シェアハウス事件に見るサブリースと家賃保証の違いとリスク

シェアハウス問題の何故?サブリース、家賃保証の違いとリスクとは

一時、大問題として取り上げられたシェアハウスや建築基準法違反、不動産投資向けの不正融資。ネガティヴなニュースが多すぎたため、サブリースや家賃保証という言葉は一緒くたにされてすっかりイメージが悪くなりました。そもそも「サブリース」や「家賃保証」は何がどう違うのでしょうか?言葉からすると同じもののように思えます。今回はシェアハウスやサブリースにまつわる事件をひも解きながら、「サブリースと家賃保証の違いとは何か」について考えてみたいと思います。それぞれのリスクや問題点、回避方法も詳しく解説いたします。

シェアハウス・サブリース問題を振り返る

2018年に入ってすぐの頃、レオパレスやスマートデイズといった会社のニュースがよく報道されていたのは記憶に新しいところ。スマートデイズ社が破綻したり、レオパレスを始めとしたサブリース問題は現在も裁判が続けられいたりと、事件は泥沼化したと言っても過言ではありません。まずはこれらのニュースの概要と問題点を振り返ってみましょう。

レオパレスのサブリース問題まとめ

2017年9月に最も不動産業界で話題になったのが「レオパレス集団訴訟問題」。LPオーナー会が代表となり、アパートの修繕費用を返還するよう求めて起こした集団訴訟です。その後、問題は「サブリース契約の内容に違法性がある」という事態に発展。100人という単位の大きな集団訴訟になりました。更にその後は建築基準法違反が次々と発覚して社長退任劇にまで及んでおり、信頼回復にはかなりの時間を要しそうです。

レオパレス問題悪化!明らかになる建築基準法違反と隠ぺい体質
サブリースに端を発したレオパレス問題。2014年1月に設立された「LPオーナー会」が被害者の会を設立することが明らかになりました。 昨...
今度は「遮音性と耐火性」またも建築基準法違反が発覚したレオパレス21
2018年5月にテレビ東京「ガイアの夜明け」が報じたレオパレス21の建築基準法違反の問題について、企業としての信頼を損なう決定打とも言える新たな...

サブリースに関してレオパレスが訴えられた理由は以下の通り。

  • 10年間は家賃が変わらないと言われたが、実際は業績悪化を理由に家賃を減額された
  • 業績回復したにも関わらず減額家賃のままである
  • 物件設備の修繕費用を支払っているが、実際には修繕されていない
  • 賃料減額を拒否したら、サブリースを解約するという話になった

上記に対してレオパレス21の公式サイトでは、10年どころか「30年一括借り上げシステム」という魅力的なサービスを大々的に謳っています。レオパレス訴訟で争われているのは、まさにその「家賃保証」の部分です。レオパレス21はサブリースの内容について以下のように説明しています。

  • 家賃保証や管理委託手数料の分、賃料収入を低く設定する
  • 借上げ賃料は2年毎に見直し
  • 30年一括借り上げ契約は建物完成後
  • 3ヶ月の募集期間中は借上げ賃料を支払わない
  • 詳細は建物賃貸借契約書にて確認

【参考】レオパレス21公式サイト

つまり、賃料見直しなどは実際の契約書どおりであるものの、全国で訴訟が起こっている様子から、営業担当の説明とは異なる部分があったのではないかと推測されます。

この問題のポイントは、家賃が長期間保証されるという説明だったにも関わらず「賃料減額を求められた」「サブリース契約を解約すると言われた」という点です。

スマートデイズのシェアハウス問題まとめ

破綻に追い込まれたスマートデイズ社。元々は「30年間サブリース!利回り8%!」を謳い、次々とシェアハウス物件を販売していました。売り上げも一時は300億円を超えて、このまま事業拡大かと思われた矢先に事件が発覚して全国に悪名を轟かせました。スマートデイズ社のシェアハウス問題がどんな事件だったのか、時系列で振り返ってみましょう。

  1. 賃料を支払えなくなったとオーナーに通知が届く
  2. 実際に賃料の支払いがストップ
  3. サブリースどころか物件販売で得られる利益とスルガ銀行の融資による「自転車操業」が発覚
  4. スルガ銀行による不正見逃しも発覚し、集団訴訟に発展
  5. スマートデイズ社の破綻

世間の注目を集めたスルガ銀行を始めとした不正融資問題は、全て上記の事件がキッカケでした。スマートデイズの実態は、シェアハウス事業の家賃収入がほとんど得られていない自転車操業。スルガ銀行の融資がストップしたことで家賃保証が不能になり、1億円以上の負債を抱えるオーナーが続出しました。

女性向けシェアハウス「かぼちゃの馬車」破たんと借金1億円の顛末
2018年1月25日、ニュース番組のワールドビジネスサテライトでとある会社のニュースが流れました。 「かぼちゃの馬車」という女性向けシ...
止まらぬスルガ銀行株の暴落!問題視されるスルガスキームとは?
シェアハウス物件のサブリース問題が発覚後、株式会社スマートデイズは民事再生法の適用を申請しましたが、東京地裁はこれを棄却。いよいよスマー...
ゴールデンゲインも破綻で相次ぐシェアハウス問題。実際の口コミは?
かねてよりシェアハウス詐欺の一つとして報道されていた「ゴールデンゲイン社」が5月22日、ついに破産手続きの開始を決定しました。 シェア...

元々シェアハウスという事業自体、ローンで始めれば高額債務の返済が求められます。家賃保証されなくなれば、高額債務の返済はオーナーの自己負担ですから、リスクが大きすぎる投資なのです。簡単に「30年サブリース」と謳えるような代物ではありません。

この問題のポイントは、家賃保証を謳った会社自体が破綻するリスクの代表的な例です。何よりもオーナーらの「物件価格が高額」「家賃保証会社の倒産リスク」「賃貸需要などのマーケティングが甘い」といった点の認識の薄さが主な問題ポイントになるでしょう。

「サブリース」「家賃保証」「マスターリース」の違い

では、先ほど挙げた事件の問題ポイントを整理しておきましょう。

  • 賃料減額を求められた
  • サブリース契約を解約すると言われた
  • 物件価格が高額
  • 家賃保証会社の倒産リスク
  • 賃貸需要などのマーケティングが甘い

「物件価格が高額」「賃貸需要などのマーケティングが甘い」という2点については、オーナー自身に落ち度があったとしか言いようがありません。その他3つもリスク回避しようと思えば可能です。では「そもそもサブリースと家賃保証はどう違うのか」といった点も踏まえ、具体的どうすればリスクを回避できたのかを考えてみたいと思います。

「サブリース」とは?

サブリース 仕組み

【出典】一般社団法人全国賃貸経営補償機構

サブリース(sublease)は直訳すると「代わりに借りる」。つまり、サブリース会社は借主となって物件を借り上げ、貸主として一般ユーザーに又貸しする「転貸借契約」となります。一般的には物件管理や入居者対応、滞納家賃の督促といった業務まで一括して行ってくれるケースが多く、手数料として家賃の10~20%程度が徴収されます。しかも敷金や礼金、更新料なども全てサブリース会社が得る仕組みであるため、オーナーの手取りは限りなく少なくなります。

「家賃保証」とは?

対する家賃保証には2つの意味があります。「滞納があった場合の家賃保証」と「空室になった場合の家賃保証」です。連帯保証人を不要とする代わりに、保証会社への加入を要する賃貸物件を見かけることがあります。これが「家賃滞納があった場合の保証」です。別名で「滞納保証」と呼ばれます。

対する「空室になった場合の家賃保証」は「空室保証」とも呼ばれます。入居募集や物件管理などは管理会社に任せ、家賃保証会社に一定額の利用料を支払うことで空室時の家賃を一定割合まで保証してもらえます。

家賃保証 仕組み

【出典】一般社団法人全国賃貸経営補償機構

一般的に家賃保証会社は物件管理を行うわけではないので、得る利益は手数料のみ。よって、サブリースと比べてオーナーが得る利益は大きくなります。

「マスターリース」とは?

もう一つ「マスターリース」という言葉があります。マスターリースはビルやテナントなどの商業用不動産で使われる用語です。一般のアパートで言うところの一括借り上げシステムと同じ仕組みですが、アパート経営などでマスターリースという言葉を使うことはありません。ただ稀にアパート建築会社の営業マンが「当社にマスターリースでお貸しいただき…」と説明するケースもあるため、言葉としては頭の片隅に入れておいても良いでしょう。

シェアハウスやサブリース事件。どうすれば被害を防げたのか

では、サブリースや家賃保証などの違いが分かったところで、最初にご紹介した事件から見えてくるサブリースの問題を改めて検証してみましょう。サブリース問題の原因は、以下2つのポイントに集約できます。

  • サブリース契約は先方都合で解約できてしまう
  • 家賃保証という話はあくまで口先だけである

そもそもサブリースは、サブリース会社が賃借人です。賃借人は法律上の立場が強く、いつでも解約できます。その反面、不動産オーナーが「こんな会社とは縁を切りたい」と思っても簡単には解約できません。その裏付けとなるのが以下の法律です。

借地借家法第28条建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件
建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

【引用】e-Gov借地借家法

分かりやすく言い換えてみましょう。

【借地借家法 第28条 建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件】

賃貸人(オーナー側)は、以下に該当しなければ「更新しない」「解約する」という申し出ができない。

  • 賃貸人が建物の使用を必要とする事情がある(戸建賃貸で転勤から戻ってきたなど)
  • 建物を明け渡す代わりにお金を渡すと約束した場合(不法占拠などの交渉で立退料を払うケースなど)
  • 建物の状況や利用具合などから正当な事由があると認められる場合(老朽化や滞納など)

上記の法律があることで、サブリース会社はかなり強い立場になってしまいます。オーナーが賃貸契約を解除する場合は、正当な事由があることを明らかにできなければ解約ができないのです。また、そもそも「家賃を保証します」という言葉自体、その根拠はどこにあるのかが問題です。

スマートデイズ社はメリットだらけの説明をしておきながら、実際の会社内部はボロボロでした。かといって本当に家賃を保証できるほどのスキームや経営力があるかどうかは、一般の人が判断するのは難しいでしょう。不動産投資家として、上記のようなリスクを回避するためには、主に3つの手段があります。

リスク回避方法1「サブリースや家賃保証の契約書をよく確認する」

もう一度、レオパレスが行うサブリース契約の条件を見てみましょう。

  • 家賃保証や管理委託手数料の分、賃料収入を低く設定する
  • 借上げ賃料は2年毎に見直し
  • 30年一括借り上げ契約は建物完成後
  • 3ヶ月の募集期間中は借上げ賃料を支払わない
  • 詳細は建物賃貸借契約書にて確認

営業マンの言う「30年一括借り上げ」というのは嘘ではありません。ただし「いつでも解約できる」「賃料もダウンする」というのが大前提です。しかも空室が発生して入居募集を開始してから最大3か月間は、家賃を振り込んでもらえません。この時点で「果たして何を保証しているのか」という話になります。

また、恐ろしいのが「30年一括借り上げ契約は建物完成後」という部分。これは建築請負から建物完成までの間に両者でトラブルが起き、万一契約解消という話になったら一括借り上げの話もなくなるかもしれないのです。レオパレス21の公式サイトには「一括借上げシステムの適用につきましては一定の基準があります」という文言もさらっと書かれており、「適用外になったらサブリース契約は解約される」というリスクがある事も分かります。

サブリース契約は企業側に非常に有利な内容であることが多いため、基本的にサブリース自体を避けた方が良いでしょう。もしサブリースを利用するならその場で決断することは避け、専門家などに相談するのがベストです。

リスク回避方法2「入居者が見込めなければ物件を持たない」

賃貸経営は入居者あってこそ成り立つ事業です。サブリースなどの保証無くして経営できないようであれば、最初から物件を持つべきではありません。サブリース会社の多くは、上記を認識していない地方の地主をターゲットにしてきました。アパートを建てさせるだけ建てさせて、いざ入居が見込めなくなれば家賃の減額や解約を口にするようになるのです。

そもそも入居者が見込める土地なら、わざわざ手数料が引かれるサブリースである必要すらありません。管理会社に委託管理を依頼して、自分で運営すれば良いのです。基本的に入居が見込めない立地で物件を持つこと自体がリスクであり、賃貸需要がないのになぜ家賃が保証できるのかという部分は深く疑ってかかるべきです。

リスク回避方法3「会社の評判、信用、経営状況は念入りに確認する」

忘れてはならないのが「会社の信用」です。いくら「法人」という人格を持っていても、悪事を働く会社はごまんとあります。ニュースや報道などで表沙汰になっていないだけで、サブリースについて口コミを調べれば何とも酷い話がゴロゴロ転がっているのも事実。火の無いところに煙は立たずですから、あまりに悪評の多い会社のサブリースは絶対に避けた方が良いでしょう。

また、サブリース業者も含めて登録できる「賃貸住宅管理業者登録制度」という制度があります。これは国土交通省が創設した制度で登録は任意です。ただし非常に多くの事業者が登録しており、かつ規則を守らなければ企業名が公表するなどの罰則が設けられています。賃貸住宅管理業者登録制度は、よほど特別な事情がない限りはほとんどの業者が登録しています。登録しなくても管理業者として営業できますが、登録しないには相応の理由があると見て良いでしょう。一つの判断基準として、賃貸住宅管理業者登録制度に登録しているかどうかを以下のサイトから確認する方法もあります。

【参考】賃貸住宅管理業者登録制度

まとめ

今回は大きな問題となったシェアハウスやサブリースの事件から、「サブリース」と「家賃保証」の違いを解説いたしました。未だ混同されがちなシステムですが、そもそもサブリースと家賃保証に明確な定義が定められているわけではありません。サブリース契約のことを「家賃保証サービスです」と謳うこともありますし、逆に家賃保証サービスの事を「一括借り上げなので家賃が保証されます」という風に説明する担当者もいます。どちらにしても口先の営業トークに惑わされることなく、契約の中身や条項、契約する会社は怪しくないかと言った点はしっかり見極めましょう。目先のメリットばかりに気を取られずに、いかに隠れたリスクに気付けるかが、トラブルに巻き込まれないための最善策と言えるでしょう。

4.33/5 (3)

記事の平均評価