不動産投資家は絶対手を出すな!フラット35を悪用した「なんちゃってスキーム」

不動産コラム

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「なんちゃってスキーム」「フラット35」という言葉を目にする機会が多くなったと感じていませんか?実は「なんちゃってスキーム」バレたら最後、自己破産すらできない地獄が待ち受けているかもしれません。

今回は「なんちゃってスキームって何?」「なんちゃってスキームをやってる業者はどこ?」という疑問をお持ちの方に、筆者が独自にリサーチした情報などを全てご紹介します。

フラット35を悪用した「なんちゃってスキーム」とは?

「なんちゃってスキーム」とは、住宅金融支援機構が取り扱う住宅ローン「フラット35」を収益用不動産の購入に不正利用する手口です。つまり、本来は自己居住用ではないマンションなどを購入する際、「自分が住む」と嘘を付いてフラット35の借り入れを行うのです。

2019年5月に「なんちゃってスキーム」の問題が発覚し、各新聞社のみならず住宅金融支援機構や国土交通大臣までもが対応に動いています。住宅金融支援機構が公表したリリースによると、発覚している事実は以下の通りです。

  • 平成30年9月に外部からの情報提供により事案が発覚
  • 物件価格を水増しした売買契約書で融資が申し込まれた
  • 不正利用の疑いのある案件は113件
  • 居住の事実、投資目的の有無、物件価格の水増しの有無などの調査を2019年9月までに終了させる

■出典:住宅金融支援機構「フラット35の不適正利用懸念事案への対応について」

「なんちゃってスキーム」とは何とも軽い印象を受ける名前ですが、実態は「悪質な不動産業者が使う完全にブラックな手口」なのです。

違法性は?住宅金融支援機構の見解と厳しい法的措置

昨年に大騒ぎとなったスルガ銀行の事件以来、何かと不正が発覚しては騒がれる不動産投資業界ですが、今回の事件に限っては、お金を貸した側の住宅金融支援機構が被害者の立場です。住宅金融支援機構のプレスリリースには以下の一文も掲載されています。

”調査の結果、融資申込み時点からの投資目的又は住宅購入価格の水増し等の事実が判明した場合には、法的措置も含めて厳正に対処してまいります。”

■引用:住宅金融支援機構「フラット35の不適正利用懸念事案への対応について

ここで住宅金融支援機構が言う「法的措置」とは一体どのような事を指すのでしょうか。その答えを探るために調査を進めていくと、意外な事実が分かってきました。

不動産会社元社員のなんちゃってスキームの手口

なんちゃってスキームの問題が騒がれるきっかけになったのが、朝日新聞社の告発記事。朝日新聞社は中古マンション販売会社の元社員に取材を行っていますが、元社員は自身の経験を基になんちゃってスキームの手口などを以下のように語っています。

  • 2015年頃からフラット35で顧客に中古マンションの投資物件を買わせた
  • 顧客は投資セミナーやインターネットで勧誘した
  • お金に困った人をターゲットに投資セミナーやネット上で勧誘した
  • ターゲットの年代は20~30代が中心
  • 自社が売り主の物件で150件前後やった
  • 自己資金ゼロと謳い、20年間の家賃保証や借金の帳消し、キャッシュバックをセットにした
  • 顧客に「自分で住む」と申告させて住民票を購入物件に移させた

■出典:朝日新聞デジタル-元社員が語るフラット不正「年収400万円超は富裕層」

自分が住むと言いながら実は自分は住まない物件、だから「なんちゃってスキーム」。実はこのネーミングは以前から不動産業界ではよく使われていました。ただ今回、不動産投資会社の元社員に取材した朝日新聞社の記事により、一気に表面化したというわけです。

上記の報道に対して、「では、実際にどこの会社がなんちゃってスキームを行っていたのか?」というリサーチを進めていくと、少し意外な情報を発見しました。

弁護士ドットコムでの「なんちゃってスキーム」の相談内容

不動産投資案件であることを黙って住宅ローンの融資を受けたと発覚すると、金融機関は「一括返済」を求める決まりになっています。ただ、一括返済をすればそれで済むかというとそう簡単な話ではありません。

なんちゃってスキームを「グレーだ」とする向きもありますが、立派な詐欺罪です。場合によっては逮捕案件にもなり得ます。それを分かりやすく解説しているのが、弁護士ドットコムにおける相談。一部抜粋してご紹介します。

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“フラット35でローンを組み賃貸に出すと言うスキームを会社で行ってます。”

“お客には、契約違反(賃貸に出した)で詐欺にあたるので刑事告発を考えていると言われています。”

“住宅ローンで購入し、賃貸に出すと言う行為が詐欺罪になり、逮捕される可能性はありますか?初犯の場合、どれくらいの刑罰になるかも知りたいと思います。”

“やっている期間 約4年 お客様の数(実行件数) 約180客”

■出典:弁護士ドットコム「住宅ローンで賃貸に出し契約違反で詐欺罪にあたると」

「自分が住むと偽って融資を受けて不動産投資をした時点」で詐欺罪が成立する可能性が非常に高く、グレーかどうかという理屈は通じません。その理由は上記の相談に対する回答でもはっきりしています。

【相談に対する回答】
  • 自分が住むと偽り金融機関側を誤信させた融資実行なら詐欺が成立する可能性がある
  • それを業として行っているのであれば民事の問題に止まらず刑事事件に発展する可能性がある
  • 被害額が大きく返還の見込みがないなら厳しい結果が予想される

上記の回答内容には「証拠隠滅などしていれば逮捕案件になる」とも書かれており、総合的な判断で実刑になる可能性も示唆されています。業者が行った詐欺だとはいっても購入者もその詐欺に加担しているわけですから、それなりの処罰を受けると覚悟した方が良いでしょう。

さて、この相談内容ですが、投稿されているのは2019年2月。まさに各メディアが騒ぎ立てる直前の相談です。その相談内容には「なんちゃってスキームをやったのは180件程度」としており、時期や件数を見ると朝日新聞社が取材した元社員の告白と酷似しています。

弁護士ドットコムの相談者と朝日新聞社が取材した男性の告白。同一人物かどうかは不明ですが、恐らく同じスキームを行うグループのメンバーである可能性が非常に高いのではないでしょうか。

なんちゃってスキームが疑われる事例

住宅ローンを使った不動産投資スキームは犯罪の域になることはお分かりいただけたかと思います。事情に詳しい専門家らのブログなどでは、不動産投資を行う人は以下のような文言で募集するセミナーなどに注意が必要だと警鐘を鳴らしています。

  • 借金を帳消しにできる上にキャッシュバックを受けられる
  • 年収200万円でも不動産投資を始められる
  • 派遣社員でもローンが組める

朝日新聞社の取材を受けた元社員の告白でも、「借金」「帳消し」「キャッシュバック」というキーワードがありましたが、要は上記のような文言を使って勧誘していたということなのでしょう。

実際に上記のような謳い文句で開催しているセミナーがないか調べましたが、執筆時点で上記のようなセミナーは見当たりませんでした。ただ、リサーチの副産物として、なんちゃってスキームは一般個人が自ら利用している可能性が高いということが分かってきました。

以下のコミュニティでは、フラット35のセカンドハウス用のローンを利用して不動産投資に乗り出すことを暗に伝えている様子が伺えます。彼らの間では「フラットセカンド」で通じるようです。

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■出典:マンションコミュニティ-[湾岸・投資] 複数タワーマンション購入

また、上記とは別に、完全に「住宅ローンで不動産投資をやる」と明言するサイトも見つかっています。

■参考:住宅ローン投資マニュアル

明らかに違法なはずですが、何か別の意図があってのことか確認してもそれらしい情報は見つかりません。なんちゃってスキームが認知されていない時期のサイトなのでは?と思い、調べたところ、サイトの最終更新日は2019年2月。つまり、住宅ローンで不動産投資をやるという違法性を認識していても全く不思議ではない時期に更新されていました。しかも、偶然かは分かりませんが、前述の弁護士ドットコムの相談時期とも同じ。

他にも「借金」「帳消し」「キャッシュバック」「年収200万」「派遣社員」などで情報を探ってみると、少々怪しいと思われるサイトがいくつか見つかります。こうして見ると、なんちゃってスキームが問題であると騒いでいるのは国、住宅金融支援機構、各メディアだけではないかと思えてしまうのが正直なところ。もはや個人投資家の間では、当たり前のように存在するスキームということなのでしょうか…。

バレたら人生終了!破産すらできない地獄

なんちゃってスキームへの世間の反応は「バレなきゃOK」のような雰囲気があります。ただ、あくまでもバレない事が前提であることを忘れてはいけません。今回なんちゃってスキームの問題が明るみに出たことで、住宅金融支援機構は大掛かりな調査に乗り出しました。場合によっては、他の金融機関でも独自調査が始まる可能性は十分考えられるでしょう。

では、もしなんちゃってスキームがバレてしまったら、自力で何ができることはあるのでしょうか。まず確実にやらなければいけないのは「一括返済」です。一括返済すれば免罪というわけにはいきませんが、詐欺で訴えられる可能性が多少は低くなるでしょう。

逆に一括返済ができなかった場合はどうでしょうか。多くの人はきっと「いざとなれば自己破産すればいいや」と思うでしょう。しかし、なんちゃってスキームがバレて一括返済できないからといって、自己破産はできません。自己破産をするためには、まず裁判所が自己破産を認めないと成立しません。そのためには「免責不許可事由」という、自己破産を認めない理由に該当しないことが絶対条件になります。

その免責不許可事由の中に、「詐欺・欺罔」があるのです。つまり、嘘を付いてお金を借りるなどした場合は、自己破産が認められません。最終的に一括返済ができないのであれば、詐欺として訴えられる可能性は限りなく高くなるでしょう。不動産投資を始めるのに住宅ローンを前提に考えるべきではありません。それが地獄の一丁目だということは、この機会に覚えておいた方が良いでしょう。

まとめ

近年は悪質な不動産投資手法や業者が何かと矢面に立たされますが、スルガスキームに続いて話題になりそうなのが「なんちゃってスキーム」です。実は、なんちゃってスキームを行っていた疑惑のある会社が1社あり、同社は東証一部上場企業です。同社はプレスリリースにて「社内の体制上あり得ない」と否定していますが、あくまで社内の体制上の話。否定できる根拠とは言えません。それに対し、以下の報道では「上場企業を筆頭に複数の企業名が上がっている」としています。

■参考:Access-Journal「石井国交相が実態解明を指示ーー「フラット35」不正利用疑惑で名が上がる上場企業など

本記事でご紹介した弁護士ドットコムの相談では、「(なんちゃって)スキームを会社で行ってます」との一文があります。なんちゃってスキームは「スルガ」「TATERU」に続く第三の事件に発展する可能性が否めません。当メディアでは引き続き同事件の調査を続けていきたいと思います。

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