「青森市の再開発事業」賃貸経営への影響は? | 不動産投資を考えるメディア

「青森市の再開発事業」賃貸経営への影響は?

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JR青森駅
人口減少の激しさが取りざたされる東北地方。特に人口減少率がワースト3となる青森、秋田、山形に関しては、早急の対応が求められています。ところが青森市では、一般には懸念されがちな「ハコもの再開発」が進められていますが、それはなぜなのでしょうか。今回は青森市において近年進められている再開発事情と経済効果を踏まえ、賃貸経営への影響や不動産投資戦略を考えてみたいと思います。

青森市の再開発計画概要

青森市の開発事業で記憶に新しいのが「新青森駅」。新青森駅は旧国鉄時代に新幹線の駅にする前提でローカル線の駅として建設され、東北新幹線の延線に伴って2010年に新駅舎として生まれ変わりました。

ただ、青森市は「コンパクトシティ構想」の方針により建物の建築制限を厳しくしていたため、新青森駅の周辺は「建物が何もない」という状況。多くのメディアもその「何もない様子」を伝えています。しかしここ最近、徐々に新青森駅周辺の商業用地への企業誘致が進んでいます。

最も新しい情報では「東横INN新青森駅前」が2020年3月にオープン予定であり、更に2021年3月にはABホテルの出店予定もあります。他にも主にフードサービス業などを運営する「Mik株式会社」によるテナントビルの建設予定がある上に、輸入車販売を行う株式会社インポートプラスの「ジープ青森」がオープンしたばかり。

新青森駅周辺 商業用地 販売
新青森駅周辺 商業用地 販売状況

■出典:青森市 新青森駅周辺の商業用地の販売について

上図のように販売中の保留地がまだ残っています。周辺地域の区画整理も計画されているため、商業施設の誘致だけでなく住環境の整備によりこれからの発展が期待されます。

新青森駅の開業による周辺地域の変化

前述の通り、新青森駅は基本「何もないところ」。周辺はこれまで単なる更地でしたから、新青森駅が新しくなったと言っても大した経済効果はないだろうと考えられます。しかし、青森県が公表する情報に少々興味深いデータがあります。青森県が公表しているデータによれば新青森駅が新駅舎として開業した平成22年、実は観光客が増加していたのです。
東北新幹線全線開業後 青森県 観光客 推移

■出典:青森県 東北新幹線開業後における本県観光の動向について

同調査によると、新青森駅が開業した平成22年12月から3か月間における青森県の宿泊者数は、前年比で最高119.6%でした。明らかに新青森駅の効果が表れています。翌年は東日本大震災があったため一時的に観光客が激減しましたが、現在は新青森駅開業当時と同じ水準まで観光客数が戻ったとのこと。

しかも現在の日本は、外国人観光客が増加中。官公庁により発表された「平成30年宿泊旅行統計調査」によれば、青森県に宿泊した述べ旅行者数は全国3位、外国人に関しては全国1位になっています。

都道府県別延べ宿泊者数の増加数 外国人延べ宿泊者数の増加数
1位 福井県 12.10% 青森県 45.70%
2位 鳥取県 10.10% 宮城県 45.10%
3位 青森県 8.70% 山形県 37.00%
4位 大阪府 7.70% 山梨県 36.10%
5位 三重県 6.20% 鳥取県 30.70%
6位 香川県 6.10% 広島県 30.70%
7位 高知県 5.70% 岩手県 30.10%
8位 山梨県 5.50% 島根県 29.70%
9位 沖縄県 5.30% 福井県 29.60%
10位 鹿児島県 4.20% 岐阜県 25.90%
11位 静岡県 3.00% 愛媛県 22.50%
12位 広島県 2.30% 熊本県 21.60%
13位 千葉県 2.20% 静岡県 20.70%
14位 東京都 2.10% 大阪府 19.00%
15位 茨城県 1.40% 石川県 18.90%
16位 山形県 1.30% 和歌山県 17.80%
17位 長野県 1.20% 福島県 17.20%
18位 宮城県 1.00% 新潟県 16.70%
19位 福島県 0.80% 愛知県 14.40%
20位 愛知県 0.60% 沖縄県 13.60%

■出典:観光庁 宿泊旅行統計調査

観光客によるインバウンド需要が見込まれる青森県。ではその観光客を迎え入れる最初の施設は何かといえば「ホテル」です。新青森駅周辺だけでなく、現在は青森市駅周辺でも新たな再開発とホテルの建設が活発化しています。

今後の青森市再開発の予定

では今後の青森市はどのような再開発が行われていくのでしょうか。青森市は開発計画の基本となる「立地適正化計画」を平成18年に策定しています。「都市機能の誘導」「コンパクトシティの構築」「公共交通機関との連携」によって「コンパクト・プラス・ネットワーク」のまちづくりを進めていく考えです。立地適正化計画では2つの指定区域における整備が柱になっています。

居住誘導区域 住宅や医療、商業、その他関連する施設に関する方向性を定めつつ地域公共交通と連携。用途地域などの制度との組み合わせて一定の人口密度を維持していく。
都市機能誘導区域 民間企業の誘致や情報提供、⻘森駅自由通路の整備、空き店舗の活用など、居住誘導区域の中で特に街として必要な機能の維持と新規立地を促す。

この指定区域における整備ではメイン事業が3つあります。「青森駅周辺の2つの再開発事業」と「青森操車場跡地の整備」です。

青森駅周辺の再開発事業

2018年12月に行われた青森市長の記者会見。小野寺晃彦市長は、都市機能誘導区域にける二つの地区に関して大規模な再開発事業を始めるとの発表を行いました。再開発が行われる事業は「中新町山手地区」と「新町一丁目地区」。どちらのエリアもJR青森駅からほど近い場所にある地区です。

施行面積 主な用途
①中新町山手地区市街地再開発事業 約0.5ha 商業・業務・ホテル・住宅・駐車場
②新町一丁目地区整備事業 約0.7ha 商業・住宅・駐車場

中新町山手地区の再開発事業は小売店や飲食店、事務所など老朽化した建物が問題となっていました。中新町山手地区の再開発事業は地域の住人による「まちづくり協議会」によって進められてきた計画。同時に再開発組合が設立されています。

新町一丁目地区の整備事業も同様に、市内で有名な「中三(なかさん)デパート」や周辺の飲食店の老朽化に加え、空き地の活用が課題でした。そこで地区の真ん中を走る市道を挟み、一体的な土地活用による集約化を図るとしています。

どちらの再開発も青森市の開発事業において目玉であり、市街地の活性化や都市機能の向上に貢献するものとして期待が寄せられています。

青森操車場跡地の整備

青森操車場跡地 構想イメージ図

■出典:青森市 青森操車場跡地利用構想

そしてもう一つの目玉が「青森操車場跡地の整備」です。青森駅はJR線だけでなく「青い森鉄道」という路線も乗り入れていますが、青い森鉄道の青森駅と一つ手前の駅である筒井駅の間には広大な敷地面積の操車場跡地があります。青森市は、この操車場跡地に新駅とアリーナの建設を決定しているのです。

青森操車場跡地 整備図

■出典:青森市 青森操車場跡地利用計画

青森駅前の再開発と操車場跡地の新駅とアリーナの建設。青森市が進める3つの開発計画は、立地適正化計画の一環。どちらのエリアもそう離れていませんから、周辺地域の賃貸需要だけでなく不動産価格の上昇も見込まれます。ただ開発自体がまだこれから。果たして不動産市場にどう影響を与えるのでしょうか。

青森市の再開発で賃貸需要はどうなる?

青森市が発表した新たな2つの再開発事業と新駅の設置。周辺地域にどのような変化を与え、経済効果がどの程度になるかは否が応にも注目されます。なぜなら青森市は2001年に竣工した青森駅前再開発ビル「フェスティバルシティ・アウガ」で巨額損失を出した痛い経験をしているため。ただ、賃貸需要という面で考えると、再開発事業と新駅の設置に関して3つの好材料があります。

  1. 観光客増加という現状で民泊事業者登録をしている住戸が少ない
  2. 人口は減少するも単身世帯が増加中
  3. 操車場跡地周辺には大学や公共施設などが多い

まず弘前市、八戸市、青森市の3市の中で、青森市だけがここ数年で急激に観光客数が増加中。ただ青森市内にはホテルが少ないと言われています。そこで民泊事業者の活躍が期待されますが、民泊登録を行っている事業者も多くありません。

青森県3市-観光入込客数の推移

■出典:青森市 企画部企画調整課 各種統計データ

【青森駅周辺の民泊事業者数】
青森県 住宅宿泊事業届出者 一覧

■出典:青森県住宅宿泊事業届出者一覧

そして青森市が公表しているデータによると、青森市の人口は減少し続けているものの世帯数は逆に増えています。世帯数の中でも特に単身世帯は年々増加している状況です。更に自転車で20分前後の場所には、青森大学と青森県立保健大学があり、他の公共施設なども豊富にあります。そう考えると、ある程度の単身者向け賃貸需要を見込めると考えて良いでしょう。

男性(人) 女性(人) 総数(人) 世帯数
平成18年 147,704 166,029 313,733 129,598
平成19年 146,080 165,021 311,101 130,489
平成20年 144,728 163,888 308,616 131,389
平成21年 143,397 162,866 306,263 132,008
平成22年 142,317 162,004 304,321 132,864
平成23年 141,602 161,355 302,957 133,707
平成24年 140,347 160,431 300,778 134,288
平成25年 139,015 159,447 298,462 135,118
平成26年 138,133 158,082 296,215 135,915
平成27年 137,014 156,845 293,859 136,173
平成28年 135,305 155,416 290,721 136,191
平成29年 134,016 153,784 287,800 136,209
平成30年 132,816 152,342 285,158 136,423
平成31年 131,390 150,671 282,061 136,456

■出典:青森市 人口・世帯数等 住民基本台帳(基準日4月1日)

青森市-単身 世帯数

■出典:青森市 企画部企画調整課 各種統計データ

青森市は観光に支えられている印象が否めませんが、単身世帯をターゲットにしつつ民泊としても活用できる不動産投資手法がオススメと言えるでしょう。特に昨今では賃貸と民泊をセットにしたようなサブスクリプション住宅というサービスも注目されています。青森市における不動産投資は、住まいと宿泊施設の両方に対して柔軟に対応するのがポイントになりそうです。

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