さいたま市が進める巨大プロジェクト「⼤宮グランドセントラルステーション化構想」とは?

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■出典:(仮称)GCSプラン骨子案_イメージパース

SUUMOが毎年公表する「住みたい街ランキング」で上位の常連になりつつある埼玉県の「大宮」。今まで各メディアでは大宮駅周辺の再開発事情について何度も取り上げていますが、現在行われている再開発とは比べ物にならないほどの巨大プロジェクトがあるのをご存知でしょうか。

そのプロジェクトの名は「大宮駅グランドセントラルステーション(GCS)化構想」。2025年までに実現するかもしれない非常に大きなプロジェクトであり、完了すれば大宮という街が間違いなく首都圏の顔になる再開発プランが大宮グランドセントラルステーション化構想なのです。

今回はあまり話題にならない大宮グランドセントラルステーション化構想とは何か、大宮が抱える問題から開発完了後のイメージ、そしてプロジェクトの進捗状況までの一部始終をご紹介します。

大宮駅が「大宮グランドセントラルステーション」へ

大宮駅は新幹線を含めた数多くの路線が乗り入れる日本屈指のターミナル駅でありながら、駅周辺の慢性的な渋滞などもあり、都市機能アップデートの停滞が喫緊の課題となっています。そんな課題を解消しつつ地域のポテンシャルを最大限に発揮するため、さいたま市は2008年(平成20年)から「大宮駅周辺地域戦略ビジョン」を検討してきました。

そして今回のテーマである「大宮グランドセントラルステーション化構想」は、大宮駅周辺地域戦略ビジョンにおけるプロジェクトの1つ。東京ドーム約40個分(190ha=190万㎡)のエリアにおける大宮駅周辺地域戦略ビジョンの中で、大宮駅周辺を「ターミナル街区」と位置付けた再開発プロジェクトとなっています。

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■出典:大宮駅グランドセントラルステーション化構想

広範囲プロジェクトの一端でもあることから、昨今ありがちな「近代的な印象にするため駅名を横文字にしただけ」という安易な構想ではないのはお分かりいただけるでしょう。

大宮駅が抱える3つの問題

そんな大宮グランドセントラルステーション化構想では、大宮駅の現状の強みや弱みをまとめています。

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■出典:大宮駅グランドセントラルステーション化構想

特に問題なのが交通面での利便性の悪さ。鉄道間の動線はもちろん、東西間の行き来に時間がかかることや狭隘(きょうあい)道路の多さが駅周辺で渋滞を起こしやすく、街の発展を阻害している印象が否めません。つまり、交通の利便性が悪いことで、ビジネスやインバウンド需要の取り込みに悪影響を及ぼしているのです。

各鉄道への乗換動線が不便すぎる

そんな大宮駅の交通面に関する3つの問題を見てみましょう。

まず1つ目が、大宮駅北側にある「東武鉄道」「JR」「ニューシャトル」の乗り換え動線。下図のように、3路線の乗り換えを行うのに最長5分の徒歩移動が必要です。仮に賃貸物件で「大宮駅徒歩5分」と記載されていたとしても、駅構内の徒歩移動で更に5分が上乗せされるのは無駄以外の何物でもありません。

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■出典:大宮グランドセントラルステーション推進会議

特に朝の5分が通勤に与える影響は大きく、各鉄道は乗客の乗り換え待ちで連鎖的に遅延します。つまり、乗り換え動線の悪さは単に距離の長さの問題ではなく、経済的損失に直結すると考えるべきでしょう。

大宮東口からバス停へが遠すぎる

通勤時の動線の悪さは各鉄道間の乗り換えだけではありません。大宮駅には多くのバス停が設置されていますが、2つ目の問題として「乗降車してから駅までの距離がとにかく長い」のも大宮駅の弱みです。

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上のイメージ図の11番乗り場は特に駅から遠く、駅まで5分以上かかります。更に大宮駅東口にはデッキがありません。よって、雨天時は駅到着まで、そしてバスを待っている間、長く雨にさらされ続けるのです。

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■出典:大宮グランドセントラルステーション推進会議

大宮駅周辺の慢性的な交通渋滞

3つ目の問題として、大宮駅周辺の慢性的な渋滞も解消すべき課題の1つです。特に西口における渋滞は頻繁に目にする光景。渋滞を抜けるために駅周辺の狭隘道路に侵入する車も多く、歩行者への安全面が確保されていない点も問題とされています。

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■出典:大宮グランドセントラルステーション推進会議

上記画像には映っていませんが、実は各道路に並行している一方通行の狭い道路があります。特に混雑する休日や夕方頃は、メインの道路も狭隘道路も渋滞を起こしているのが現状です。

東日本の重要拠点「大宮」が果たすべき役割と5つの機能

住みたい街ランキングでも連続して上位に顔を出すようになった大宮ですが、これらの問題を意外だと感じた方も多いかも知れません。さいたま市はこれら交通上の問題だけでなく、街の発展を阻害する諸問題も把握しています。

そして、これらの解決手段として掲げられたのが「大宮グランドセントラルステーション化構想」。この巨大プロジェクトを現実化するにあたり、さいたま市は大宮の果たすべき役割を以下の3つと位置づけています。

  • 東日本の玄関口として東日本全体の発展を牽引する
  • 東京一極集中による災害リスクの軽減と安心・安全な市民生活の持続させる
  • 地域資源や良質な空間を活かし、新たな働き方やライフスタイルを市域全域に波及させる

大宮グランドセントラルステーション化の目玉「アーバン・パレット整備」

では、上記の役割をどういった手段と方法で実現していくのでしょうか。具体的なプランを見てみましょう。

もともと大宮グランドセントラルステーション化構想は、デッキが無い大宮東口における歩行者ネットワークの再構築を主体としています。そして駅舎内の動線や周辺道路における問題です。

つまり、大宮東口のデッキ化と駅舎や交通広場の整備により歩行者のネットワークを形成し、その他あらゆる利便性を高めるのが大宮グランドセントラルステーション化構想の主力である「アーバン・パレット整備」の目的なのです。

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■出典:さいたま市 「大宮グランドセントラルステーション推進会議」 / さいたま市「大宮駅グランドセントラルステーション化構想」

画像左が大宮駅東口の中央通りから駅舎方面のイメージパース。先ほどご紹介したバス停に並ぶ長蛇の真上に階段やデッキが設置されるかもしれません。

また、画像右上は大宮駅東口の南側上空からデッキを見たイメージ、そして画像右下が大宮駅の東出口から中央通りを見た時のイメージです。

駅前の道路整備は複数案が検討されており、必ずしも上記イメージ図のようになるとは限りません。ただ、イメージパースを見る限りでは、かなり大がかりな開発を検討しているのが分かります。

アーバン・パレットが実現する5つの機能

アーバン・パレット整備も単なる近未来感やデザインだけの構想ではありません。「都市機能」「歩行者ネットワーク」「駅前空間」「道路ネットワーク」「駅機能」という5つの機能を飛躍的に向上させる狙いがあります。

【都市機能の再形成】

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  • ビジネスや商業機能を発展させるため、新幹線で繋がる「地域との連携と交流を強化」
  • IT技術や子育て支援、コレクティブハウスなどを活用した「住宅機能の向上」
  • 都市計画制度を活用した容積率の緩和や道路をまたいだ建築などで「企業誘致を促進」
  • 氷川の杜や見沼田んぼなどの自然環境への配慮、電柱の地下化などによる「都市デザインの再構築」
  • 太陽光発電を始めとした再生可能エネルギーの活用による「環境への配慮」
  • 大規模災害を想定し、頑強な建物や応急活動ができる「屋外スペースの確保」

【歩行者ネットワークの確保】

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  • 街と駅の回遊性と防災性を向上させる「東西通路の整備」
  • 駅前道路沿いにある路面店や飲食店などの「空間の使い方やデザインルールを統一化」
  • 「一番街」「一の宮通り」「氷川参道」などを結ぶ縦動線を確保
  • 大宮らしさでもある「路地空間の創出」

【駅前空間の整備】

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  • 企業や東日本の地域イベント、災害時の避難に活用できる「広場の確保」
  • 雨に濡れないタクシーやバスの乗降場を整備するため、地下を含めた「縦の空間を活用」
  • 歩行者スペースを優先し、自転車や車のレーンは「駐車場は駅前空間の外縁部に配置」

【道路ネットワークの強化】

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  • 渋滞解消のため「既存道路の地下化」
  • 駅周辺における「自動車の侵入規制や迂回道の確保」

【駅機能の利便性向上】

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  • 各鉄道の乗り換えを容易にする東西通路の整備と「東武線大宮駅の移設」
  • ホームの拡幅やホームドア設置による「鉄道利用者の安全性を確保」

■出典:さいたま市「大宮駅グランドセントラルステーション化構想」 / さいたま市/令和元年6月21日 市長記者会見

大宮グランドセントラルステーション化構想は、まさにアーバン・パレット整備あってこその計画。そのアーバン・パレット実現のためには周辺道路の整備や歩行者の動線を確保しなければなりません。つまり、「アーバン・パレット整備 = 大宮グランドセントラルステーション化構想」といっても過言ではないのです。

大宮グランドセントラルステーション化構想の基になった2つの政策

それにしても何故、さいたま市はこれほどまで巨大な大宮駅の再開発を進めようとしているのでしょうか。主な理由は2つあります。

国土形成計画(全国計画)
1つ目は、国が掲げている「国土形成計画(全国計画)」です。国土形成計画は「全国計画」と「広域地方計画」で分かれており、本格的な人口減少や巨大災害、働き方の変化などに合わせた国土利用の方針。全国計画は各地域間でのヒト、モノ、カネ、情報が活発に動く「対流促進型国土」を基本構想としています。
国土形成計画(広域地方計画)
2つ目は、「国土形成計画(広域地方計画)」です。全国計画を細分化した計画であり、「東北圏」「首都圏」「北陸圏」「中部圏」「近畿圏」「中国圏」「四国圏」「九州圏」の8ブロックに分かれています。つまり、各地域の特性を活かして各ブロックで役割を分担し、全国計画の実現に寄与しようというのが広域地方計画なのです。

実はこれらの計画の中にも「さいたま市」「大宮」という都市名が挙げられています。具体的な内容を一部見てみましょう。

「東北圏・北陸圏・北海道連結首都圏対流拠点」の舞台となるさいたま市は、比較的地盤の安定している大宮台地の上に、多数の国の機関、大規模な医療施設及び東日本大震災の際に被災地からの避難者を受け入れたさいたまスーパーアリーナ等の施設が集積している。加えて、荒川の河川敷を活用した緊急河川敷道路を介し東京湾との間に発災後速やかに輸送ルートを確立することが可能であることから、東北、北陸の玄関口として、首都直下地震の際の様々なオペレーションを支える北部方面の最前線基地として機能していくことが期待できる。

■引用:国土交通省「首都圏広域地方計画」

北関東地方、東北地方、上信越・北陸地方及び北海道からのヒト・モノ・情報の集結・交流機能を高めるため、「大宮」の機能向上等を含む交通機関相互の結節機能を強化し、各種交通モードのシームレスな利用を促進する。

■引用:国土交通省「首都圏広域地方計画」

国土形成計画は、平成26年に策定された「国土のグランドデザイン」を実現するための計画でもあります。つまり、「日本全国の再開発計画」とも言える国土形成計画において、「大宮」「さいたま市」は各地域との連携や国際交流、災害時の重要拠点として考えられているのです。

2025年へ向けて動き出したプロジェクトの現状

国土のグランドデザインは2050年までを見据えた国づくりの理念や考え方です。対する国土形成計画は、2015年からの概ね10年間を「運命の10年」として重要な時期と位置づけています。さいたま市も大宮グランドセントラルステーション化構想にて「運命の10年を逃すことなく……」としていることから、実現の目安は2025年ということになりそうです。

では、大宮グランドセントラルステーション化構想は現状どこまで進んでいるのでしょうか。構想策定から今後の予定までの流れを見てみましょう。

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■出典:さいたま市「大宮駅グランドセントラルステーション化構想の検討の経緯」

上のイメージ図は今年2019年3月に行われた大宮グランドセントラルステーション推進会議の資料を抜粋したものです。パブリックコメントを募集しつつ、2020年3月までには骨子案を確定案にまで昇華させる流れなのが分かります。

ここで気になるのは「2025年に間に合うのか」ということ。同じさいたま市の浦和駅にあるパルコ周辺エリアの再開発には、計画から完成までに実に20年近くもの年月を費やしています。

仮に大宮グランドセントラルステーション化構想が2020年に確定案になったとしても、残りはたった5年。あれだけの巨大な開発プロジェクトを5年で終えるのはもはや不可能かも知れません。

2025年と言えば、大阪万博の開催年でもあります。日本全体がインバウンド需要の取り込みに躍起になる中、大宮グランドセントラルステーション化構想が2025年までにどこまで実現するかが注目されそうです。

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