オリンピック開催間近の2019年に「外国人投資家が不動産を売る」という根拠はあるのか

不動産コラム
東京湾岸エリアの街並み
2019年に入ってから、「不動産価格が下落する」「マンション価格が大暴落する」という記事を目にする機会が大変多くなりました。

実は、日本の不動産バブル崩壊が話題になるのは今に始まったことではありません。一昨年頃から既に「外国人投資家による売り抜け」といった話題が多くの記事で登場しています。

しかし、どの記事を見ても根拠となるデータは皆無に等しく、「何を根拠に?」と思ったことのある人も少なくないのではないでしょうか。

今回は、多くのメディアが取り上げる「2019年に外国人投資家が日本の不動産を売り始める」という話の根拠がどこにあるのかを考えてみたいと思います。

都心の新築マンションがバブル崩壊以来の低成約率

先日、不動産経済研究所が発表した「首都圏マンション・建売市場動向」の内容が少々話題になっています。理由は、「都心の新築マンション契約率が50%以下と大きく下落したため」です。

下記のデータを見ると、しばらく60%台での横ばいが続いていた新築マンションの契約率が、2018年11月に突如大きく下落し始めていることが分かります。

2017年12月72.5%前月比6.77%
2018年1月65.2%前月比▲10.07%
2018年2月65.0%前月比▲0.31%
2018年3月74.7%前月比14.92%
2018年4月63.0%前月比▲15.66%
2018年5月62.2%前月比▲1.27%
2018年6月66.0%前月比6.11%
2018年7月67.8%前月比2.73%
2018年8月64.5%前月比▲4.87%
2018年9月66.5%前月比3.10%
2018年10月68.3%前月比2.71%
2018年11月53.9%前月比▲21.08%
2018年12月49.4%前月比▲8.35%

■不動産経済研究所「首都圏マンション・建売市場動向2018年12月度」
https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/360/958eg3y3.pdf#page=7

マンションの契約率が50%以下になったのは、日本のバブル崩壊が始まった1991年以来初めてのことで、何とも縁起の悪い感じが否めません。

そこに「外国人投資家が2019年に日本の不動産を売り始める」という話をすれば、一般の方の不安を煽るネタとしては十分と言えるでしょう。

今のところ、新築マンションの売れ行きが悪くなっている理由は定かではありませんが、データでは明らかに何らかの変化を示しています。

近年話題になりがちな「外国人投資家」という話がありますので、「外国人の買い控えが始まったのか?」という予測も立てたいところですが、実際のところそうはいかない事情があります。

外国人投資家が日本の不動産を売る根拠はない

各メディアが報じている「外国人投資家が日本の不動産を売り始める」という話には、実は根拠らしい根拠がありません。

日本の不動産バブルに影が落ちる可能性は、当サイトでも何度かご紹介しています。

しかし、あくまでそれは「人口減少」「高騰しすぎた価格」「増え続けるマンション在庫や空き家」など、違う側面から見た不動産市場に対するものであり、外国人投資家の不動産売買動向については「そういった向きもある」という表現に留めています。

何故なら、「根拠となるデータが一切見当たらない」からです。

マスコミや各メディアでは、以下のような理由で「外国人投資家が不動産を売り始める」と述べています。

・不動産会社の話では、オリンピック開催決定後に外国人投資家がタワマンを買い漁った。だから今が売りどき
・不動産転売の税金が半分になる5年の長期譲渡所得に関して、オリンピック開催決定後からちょうど5年目が2019年
・東京の外国人が増えている。とりわけ中国人が多い

多くの記事が上記の3つを理由として挙げています。確かに、投資家が節税のために5年間保有してから売却を狙うというのは、可能性として十分あり得る話です。

しかし、これまでに「外国人投資家が湾岸エリアのタワーマンションを買った」と報じたメディアのほとんどは、その根拠となるものやデータを示したことがありません。

当然、東京の外国人が増えたという事実を外国人投資家の不動産買い漁りに結びつけるのも少々ナンセンスです。

よって「2019年に不動産ブームが終焉に向かう可能性は低い」と結論づけたいところですが、別のデータを見ると、そうとも言い切れない事実が浮かび上がってきます。

過去のオリンピックから見る2019年の日本経済

外国人投資家が日本の不動産を買い漁ったという証拠はないものの、過去のオリンピック開催国の様子を見ると、「もしかすると」と思うことがあります。

最近「前回のオリンピック開催国であるブラジルは、インフラ整備に資金を投じすぎたため治安が悪化した」という論説が散見されます。このような記事の多くは、続けて「東京でも同じことが起きる」とも述べています。

そこで、過去のオリンピック開催国の実質GDPがオリンピック開催の前後5年間でどのように変動しているか、検証してみたいと思います。

【オリンピック開催国のGDP推移(各国通貨ベース)】

■リオデジャネイロ(2016年)
2014年:1,236.88(0.51%)
2015年:1,192.99(-3.55%)
2016年:1,151.61(-3.47%)※
2017年:1,162.83(0.97%)
2018年:1,179.52(1.44%)

■ロンドン(2012年)
2010年:1,745.17(1.71%)
2011年:1,773.87(1.64%)
2012年:1,799.54(1.45%)※
2013年:1,836.37(2.05%)
2014年:1,890.49(2.95%)

■北京(2008年)
2006年:31,654.47(12.70%)
2007年:36,149.40(14.20%)
2008年:39,619.75(9.60%)※
2009年:43,264.76(9.20%)
2010年:47,853.47(10.61%)

■アテネ(2004年)
2002年:205.5(3.92%)
2003年:217.4(15.80%)
2004年:228.4(25.06%)※
2005年:229.7(80.60%)
2006年:242.7(75.65%)

■シドニー(2000年)
1998年:980.73(4.72%)
1999年:1,023.81(4.39%)
2000年:1,055.23(3.07%)※
2001年:1,082.58(2.59%)
2002年:1127.78(4.18%)

■アトランタ(1996年)
1994年:10,352.45(4.03%)
1995年:10,630.33(2.68%)
1996年:11,031.35(3.77%)※
1997年:11,521.93(4.45%)
1998年:12,038.28(4.48%)

「※」がオリンピック開催年

アテネとアトランタに関しては、オリンピック開催に関係なくGDPは順調に伸びていますが、その他はオリンピック前後で若干ながらGDPの伸びが鈍化した国が多くなっています。

北京オリンピックは、リーマンショック真っ只中でしたから致し方ない部分はあるかもしれません。しかし確率的に考えれば、オリンピック開催の前後でGDPが鈍化する可能性があるのは、日本も例外でないことがデータから分かると思います。

外国人投資家が日本の不動産を売る可能性は高い

さて、ここまでに挙げた事実を一旦まとめてみましょう。

・2019年に入る直前でマンション市場の契約率が大幅に悪化している
・長期譲渡所得の5年を考えると2019年以降に不動産を売る外国人投資家が増える可能性がある
・ただし外国人投資家が日本の不動産を買い漁ったというデータは無い
・オリンピック開催年前後は統計上、GDPが鈍化する国が多い

これに対して日本のGDPがどうなっているかというと、あまり芳しい状況とは言えません。

2014年:510,687.10(0.37%)
2015年:517,600.90(1.35%)
2016年:522,577.20(0.96%)
2017年:531,641.60(1.73%)
2018年:537,685.08(1.14%)

オリンピック特需で東京のマンション価格はかなり高騰しましたが、実際のところGDPにはほとんど影響していないのです。

既に2018年が前年よりも鈍化していることを考えると、やはり日本も他国の「二の舞」を演じるのではないかと思えてなりません。

ただ、データを基にするのではなく、投資家心理で考えてみるとどうでしょうか。

仮に自分が投資家だったとして不動産を買う十分な資金があったら、やはり長期譲渡所得の5年という節目は重要なポイントになるでしょう。

また、事実であろうとなかろうと、不動産相場が下落するとここまで騒がれていては、相場が高騰した今のタイミングで売り抜けようと考えたとしても不思議ではありません。

今回取り上げたデータだけでなく、日本の不動産市場には多くの不安要素が潜在しています。

「2019年はどうなる?」という記事を多く目にしますが、根拠の有無に関わらず、総合的に不動産市場を見極めていく力が2019年の不動産投資に求められるのかもしれません。

まとめ

投資について解説する記事の多くは、読んでもらうことが目的となるため、「〇〇が暴落!」「来年から下落が始まる○つの理由」「バブル終焉の兆し!」など、何かとセンセーショナルな内容になりがちです。

もちろん、記事内容には根拠を示すデータ等も数多く含ませていますが、今回の外国人投資家にまつわる話となると、パッタリとデータを示す記事がなくなります。

全てをデータだけに頼るのも良いとは言えませんが、少なくとも投資を行う側としては一個人の話に左右されるのではなく、自身で市場の動向を探り、買い時売り時を見極めるのが正しい行動です。

今回の記事も含め、不動産市場に関係しそうなデータというのは数多く存在しています。2019年以降の不動産市場がどのようになるか、ご自身でも様々な面で分析してみてはいかがでしょうか。

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