「西日暮里駅前の再開発事業」賃貸経営への影響は? | 不動産投資を考えるメディア

「西日暮里駅前の再開発事業」賃貸経営への影響は?

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にしにっぽり 西日暮里

東京で注目されている再開発と言えば、品川と田町の間にある再開発エリアが有名です。しかし、ひっそりと計画が進んでいる「西日暮里駅前の再開発事業」も実は荒川区とその周辺地域を活気づけるものになるかもしれません。メディア等でもあまり取り上げられることの少ない再開発事業ですが、荒川区と言えば、住宅の密集による大規模火災や墨田川などの氾濫による水害が心配される地域。この西日暮里駅前の再開発事業はそんな災害対策も兼ねた直径1km に渡る「西日暮里駅周辺地域まちづくり構想」の一部なのです。今回はあまり詳しく解説されない西日暮里駅前の再開発事業の概要や、周辺の不動産市場に影響はあるのか等を調べてみました。

「西日暮里駅周辺地域まちづくり構想」とは?

そもそも「西日暮里駅周辺地域まちづくり構想」や「西日暮里の駅前再開発事業」はそれ単体で動いている事業ではなく、「荒川区都市計画マスタープラン」という荒川区基本構想の一部。荒川区都市計画マスタープランを大雑把に言えば、荒川区で以前から懸念される火災や水害に強い街づくりを目指しながら、下町の雰囲気を残した活気ある街にしようというものですが、そのプランの中に含まれるのが「西日暮里駅周辺地域まちづくり構想」、そして更にその中の具体的な事業に「西日暮里の駅前再開発事業」があるというわけです。なお、西日暮里駅周辺地域まちづくり構想で想定されている対象地域は西日暮里五丁目交差点を中心とした半径500mほどの範囲ですが、西日暮里駅前の再開発とはどのエリアでどんな内容なのか見てみましょう。

西日暮里駅前再開発の概要

西日暮里駅周辺地域まちづくり構想の中でも重要とされているのが、西日暮里駅東側に位置する西日暮里5丁目32~37番、及び38番の一部という区画における再開発事業です。西日暮里駅前の再開発事業は「重点整備地区」として定められ、まちづくり構想の目玉、更には文化交流拠点という位置づけとなっています。JR線、日暮里・舎人ライナー、東京メトロ千代田線の3駅が使えるということもあり、西日暮里駅前再開発には大いに期待の目が向けられています。

再開発の内容

この再開発事業ですが、以下8つの機能を持たせることが計画されています。

「都市機能」
商業面:西日暮里の個性を生かし、生活利便や地域住民の交流の場となる施設の提供
業務面:交通の利便性が高く多様な都市機能が集積している成田空港から直結しているという特性を生かし、国内外に開かれた業務施設の提供
住居面:利便性と安全性の創出による人口増加を図り、様々な年齢層に対応する都市型住宅と住宅環境を整備する
「交通・環境」
歩車分離やバリアフリーなどの整備
「みどり・景観」
・植栽やベンチ、施設壁面や屋上などの緑化を整備し、低炭素社会に対応する環境に配慮した設備を導入
・超高層タワービルの建設によるシンボル性のある景観を作る
「防災」
・災害対応を前提とした機能の導入と基盤づくり、及び施設の整備
・非難スペースや帰宅困難者の為の場所を確保する
「公益」
高齢者や子育ての為の施設や駐輪場といった公益サービス機能を継承しつつ、ホール施設などで文化、芸術の発信機能を整備する
「その他」
既存の住民と新たな住民とのコミュニティを図る場や機能の整備

これらの中でもメディア等でよく取り上げられているのが、超高層タワービルの建設やホールの建設です。ホールについては1500席ほどの大ホールと300~400人ほどを収容できるイベントホールを想定しつつ、商業施設も充実させたい考えのようです。超高層タワービルはまだ具体的な内容が公式に出ていませんが、下記の報道によれば住居やオフィスなどが入った複合施設で最高180mほど高さの建物を想定しているようです。

■日刊建設工業新聞「西日暮里駅前地区再開発(東京都荒川区) 総延べ最大16・2万平米に」
https://www.decn.co.jp/?p=90962

竣工時期、再開発事業者

上記の日刊建設工業新聞による報道ではこの再開発事業の竣工は2025年(平成37年)を目標としている事が分かっており、2015年に行われたプロポーザル方式の事業協力者選定を行った結果、13社の応募があった中から野村不動産株式会社と三菱地所レジデンス株式会社の2社による共同企業体が事業協力者となることが決定しています。

再開発決定で周辺地域への影響はあった?

では、これらの再開発や街づくり構想がキッカケで西日暮里周辺の不動産に何か変化はあったのでしょうか。「過去10年分の路線価と公示地価、2013年以降の賃料相場」のデータを集めましたので、ご紹介いたします。

路線価や公示地価の状況

まず、同再開発地区の路線価について過去7年ほどの推移を見てみましょう。なお、駅に近いほど路線価が高騰するため、ここでは「西日暮里5丁目32、33、35、36、37番の路線価の平均価格」を算出して比較しています。

(路線価)
2008年:360万円
2009年:340万円
2010年:320万円
2011年:320万円
2012年:310万円
2013年:310万円
2014年:320万円
2015年:320万円
2016年:330万円
2017年:350万円
2018年:370万円
(公示地価)※㎡単価
2008年:48.4万円
2009年:45.6万円
2010年:42.6万円
2011年:41.5万円
2012年:41万円
2013年:40.9万円
2014年:データなし
2015年:データなし
2016年:42.1万円
2017年:43.4万円
2018年:46.1万円

西日暮里駅前再開発準備組合が設立されたのが平成26年ですが、その頃から路線価も公示地価も上がり始めているいう見方もできます。ただ、どちらかと言えば東京の不動産バブルの影響による相場変化と言ったほうが近く、この再開発で急激に不動産事情が変わったということはなさそうです。

賃料相場に変化は?

では、家賃という面で変化があったか見てみましょう。以下の表は、東日本不動産流通機構レインズが公表しているデータから「荒川区の賃貸における過去5年間の取引件数と賃料平均、㎡単価」をピックアップしたものです。

期間 件数 賃料 ㎡単価
2013年1~3月 442件 8.4万円 2,595円
2013年4~6月 350件 9.2万円 2,502円
2013年7~9月 426件 8.5万円 2,524円
2013年10~12月 340件 9万円 2,477円
2014年1~3月 488件 8.9万円 2,526円
2014年4~6月 335件 8.9万円 2,540円
2014年7~9月 350件 9.6万円 2,540円
2014年10~12月 338件 9.1万円 2,569円
2015年1~3月 554件 8.8万円 2,580円
2015年4~6月 391件 8.7万円 2,496円
2015年7~9月 396件 8.8万円 2,536円
2015年10~12月 393件 8.6万円 2,536円
2016年1~3月 598件 8.6万円 2,687円
2016年4~6月 439件 8.9万円 2,601円
2016年7~9月 427件 8.8万円 2,613円
2016年10~12月 367件 8.5万円 2,577円
2017年1~3月 583件 8.5万円 2,625円
2017年4~6月 437件 8.9万円 2,591円
2017年7~9月 464件 8.9万円 2,673円
2017年10~12月 439件 8.9万円 2,693円
2018年1~3月 508件 8.8万円 2,606円
2018年4~6月 446件 8.8万円 2,673円

■参考:東日本不動産流通機構レインズ「首都圏賃貸取引動向」
http://www.reins.or.jp/trend/sc/index.html

結論的としては、賃料相場でも2016年以降から徐々に㎡単価の上昇が見られるようになっています。東京の不動産価格相場は2013年以降から堅調に推移してきましたが、家賃というものは必ずしも不動産価格に比例して大きく変化するものではないため、西日暮里駅前再開発事業が決定してからの変化は目に見えてわかるものではありません。

西日暮里駅前再開発事業による周辺地域への期待

ここまでご紹介した不動産価格や賃料相場の過去データでは西日暮里駅前の再開発による影響は明確に見えてきませんでした。では、なぜ再開発が注目されるのかを一般的な再開発の不動産市場への影響という視点で考えてみましょう。

資産価値が上がる

基本的に再開発が決まって活気づくのは、賃貸ではなく売買取引。それは住居に限らず、商業施設やオフィス需要などの増加が見込まれることで、様々な施設が建設され、取引されるためです。その影響は周辺の不動産価格にまで波及することが想定されるため、再開発が決まると不動産価格の相場が高くなるというのが定説となっています。

商業施設の充実により人が増える

商業施設やオフィスが増えることは、そのエリアに訪れる人や住まいを持つ人の増加にも繋がります。事実、2016年に東洋経済新報社が報じた記事によると、2010年度の1日平均乗車数が約2200人だった新船橋駅が、駅周辺の再開発によって2014年に約6100人にまで増加したとしています。人口の増加にはそのエリアのブランド化が重要ですので、それに失敗した場合、必ずしも人が増えるとは言い切れませんが、再開発の期待からなるバイアスにより、多少なりとも人が流れ込むことは十分考えられることです。

■参考:東洋経済ONLINE「首都圏の鉄道、利用者増加駅50・減少駅50」
https://toyokeizai.net/articles/-/128787

賃料も徐々に上がる

人口が増加することは、その周辺における賃貸需要のアップにも繋がります。例えば、再開発した地区でわざわざアパートを建築しようという人はあまりいません。つまり、比較的賃料を高く設定できるマンションが多くなることで、その周辺賃貸物件の平均的な賃料の底上げが期待できるのです。再開発が必ずその周辺地域の景気を活気づけるとは言えませんが、少なくとも以上のような理由から不動産に影響を与える可能性というのは決して無視できるものではないでしょう。

まとめ

今回は西日暮里再開発事業から考える不動産への影響を解説してきました。最後に「必ずしも再開発が好景気を生むとは言い切れない」と申し上げましたが、では賃貸市場で実際に変化が現れる時期はいつなのかと言うと、「再開発が竣工した後」の可能性が高いです。再開発が終了して該当エリアの新たな機能が動き出し、その後、人が集まるようになって初めて賃料相場が上がっていきますので、再開発計画が持ち上がった瞬間に全ての相場が上がっていくということは考えづらいのです。今回の西日暮里駅前の再開発においてもそれは同じで、これから決定する事項が多いため、まだまだ先行き不透明な事業とも言えます。つまり、今後発表される事業計画が明らかになると共に、徐々に不動産市場に変化が現れるだろうと考えられますので、西日暮里周辺で不動産投資を検討される場合は、竣工目標である2025年までの7年間の動きを注視していくと良いかもしれません。

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