たざるものへ」資産税を重くすることで資産の移転を進めています。もちろん、サラリーマンの不動産投資家も資産家です。世の中の資産家と同じように、防衛策をきちんと講じなければ手元に残らなくなるという時代なのです。

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