夢洲(ゆめしま)再開発と「ニシ」の不動産投資事情

かつて「負の遺産」とまで言われた夢洲(ゆめしま)ですが、大阪万博の誘致が決定した今、周辺の開発が急速に進んでいます。そうなると、気になるのが関西圏の不動産市場、特に夢洲のある大阪市の西部です。関西の人々が大阪市の北部を「キタ」、また南部を「ミナミ」と愛称で呼んでいるのと同様、西部にある夢洲周辺を「ニシ」と呼ぶ人が増えてきました。今回はこの「ニシ」に不動産市場を牽引する可能性の有無と賃貸経営への影響について考察しました。

夢洲の再開発計画概要

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■出典:夢洲まちづくり構想(案)

大阪市が平成29年2月に発表した「夢洲まちづくり構想(案)」によると、大阪のさらなる成長のためには、夢洲を臨海部のポテンシャルと位置づけ、国内外から人・モノ・投資を呼び込むための取り組むことが必要だと言われています。それが2025年に開催されるが大阪万博です。

大阪万博を成功に収め、大阪の都市力をさらに向上させれば、産業は活性化し新たな雇用の創設や地価上昇が見込めます。また、大阪万博が終わった後も、広大な土地を生かして国際コンテナの物流拠点とし、夢洲に隣接する舞洲や咲洲との連携によって新たな国際観光拠点へと成長させるとしています。

大阪万博の開催概要

大阪万博は、大阪市此花区にある夢洲で、2025年5月3日~11月3日の185日間に渡って開催され、入場者想定数は約2,800万人、経済波及効果は約2兆円を見込んでいます。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」、サブテーマは「多様で心身ともに健康な生き方・持続可能な社会・経済システム」となっており、広がる貧困やジェンダー問題など17の課題についてそれぞれ取り組んでいくことになっています。

■参考:経済産業省 大阪・関西万博

夢洲まちづくり構想(案)について

夢洲の周辺には、すでにユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)や水族館などの観光資源や、野球場、天保山マーケットプレイスなどの十分な集客施設があります。しかし、大阪万博を成功に導くには、夢洲までのアクセス強化を図ることが重要な課題の1つと言えます。

現在、夢洲へは咲洲にあるコスモスクエア駅から路線バスに乗って行くしか方法がありません。そのため、鉄道各社が今後は既存路線の延伸の可能映画あると発表しています。大阪メトロが、夢洲に新駅を建設し、咲洲と大阪市内を結ぶ中央線を夢洲まで延伸するのを筆頭に、近畿日本鉄道も、夢洲から奈良間の直通電車の開発を検討しています。他にも、JR西日本が桜島線の延伸を視野に入れるなど交通インフラが整いつつあります。

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■出典:夢洲まちづくり構想(案) ~新たな国際観光拠点の形成に向けて~ (概要版)

交通インフラが整備されれば、万博が終わった後のIR誘致によってアジア圏有数の国際的エンターテイメントの拠点として機能する可能性があります。以前「風呂敷を広げ過ぎた」といっていた大阪市ですが、今回は大阪万博をキッカケに、夢洲一体は大きく生まれ変わることが期待できるでしょう。

日本経済新聞によると、オリックスがアメリカのMGMと組んでIR運営を検討している他、アメリカシーザーズ・エンターテイメントが健康をテーマにしたIR施設を掲げるなど、各国のカジノ大手が夢洲に商機を見込んでいるといいます。元々ある集客施設に加えて、IRも誘致できれば、大阪万博が終わった後でも関西圏には大きな経済効果が続くと予想されます。

夢洲再開発決定による周辺地域の変化

夢洲再開発決定によってまず動き出すのは、先に述べた交通インフラの整備です。鉄道各社の延伸が相次ぐだけではなく、交通量の増加を見越して現在の橋を4車線から6車線に拡幅する計画があります。大阪の人気観光スポット「海遊館」が現在の大阪市港区から、夢洲へ移転することを検討していますし、アーク不動産株式会社もホテルや分譲マンション、商業施設が入る大型総合施設の建設を計画しています。

また、大阪万博の開催期間は約6ヶ月のため経済効果も一過性のものと言われていますが、その後にIRという流れになれば、来阪する観光客やビジネス目的で長期滞在する客が増えます。そうなれば、大阪市内だけでは客の受け皿が不足し、周辺の京都や神戸、奈良もホテルの需要が高まるでしょう。

現に、宿泊施設が日本一少ないと言われている奈良では、ホテルの客室数が平成28年には3,056室だったのに対し、平成29年では3,833室と、25.4%も増加しています。大阪万博は、「ニシ」エリアだけではなく、関西全体の経済効果が波及するものとみられています。

■参考:奈良県観光局 平成29年 奈良県宿泊統計調査結果の概要

大阪市の不動産価格推移

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■出典:土地DATA 大阪市の公示地価・基準地価・坪単価

2018年に大阪万博の開催が決まってから、大阪市の土地の不動産取引価格は、前年の2017年度より22.02%も上昇しています。

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■出典:近鉄レインズ

また、近鉄レインズによる中古マンションの成約率を見ても、18年度の中古マンション成約率は17,840件で前年の3.4%増となっており、近畿レインズ創設以来最大の件数です。不動産取引価格は大阪万博開催が決定となる前は横ばいでしたが、中古マンションの成約率に至っては、取引が活発になっていると言えるでしょう。大阪万博が開催され、IR誘致ともなると、大阪市の不動産価格はさらに上昇する可能性もあります。

賃料相場に変化は?

総合不動産サービス大手JLLが分析したレポートによると、大阪Aグレードオフィスの平均賃料は、2018年9月末時点で月額坪あたり20,267円、空室率は1.1%、賃料上昇率は前年同期比より2桁増の11%を記録しているとあります。

また、三井住友トラスト基礎研究所の「マンション賃料インデックス」によると、大阪市の賃料は四半期連続で前年比プラスとなっています。大阪市の不動産取引価格の上昇、近畿レインズ創設以来となった中古マンション成約率の大幅増を考えると、大阪万博に向けて今後も賃料相場の上昇も期待できるでしょう。

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■出典:三井住友トラスト基礎研究所

今後の夢洲再開発の予定

これまでお伝えしてきた通り、2025年に万博が開催された後、大阪市と大阪府はIR統合型リゾートの誘致を進めています。夢洲まちづくり構想(案)によれば、万博閉会後もIRの運営が始まることで、年間1.1兆円の経済効果があると試算しています。

また、年間13.2万人の雇用が生まれるともしています。そのためには、交通インフラの整備が必須事項。各鉄道会社はIR開業までの中期経営計画を進めており、大阪メトログループの2018~2024年度 中期経営計画では、大阪メトロ中央線を夢洲まで延伸することを軸に、都市開発重点エリアとして夢洲開発を目指すと明記しています。また、関西国際空港から夢洲を訪れる外国人の増加が見込まれているため、夢洲を世界第一級レベルのMICE拠点にすることなども盛り込んでいます。

夢洲再開発で賃貸需要はどうなる?

りそな総合研究所の『大阪万博の開催による経済波及効果』によると、大阪万博開催による関西の経済波及効果は1.3兆円と予測されています。万博開催とIR誘致によってインバウンドの増加を見込むことはできますが、それ以上に、雇用が増えることで人口の増加も予測されます。

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■出典:りそな総合研究所

総務省がおこなった平成27年国勢調査人口等基本集計によると、大阪市の一世帯あたりの人員は減少しているものの、一般世帯数は前回調査の平成22年から3.1%増加しています。また、大阪府から見た大阪市の人口は、府内のどの地域よりも突出して増加しています。

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■出典:総務省 平成27年国勢調査人口等基本集計

また、大阪市の資料によると、市外から市内へ転入してきた人が多く、特に20才前半から30代前半の男女が市内に転入していることがわかります。

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■出典:第7回大阪市人口移動要因調査(平成25年度)

市内へ転入する理由は仕事の都合が35.2%と最も多く、その他住宅事情がありますが、いずれも市内へ転入した人の満足度は高くなっています。一番満足度の高いものは通勤・通学の便利さで、次いで買い物の便利さ、ごみ処理のサービス、医療福祉の充実度と続いています。人々の満足度は、万博を起点とした交通インフラの整備と共にさらに高まることが予想されます。

今後、万博とIR誘致によって雇用が増えれば、周辺のエリアは空室リスクが下がります。夢洲周辺の「ニシ」エリアだけではなく、各鉄道会社の延伸が現実のものとなれば、大阪市内の賃貸需要は高まりを見せるでしょう。

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