不動産投資で黒字倒産!?家賃収入があっても破綻する3つの要因

不動産コラム

暗いビル群

突然ですが、黒字経営ができているのに倒産してしまう、所謂「黒字倒産」をする企業が昨今多くなっているというのをご存知でしょうか。
黒字なのに倒産とは矛盾しているように感じますが、これにはしっかりとした理由や原因があります。
実はこの黒字倒産、何も会社経営に限った話ではなく、不動産投資においても起こり得る可能性が十分にあるものなのです。つまり、家賃収入があって運用上は黒字であるにもかかわらず、破綻に追い込まれてしまうということがあり得るのです。
そんな、家賃収入があるのに破綻してしまう不動産投資における黒字倒産の理由について、3つの要因から探っていきたいと思います。

不動産投資でも黒字倒産が起きる!?

少々古いデータとなりますが、2017年に中小企業庁が中小企業白書として公表したデータに興味深いデータがあります。
2013~2015年の3年間において倒産や解散をした約8万4千の企業のうち、廃業直前の経常利益が判明していた6400の企業から集計したデータによると、なんと50.5%の企業が黒字倒産していたという事が判明しているのです。そのうち7.5%が計上利益率10%以上、6.1%が20%以上の売上経常利益率となっていたというのですから驚きです。

◾️参考:中小企業庁「2017年版 中小企業白書(廃業企業の現状)」
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H29/PDF/chusho/03Hakusyo_part1_chap2_web.pdf#page=14

なぜ黒字倒産は起こってしまうのでしょうか。
古いことわざに「勘定合って銭足らず」というものがありますが、そもそも黒字倒産とは、財務の計算上は黒字なのに、手元にお金が無いことから支払いができず破綻に陥ることを指します。最初のうちは利益で潤っていたとしても、次第に利益の見込みがあっても期限までの支払いが困難になってきて、最終的に倒産してしまうのです。

では、この黒字倒産を不動産投資に置き換えて考えてみましょう。
物件を購入した直後は経費計上できるものも多いため節税効果が見込まれ、入居者と家賃収入さえ確保できていればキャッシュが残ります。
しかし、入居者からの家賃収入はあったとしても、物件購入の2年目以降は節税効果が薄れる上、変動制金利であればローンの支払いが増える可能性もあります。
ローンだけでなく維持費も今まで通り支払い続けなければならず、ついには手元の資金を持ち出さなければいけなくなり、最終的に破綻となるのです。

不動産投資の世界では一般的に、節税効果が薄れるのにローンの支払い額が変わらないために収支が逆転することを「デッドクロス」として理解されています。
デッドクロスした瞬間に先に支払いをしなければいけないものが増え、収入の方が後になって回ってくることから不動産投資をする上での黒字倒産の確率が高くなるため、デッドクロス後までを熟慮した運用と出口戦略を考えることが望ましいとされています。

不動産投資の黒字倒産要因1「減価償却費」

まず、不動産投資で黒字倒産が起きがちなデッドクロスには、主に2つの要因があるとされています。
一つ目は「減価償却費」です。
ご存知のとおり、減価償却費は魔法の経費と言われ、手元から現金が無くなるわけではないのに経費として計上できることから、キャッシュフローを高めるための重要な存在だと認識されています。
しかし、重要なのはその内訳です。

仮に、4000万円の木造のアパートを建築したとすると税務上の耐用年数は22年となりますから、少なくとも22年間は一定額が経費計上できることとなります。
しかし、建築費の4000万円をそのまま減価償却できるわけではなく、「本体」と「建物附属設備」と分けて計算しなければいけません。
建物附属設備とはつまり、そのアパートのライフラインを確保するための設備の事ですが、一般的に建物附属設備は建築費の2~3割程度であるとされており、耐用年数は本体と比べて短く、平均すると15年程度となります。
ではここで、本体と建物附属設備を7:3の割合にして試算した減価償却費を見てみましょう。

本体価格:2800万円
償却費:1,288,000(22年で償却完了)
建物附属設備:1200万円
償却費:804,000(15年で償却完了)

これら両方の減価償却費を合わせると、毎年210万円もの経費が計上できることになりますので、節税効果は非常に高いと言えます。よって、確定申告の際も納める税金は少なくすることができます。
しかし、建物附属設備の減価償却が効かなくなる16年目以降はどうでしょうか。
突然80万円もの経費が計上できなくなりますから、納税額が上がることは言わずとも明らかです。
これが不動産投資で黒字倒産する要因の一つです。

不動産投資の黒字倒産要因2「アパートローンの利息」

続いて、不動産投資で黒字倒産する要因の2つ目です。
減価償却費が計上できなくなると納税額が上がるとご説明させていただきましたが、「アパートローンの利息」も黒字倒産の要因の一つとなります。

アパートローンも経費として計上できるものの一つではありますが、盲点となりがちなのが「元金は経費にはならない」という事実です。つまり、アパートローンの利息の部分だけを経費計上していくことになりますので、返済期間中の利息と元金の割合がどのようになるのかを把握しておく必要があります。
また、アパートローンのほとんどは「元利均等返済」という毎月の返済額を一定にする方法での返済が一般的ですが、「元利均等」という言葉が示すように「元金と利息を合わせた額が均等になる支払い方法」となります。
つまり、金融機関側も利益を出さないといけませんので、毎月の均等な返済額から先に利息分を多めに徴収して、徐々に元金が減っていくように計算されているのです。

そしてもう一つ、「元金均等返済」というものがあります。
これは「元金均等」という言葉のとおり、毎月の返済額のうち元金を常に一定にしておき、そこに予定された利息を上乗せして返済するというものですので、最初のうちの返済額が多くなります。
言葉での説明では分かりづらいかもしれませんので、先ほどの4000万円の木造アパートを30年フルローンで購入したと仮定して、金利1.8%で試算したものを見てみましょう。

「元利均等返済」
経過年返済額元金利息
1年目143,879円84,005円59,874円
5年目143,879円91,910円51,969円
10年目143,879円100,559円43,320円
15年目143,879円110,022円33,857円
20年目143,879円120,375円23,504円
25年目143,879円131,702円12,177円
「元金均等返済」
経過年返済額元金利息
1年目170,944円111,111円59,833円
5年目160,944円111,111円49,833円
10年目150,944円111,111円39,833円
15年目140,944円111,111円29,833円
20年目130,944円111,111円19,833円
25年目120,944円111,111円9,833円

上記の資産を見て、毎月の支払利息にあまり変化はないというところに着目された方は多いかと思いますが、重要なのは、毎月の返済額です。
元金均等返済の返済額は、最初のうちは元利均等返済よりも高くなりますが、利息分について大きな差はありません。しかし、15年目以降から元利均等返済よりも元金均等返済の額が逆転し、25年目には2万円以上の差が発生します。
つまり元利均等返済の場合は支払い額は同じままなのに経費にできる利息が減る、元金均等返済は返済額も経費にできる利息も同時に減っていくという違いがあるのです。

改めてご説明させていただくと、ある一定の時期を越えて減価償却による節税効果が薄くなり、元利均等返済のように経費計上できないローンの元金の方が増えて返済が厳しくなっていくことを「デッドクロス」と言うのです。

不動産投資の黒字倒産要因3「フルレバ・フルローン投資」

ここまでで既にお気づきの方も多いと思いますが、数字上は不動産経営が順調なように見えても、実際にキャッシュが足らずに黒字倒産してしまうのは「自己資金が不足していた」という事も要因となります。

上記の減価償却やアパートローンの例を改めて考えてみましょう。
建物附属設備の減価償却が0になるのは、15年後でした。更に、元利均等返済と元金均等返済の返済額が逆転するのも15年目以降でした。
極論かもしれませんが、これらの事実から言えるのは「15年で返済が終わる計画を立てる」ということです。
もしくは、「いざという時のキャッシュを手元に残しておく」とも言い換えてもよいかもしれません。

頭金ゼロでもアパート経営ができると謳う不動産会社は今どき珍しくありませんが、本当に自己資金ゼロの状態からアパート経営を始めても良いものでしょうか。
もし、自己資金ゼロからアパートやマンションの経営を始めたとしたら、一部屋空室が出ただけでも支払いが滞る可能性はありますし、15年目以降は空室が無いのに支払いができないという、まさに黒字倒産に陥る可能性を自ら高めていると言えるかもしれません。

一般に、頭金の部分までローンを利用することを「フルレバ投資」「フルローン投資」なとど言ったりしますが、フルレバ・フルローン投資は、自己資金を全く出さずにアパート経営が始められるため、利回りという数字上は10%や20%という高い数字を出すことができます。
しかし、高額なローンを組んだという事実は変わらないため、毎月の支払いが重くのしかかることは明白です。
黒字倒産の可能性を低くするためにはやはり、最初の自己資金をある程度用意するか、仮にフルレバ・フルローンであったとしても自分なりのシッカリとしたスキームを用意する必要があると言えるでしょう。

まとめ

今回は不動産投資でも黒字倒産になり得る3つの要因について解説させていただきました。
デッドクロスを初めて知ったという方にとって目から鱗が落ちるようなお話だったかもしれませんが、不動産投資とは、高額なお金を投資して長くインカムゲインを得ることが本来の目的なので、運用する期間中に起こり得る収支の変化や万一のトラブルについて、ある程度の把握やシミュレーションを行っておくことが非常に重要なことになります。
昨今では、インターネット上の無料で使える不動産投資シミュレーターもありますので、わざわざExcelで難しい関数を使ってシミュレーターを作らずとも、ある程度の運用シミュレーションは可能です。
今後、新たに投資用物件を購入する際は、デッドクロスのシミュレーションと金利変動等のリスクヘッジ、納めるべき税金の種類とその額の把握は必ず行っておくべきだと言えるでしょう。

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