無くならない金融機関の不正融資。危ない物件に融資が続く理由 | 不動産投資を考えるメディア

無くならない金融機関の不正融資。危ない物件に融資が続く理由

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金融庁は2018年10月、全国の金融機関に対して「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査」を実施しました。アンケート調査のきっかけは、2018年夏に公になった「スルガ銀行の不正融資問題」です。

賃料や入居率、顧客の金融エビデンスの改ざんの発覚。そして売買契約書の二重作成から融資担当者による不正の見逃しなど、黒すぎるスルガ銀行の体制に半年間の業務停止命令が出される結果になりました。

実は今回のアンケート調査、スルガ銀行だけでなく金融機関全体として融資審査の体制が非常に甘いことが露呈した驚くべき結果になっています。アンケート調査から何がわかり、どのような結果になっているのかをご紹介します。

投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果の概要

最初に金融庁が実施した「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査」の内容がどのようなものかご覧ください。

・投資用不動産向け融資の実行額や残高など
・紹介業者の業務が適切であるかの検証
・融資審査における収支シミュレーションや売買価格の妥当性、顧客のエビデンス確認などの状況を検証
・返済不能や変動金利の場合におけるリスク、物件取得にあたって重要な事項を顧客が理解しているかの確認
・対象物件の空室率や賃料など実績の確認
・平成30年4月以降に行った上記までの事項に関する改善状況

■参考:投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果

上記調査を行った結果ですが、興味深い事実が分かっています。

・ローン審査において賃料収入だけでなく給与収入も返済原資と見なす金融機関が少なくない
・法定耐用年数をとっくに経過していても長期間の融資を容認しているケースもある
・不動産の紹介業者が行う業務の適切性を検証する習慣がない
・物件の賃料収入のみでローン返済できなくても融資が実行されるケースがある
・収支シミュレーションに基づいた将来収支の見込みまで説明している金融機関は少ない

そしてもう一つ、大変気になる調査結果があります。それは、以下の一文です。

エビデンスを確認するとしている場合に、原本により確認している金融機関の割合は相当低くなっている

■引用:投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果

収入証明や金融資産を原本で確認しない金融機関が多いということですが、それにしても「相当」とは一体どのくらいなのでしょうか。

ほとんどの銀行が収入証明の原本を確認しない

不動産投資用ローンを利用する際、一定の収入力が求められます。当然ながら金融機関も給与明細書・税務申告書など、収入を証明できる書類の確認はしっかりと行っています。

ただ、問題は「原本ではなくコピーでの確認にとどまっている」ことです。今回金融庁が発表した資料から、金融機関がエビデンスの原本確認をしているかどうかの調査結果をご覧ください。

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■出典:投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果

90%以上の割合で収入証明やエビデンスを確認していることが分かりますが、原本を必ず確認している割合がたった20~30%程度です。そもそも全く確認していない金融機関も数%ながら存在するのも驚きです。

証明書や通帳原本の偽造ならまだしも、誰でも簡単に作成できるコピーだけでいいなら数字の改ざんも容易です。金融庁はこれらの結果を踏まえて、以下のように結論付けています。

「偽装防止のためにしっかりと原本を確認すること。そして原本をただ確認すればいいという考えではなく、借主にとって妥当な収入額かどうかもきちんと検証することが重要である」

投資用不動産へ融資する銀行はどこまでが説明義務か

「投資は自己責任である」という言葉を耳にしますが、不動産を投資と位置付けるなら不動産を紹介する業者はリスク説明の義務を果たすべきと言えます。それは金融機関にとっても同じことで、やはり完済を前提とした貸主としてのあらゆるリスク説明はすべきでしょう。実は金融庁が作成した「平成28事務年度金融レポート」にて、貸主の説明義務について言及されています。

【適切な業務運営の確保】

地域銀行においては、金利上昇や空室・賃料低下等のリスクについて適切に評価した上で、借り手に分かりやすく伝えるなど、顧客本位の(ローンの借り手(家主)の立場に立った)業務運営を確保する必要がある。

■引用:金融庁 平成28事務年度金融レポート

【貸家業の事業リスクの評価と借り手に対するリスク説明等】

各金融機関においては、アパマンローン等貸家業向け融資の規模等に応じて、必要なデータの蓄積や賃貸物件の収益シミュレーションの精緻化といった規律ある審査体制の構築、期中管理(融資実行後の賃貸物件の空室・賃料水準や収支状況(キャッシュフロー)等の把握等)の充実に努めるとともに、借り手に対するリスク説明を充実させる必要がある。

■引用:金融庁 平成28事務年度金融レポート

要は金融機関もしっかりと不動産投資のリスクを借主に伝えなさいということです。上記のレポートは平成29年に作成されたものですので、ではそれに対し金融機関は一体何をやっていたのかという話になります。果たして、金融庁の調査により金融機関の今後はどう変わっていくのでしょうか。

不動産投資家への貸し渋り?金融庁の見解と今後の対応

金融庁ではアンケート調査結果で、下記の4つについてきちんと検証・確認すれば、不正行為をかなりの割合で防止できると述べています。

1. 物件の賃料水準や売買価格の妥当性等の検証
2. 顧客の返済余力(財産・収入の状況)の検証
3. 自己資金の拠出を求める場合の実在性確認
4. 物件の利用目的の確認

また、金融庁はアンケート調査の結果で、特にアパートや一棟マンションへの融資リスクについて懸念を表しています。一棟物は事業性が強く、長期的なキャッシュフローが得られるかどうかで将来の返済が大きく左右されるためです。よって金融庁は、下記2点を重視しなくてはならないと述べています。

・返済原資は物件が生み出すキャッシュフローが主であること
・建物の耐用年数に基づいて融資期間を決めること

■参考:投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果

ただ実際にはほとんどの銀行と信用金庫、そして信用組合が借主の給与収入等を合算した金額を融資基準としています。さらに耐用年数に関しても法定耐用年数ではなく、著しく法定耐用年数を超過した「経済耐用年数」を融資基準にしているケースがあると指摘しています。折りしも不正融資で大問題になった「スルガ銀行」と「西武信金」も、耐用年数オーバーでの融資が以前から指摘されていました。

こういった現状を受けて金融庁は、アンケート調査結果の中で「問題のある金融機関にはさらなる調査を行い、必要があれば立ち入り検査も活用する」と明言しています。金融庁の意向に沿わない金融機関への締め付けは、今後かなり厳しくなるものと見込まれます。同時にそれは投資用不動産への融資が減ることを意味しますから、今後の金融機関による融資姿勢の変化には目が離せない状況になりそうです。

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