国土交通省がマンガ連載開始の「国土利用計画」とは? | 不動産投資を考えるメディア

国土交通省がマンガ連載開始の「国土利用計画」とは?

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先日、国土交通省がマンガ連載を開始したとのプレスリリースを発表しました。その中身は、日本の国土管理の具体例が分かりやすく解説されるマンガとなっており、体的な地域の取り組みが分かるものとなっています。今回の国土交通省が公表したマンガには、様々な土地利用に関する問題を抑制、管理するための「国土利用計画」というものが背景にあります。

特に昨今では所有者不明土地や空き家が注目を浴びるようになりましたが、これらは人口減少や農村部の高齢化や過疎化、そしてその相続人による未登記や放置などが原因とされていますが、抜本的な解決策が示されたとは言い難い現状において「国土利用計画」が果たしてどのような役割を果たしているのでしょうか。今回は「国土利用計画」がどのようなものか解説し、日本の不動産がどこへ向かっていくのかということを考えてみたいと思います。

国土交通省のマンガ「カンタとリコの訪問記」

国土交通省が今回発表したのは「マンガでわかる!国土管理~カンタとリコの訪問記 兵庫県丹波市編」です。内容は、2014年に兵庫県丹波市で起こった集中豪雨による災害と、その経験をもとに地域住民による土地利用のルール作りについてです。登場人物であるカンタとリコが、丹波市災害の教訓から災害に強いまちづくりについて解説していくというもの。マンガの中で主に語られるのは以下の3つです。

  • ワークショップや先進地視察などによる災害に対する住民意識の向上
  • 土砂災害や野生鳥獣被害に強い土地利用の見直し
  • バッファーゾーン(余裕域)の観光農園やウォーキングコースへの活用

今後も連載する予定であるということで締められていますが、地域の取り組みが分かりやすく解説されるマンガとなっています。

■国土交通省「マンガでわかる!国土管理~カンタとリコの訪問記 兵庫県丹波市編」
http://www.mlit.go.jp/common/001249560.pdf

国土利用計画とは?

国土利用計画を一言で申し上げると、約38万㎡ある日本の国土を国、都道府県、市町村により計画的に利用、保全していこうというものです。近年特に話題として取り上げられるようになった所有者不明土地や空き家増加に加え、森林破壊、山崩れによる災害の多発など、多くの国土利用に関する問題があることをご存知の方も多いかと思いますが、こういった問題に国も何もしていないわけではなく、実は昭和50年代から国土利用計画を随時策定しているのです。

「国土利用計画の目的」
・「自然」「社会」「経済」「文化」という条件を十分に考慮する
・上記を前提に総合的、長期的な観点で、公共の福祉の優先、自然環境の保全が図られた国土の有効利用を図る
「計画で定められる事項」
・国土利用の基本方針
・区分ごとの目標と地域別の概要
・各事項を達成するために必要な措置

上記のように、国土利用計画は駅前開発や都市発展を目的としたようなものではなく、開発の抑制や高齢化や人口減少で管理のできていない土地の問題などにアプローチし、国土の有効利用、自然や文化との調和、災害に強いまちづくりなどを目指す計画となっています。

国土利用計画の基本方針

では、国土利用計画における目的と措置を実行していくために、具体的にどのように計画が実行されていくのでしょうか。先ほど解説させていただいた中の「国土利用の基本方針」ですが、これは以下の3つが柱から成り立ちます。

  • 適切な国土管理と国土利用
  • 自然環境・美しい景観等を保全・再生・活用する
  • 安全・安心を実現する国土利用

前章でも解説させていただきましたが、これら3つの基本方針は、昨今問題となっている人口減少による未利用地や耕作放棄地、所有者不明土地による国土管理水準の低下を抑えることや、自然環境から得られるエネルギーや食糧、水供給の保全のために自然と景観の悪化を防ぐ、巨大災害に伴う大規模被害を防ぐことなどが前提となっています。そして国土利用計画は、これらの方針を実行するために国、都道府県、市町村の3つの組織に分かれ、トップダウン方式で行われます。

「全国計画」
国が日本全国の計画を定める
「都道府県計画」
全国計画を基本として都道府県レベルで計画を定める
「市町村計画」
都道府県計画を基本として市町村が計画を定める

国としての方針は分かりましたが、もう少し具体的に何を計画しているのか知りたいところ。続いて、土地の種類による基本方針を見ていきましょう。

国土利用計画における土地種別による計画

一口に「国土」「土地」と言っても、住宅地、農地、商業地など様々な種類が分かれます。国土利用計画では、これらの種類ごとにも基本方針を決めています。ここではその詳細を要約してご紹介させていただきます。

「農地」
国民の生産基盤を支える食料の安定供給に欠かせない優良農地を確保することを目的とし、農業生産効率の向上、農業の担い手の確保、農地の大規模整備、水路などの管理コミュニティの支援を行う。
「森林」
生物多様性の保全、温室効果ガス吸収効果への対策、水の水質を保つ(かん養)、木材の需給などに重要な働きをする森林の整備や保全を行う。具体的には、立地条件の悪い森林は国などが関与した整備、森林の所有者の責任による森林整備、企業による整備を行う。
「原野」
湿原や草原など、野生生物などが生育する自然環境については、生態系の維持や保護を基本としつつ、劣化した環境においては再生を行う。
「水面・河川・水路」
地域の安全性向上のための管理や、水力発電や農業用水、生活用水に必要な安定した水供給をするための水資源開発、多様な生態系の維持のために水質汚染等への配慮を行う。
「道路」
一般道路については、地域同士の繋がりを促進し、災害時の輸送経路の確保、安全安心の生産基盤の整備を進めるべく、必要用地の確保と施設管理、既存用地の有効利用を行う。なお、快適性や防災機能の向上に配慮しつつ、道路直下などの環境保全にも努める。農道や林道は、生産性向上のための必要用地の確保、管理を進めるとともに、自然環境の保全に配慮する。
「住宅」
生活関連施設の整備を計画的に進め、耐震や環境性能といった住宅の質の向上を図りつつ、地域状況を考慮しつつ生活拠点の都市中心部への誘導、住宅地の整備は災害リスクの高い地域では制限を設けるなどする。また、自然を新たに土地として利用するのではなく、未利用地や空き家の有効利用や住宅ストックの活用を優先させる。
「工業用地」
環境保全に配慮した必要用地の確保を行う。但し、土壌汚染や生物への悪影響への配慮を行い、企業等にも自主的な取り組みを促進させる仕組みを作る。
「沿岸域」
津波・高潮等の災害に配慮した親水空間として適正利用する。また、海の自然環境の保全、再生による生物多様性の確保を図るとともに、ゴミや汚染などの対策を進める。
「その他(公共用施設や未利用地など)」
環境への配慮、耐災性の確保などを前提として、工場跡地などの未利用地は住宅用地や事業用地といての再利用を図り、ゴルフ場やスキー場などは森林への転換を進める。

日本の土地利用は守られている

さて、ここまで国や自治体による国土管理の計画がある事を解説させていただきました。直近の国土利用の問題で考えると、2022年問題で知られた「生産緑地の開放」もありますが、無秩序な開発を抑制するために条件や制限の緩和策も徐々に示されてきています。上記までの内容で意外だったのが「都市中心部への生活拠点の誘導」という部分。自然環境を保全する目的とはいえ、過疎化などが騒がれる地域がある中で都市部への人口誘導が基本方針の中にあることを知らなかったという人も多いかと思います。

しかし、「自然」「社会」「経済」「文化」といったもののバランスを図りながら、日本の国土を有効に、かつ生産性のある利用をしていこうという姿勢には多くの人が納得されるのではないでしょうか。都市部ではマンションやビルなどの開発競争ばかりが話題となりますが、国はそれ以外の土地についてしっかりと管理や保全をしてくれているのです。上記のマンガ以外にも既に始まっている市町村単位での取り組みは、以下のリンクからも詳細を確認することができます。自分の住む町や家が、どのような計画下にあるのかといったところを一度確認されてみてはいかがでしょうか。

■国土利用計画「市町村計画データベース」
http://www.mlit.go.jp/common/001244543.pdf

まとめ

今年も集中豪雨による水害が大きな話題となりましたが、ニュースで大きく取り上げられた地域の多くは、以前から水害の懸念があった地域でもありました。それらの地域の国土利用計画を見てみようと思いましたが、特に被害が大きかった広島は国土利用計画が示されておらず、岡山に関しては笠岡市のみでした。そう考えると、今後の災害対策を含めた国土利用計画は、より積極的に推進されていくべきであろうと言えます。特に、日本という小さな島国においてそれを行うことは決して難しいことはないはずだからです。

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